第19話

「Request classified documents from a deserter」

(脱走兵からの機密文書を要求する)


「は?! 英語さっぱりわかりませんよー」


 俺は終始。テロリスト集団のリーダーの声にリアクションに困っていた。


「あ、あのー」


 派手な服を着ている司会者が、おずおずと俺の傍に近寄ってきた。


「テロリストさん。脱走兵からの機密文書を要求すると言っていますよ」


 と、俺に青い顔をして耳打ちしてくる。


「は?! 脱毛税の請求書?」

「ええ」

「あんた。日本語と英語知ってるんだな。では、こう言ってくれ! わかりません! って」

「……はあ。本当にそれでいいのですか?」

「ああ」

「殺されても?」

「それはイヤ―!」

「それじゃあ。この場は私がなんとかします」


 派手な司会者は、テロリスト集団のリーダーの前へ出て、震える唇で英語を話し始めた。


「This person is from the government」

(この方は政府の方です)

「law. A young man has come」

(ほう。若い奴が来たな)

「Apparently they no longer have the deserter's confidential documents.」

(脱走兵の機密文書は今は持っていないそうです)

「……」

「That's why I'm telling you to go out and release the hostages first.」(ですから、外へ出てまずは人質の解放をと言っています)

「……」

「……」


 司会者の男もテロリスト集団のリーダーも無言になった。

 でも、二人の無言の圧力のようなものを、俺は感じた。

 

 痺れを切らしたのは、意外にもテロリスト集団のリーダーの方だった。

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