ツインマウンテン攻略作戦 1

「【オートシールド】」


魔王軍の砦的な場所に攻め込む前、私は近くにいる騎士団の人達に魔法での強化をしていた。

ちなみにアルス達にはもう既にしてある。


「リース」

「むん……!」

「いや、むん!じゃなくてな、そろそろ魔力を温存しておけ」

「……ん」


今は作戦開始前の作戦の最終確認と休憩中。

ツインマウンテンとやらに向かう道中の森の中、魔王軍の警戒範囲に入らないギリギリの位置、昼食は取り終わりいつ攻撃が始まってもおかしくはない。


バサッ! バサッ!


「ん……?」


大人数で隠密ではないが、わざわざ笛や大声でなどの合図で気付かれる必要は無い。ってヘレンが言ってた。

とまぁそんなこんなで旗が振られると同時に騎士達が整列、勇者パーティー達も進軍するために決められた位置へと移動し、旗がもう一度振られると全体が歩き始めた。


木がたくさん生えてるから全体的に見てバランスの良い陣形は組めないのがわかっている、だからか指揮官さんが10名いて、それぞれ緊急時は細かく部隊分けされている指揮を取り、迷いを減らし動きやすいようになっている。


「…………」


見えるツインマウンテンとの距離を考えると、山の麓まで大体30分ってところかな?


それにしてもパーティーのみんなは堂々と歩いてる。

砦に来るだけで震えていたメリッサも胸を張り堂々と歩き、アルスやヘレンは歩きながらも集中しているのか瞑想中の時と同じような雰囲気が出てた。


ピーーー!!!


「総員!戦闘準備!」


そんな中、接敵を知らせる笛が鳴り響いて緩やかだった進軍速度が上がる。


いろんなところから笛の音が聞こえ、そのうち私達の正面から笛の音が聞こえた。

このまま直進して魔王軍を2つに分けないといけないのだが、教えられた作戦によるならもうしばらく直線しないと分割は難しい。


「リース!俺を飛ばせ!」

「うい……!」


という訳でアルスを魔力腕で正面の魔王軍の元へと投げる。

相手の陣形を少しでも崩せれば戦線の停滞は防げるはず、作戦開始前にアルスに接敵したら俺を投げてくれと言われていた。


「なんだそれは!ずるいぞ!私も飛ばしてくれ!」

「ぁぅぅ」

「ちょっ、ヘレンこんな時に変なことしないの!リースちゃんを離して!」


ヘレンの出番は先だから、もうちょい進んだら出番あるから、だから揺さぶるのをやめてぇぇ。


……ーーー


「……む?」


やばい何かをピーンと感じた。

感じた方向はツインマウンテンの頂上、周りを見てもここら辺にいる人で私以外は何も感じていないようで緩やかに進軍している。


カッ!


気のせいか、と思い始めた瞬間に違和感を感じていた頂上が光り私達の部隊から離れた他の部隊がいた場所が爆発した。


「狼狽えるな!我々は前進する!」


騎士団は全体を防御系の魔法の効果内になるように魔法使いを配置してる。

そして接敵した時点で魔法は発動しているはず、でもあの攻撃は一瞬も防げていなかった。まるで防御など無かったかのように着弾してしまった。


「なぁ、あれがこっちに来たら防げるか?」

「んん……」


どうだろうか、発動が間に合えばなんとかなりそうだけど魔法その物を見た訳じゃないから情報が足りない。


「リース殿」

「ん……?」


周辺の騎士達よりもちょっと良い鎧を着た人が話しかけてきた。


「あぁ、副指揮官じゃないか、うちのリースに何か?」


え、副指揮官なの?

顔隠れてるのによくわかるね。


「あの魔法を使った存在をここから魔法で攻撃できないか?」

「ぇ……」


みんなに緊急時以外禁止された魔法を使ったとしても距離によって威力は弱まっちゃうから、相手が事前情報にあった厄災だと防がれそう。


「できるけど……」

「ならば早速お願いしたい、倒せなくても今の魔法の阻害さえできれば問題ない」

「ぅぃ……」


有無を言わせぬ圧を纏ってた……

まぁいい、心配そうに見てるメリッサに頑張ると手をグーにして伝えてから狙い易いように宙に浮かぶ。


「さてと……」


眼を強化しても魔法の使用者と存在する要塞が見えない、幻影系の魔法で見えないようにしてるのかな?


「【魔力外格】」


取り敢えず山頂に向かってぶっ放せば出てくるでしょ。


「魔りょ──」


キーーー!!


魔法準備中の私に向かって一直線で飛んでくるビーム、自動で発動するようにしてたシールドが発動、直撃は避けたけどこのまま受けてたら破られる!


横に回避を!


「上っ?!」


横にそれたことで後ろに向かって飛んでいったビームが上から落ちてきた、途中で曲がった訳じゃなくてワープホールみたいなのから出てきてる。


「【雪結晶】!」


下にはメリッサ達がいるから避けられない、私が受けるしかない。

イメージしやすい雪結晶の形で作った物理的用の防壁とずっと使ってる魔力の壁、この2つで威力をある程度抑えないと1度目の攻撃みたいに爆発する。


『【こだま】』

「?!?!」


これだけの遠距離で複数の魔法の発動?!


このまま上から来る魔法を受け止めたままじゃ四方に出現した魔法陣からの攻撃を防げない、でもこのギリギリの状態で高度を落とせば飛んだまま受け止めきれずに地面に落ちる。

だけど横からの魔法が受けてる物と同じなら流石に当たるとまずいよね。


「ああぁぁぁぁ……!!!」


高度を落とすしか、ない!





「あっ、これまずいな」

「え?」

「ここら辺にいる奴等は少し離れろ〜!」


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