涙痕
成瀬哀
涙痕はあかく染まる
カンカララン。
ドアの開く音が店内に響き渡る。手元から視線を上げると、朱色の夕陽を背に一人の若い男性が店を訪れていた。
「いらっしゃい」
ゆっくりと店内に足を運び、カウンターに腰を下ろした彼に私は水とおしぼりを出した。
「アメリカーノを一つ」
「かしこまりました」
カップを取り出してアメリカーノを淹れる用意をする。彼は誰かを探しているらしく、店内を見回していた。
「どなたかお探しですか?」
「ええ、今見つけました」
カウンターテーブルの向かって左から二番目の席。なぜかその席に腰を下ろしたカップルは必ず別れる、というのがここ数年続くジンクスである。そんなジンクスを知ってか知らずかーー。男性はカウンターの端に座る若い女性の隣、例のジンクス席に腰かけた。
彼女も気づいたらしく、読んでいた本を閉じた。
「遅いじゃない」
「ごめんごめん」
どうやらカップルらしい様子の二人。嫌に冷たい汗が私の首筋を通って背筋へと流れる。きっとこの二人もその類の話をするのだろう。言葉遣いから辛うじてカップルだとは分かるものの、他のテーブルに着く恋人同士の間にあるような心のこもった様子も、熱に浮かされたような熱い視線も二人の間にはなかった。客観的に見て、未練もなく別れて数年が経過した二人が何かの都合で久しぶりに顔を合わせる、という説明の方が納得できる。取り出した金縁に花柄のコーヒーカップにアメリカーノを注ぎながら、私はふとそんなことを考えていた。注がれたコーヒーの湯気がもくもくと立ち昇り、掛けている私の眼鏡を白く曇らせる。華やいだ香りは鼻腔をくすぐった。嫌な汗が引いたのと同時に私はゆっくりと呼吸した。コーヒーの持つ酸味がかった特有の香りは、私のこうした余計なことを考えては詰まってしまう神経を落ち着かせてくれる。眼鏡の曇りが溶けた私は、そのガラスの向こうにいる男性客が受け取れるよう、カウンターにカップを置いた。
「アメリカーノでございます」
「どうも」
席に着いていた彼は、カチャカチャと音を立てると小瓶を手に取り、トングで角砂糖を掴んでカップの中に入れた。
「それでエリ、話って?」
カップに口をつけて彼はゆっくりと飲み込んだ。
「ヨシアキさん。あなた私に隠し事してるでしょ」
「そんなことないと思うけど。どうして?」
愛梨はじっと彼を見つめた。仁章はそっとその視線から顔を背けた。
「あなたの目よ。嘘の色が映ってるわ」
彼はまた愛梨を見ると微笑んだ。
「君に嘘をついた覚えはないよ。それとも、思わせぶりな行動をしてたかい?」
彼女は鞄からおもむろに眼鏡拭きを取り出し、黒縁のそれを拭いた。
「私もそれを願っていたわ。けれどそうもいかないようね」
「さっきから何を言ってるか、さっぱり分かんないよ」
愛梨は眼鏡をかけると、その鋭い眼で彼を見つめた。
「他の誰かを抱いたその手で、どうして私を愛してると言えるの?」
決定的なその瞬間を目の当たりにしていたのか、どうやらひどく傷ついていたらしく、彼女の声は震えていた。客である二人には聞こえないよう、私はそっと溜息を漏らした。潰えることのないジンクスはこうして新たな悲劇を作り上げるのである。
「分かってるのよ、私。あなたの『愛してる』はもう来ないって」
「そんなわけないだろ? 僕は君を愛してるよ、エリ」
「やめて。そんな腐った言葉を聞いたところで嬉しくとも何ともないわ」
「どうしてそう決めつけるんだい? 僕は不義なんて――」
「アイザワ ナツミ」
すかさず放たれた女性の名前。どこかで耳にしたような響きだったが、初老を過ぎた私には、どうにもどこで聞いた名前か分からなかった。他方、ヨシアキは充分思い当たる節があるらしく、え、と呟いたまま固まってしまった。
「ねえ。どうして彼女なの? 私じゃいけないの?」
彼の様子を知ってか知らずか、エリは問い詰めるように尋ねる。
「何とか言ってよ。私を『愛してる』って言うなら、彼女は? 私が好きなら私だけを愛してよ」
ヨシアキはしばらくの間口を閉ざしていた。驚きは既に消えたらしく、見開いていた目は何処か遠くを見ている。不意に懐から煙草を取り出すと、彼は火をつけてふかした。ゆらゆらと立ち昇り消えていく煙。吸い込むと同時に赤く燃える煙草。どこを見るわけもなく、宙のただ一点を見つめるヨシアキ。これまでこのジンクス席に腰掛けた客たちの行動から予想するに、きっと彼もまたどう言葉を切り出すのか考えているのだろう。どうやらその整理がついたらしく、彼は半分ほどまで吸いかけた煙草を灰皿に置いた。
「君のことは好きだよ。でもナツミのことも愛して何がいけない? 僕は嘘をついてないし、騙してもいないよ?」
「話してもいないわね。あなたも私も同じ愛を与え合えないなら嫌よ」
口調こそは強気なものの、二人で過ごした幸せだった思い出が蘇ったのか、溢れた涙に彼女は急いで両手で顔を覆った。
「お得意の『悲しい顔』かい? 君も僕もいつの間にか迷路に迷いこんだようだね」
「そうね。嘘と偽愛の濃霧に包まれて。あなたは出口が見えたのかしら?」
「もちろん。もう芝居はやめにしよう。これ以上の無駄足はごめんだね」
顔から手を放した彼女の目にはまだ涙がにじんでいた。
「同感ね。私が辿り着いた答えにも『二人』はいないわ」
「そう拗ねるなって。僕らの小指は他の誰かと繋がっていたんだ。それだけの問題さ」
「ええ。……それじゃあ私の家に置いてったあなたの物。全て持って行ってよ」
「処分してくれて構わないよ。君のいらない物は僕もいらないからさ」
「そうね。思い出も爪痕も全部、灰になってしまえばいいわ」
エリは伏し目がちにそう小さく呟いた。
「そんな風に言わないでくれよ。お互いの幸せのためだろ? 君も僕も両手に自由がもたらされるんだから」
ヨシアキは彼女の額にキスをして、テーブルにアメリカーノの代金を置くと席を立った。
「ねえ。時間を戻せるなら、その全てが分かるのかな? すれ違った道も、壊れてしまった思い出も」
彼を呼び止める彼女の涙が夕陽に反射して切ないほどに輝いた。
「君は悪くないよ。少しもね」
それだけ残してヨシアキは店を後にした。エリはカウンターに突っ伏して泣き崩れた。事の次第を全て聞き見てしまった私は、またこの心の底に溜まったどうにもならない他人の悲しみにぐっと耐えるしかなかった。せめてジンクスの席がカウンターではなくテーブル席なら、ここまで明確に会話も聞こえず、仕草や様子も見えずにいられるというものを。別れを告げられ後に残された客は、あの日の彼やこの彼女のように泣き伏せてしまう。その悲しみを拭うことも、心を鬼にして店から閉め出すことも私にはできない。せめてこのジンクスが別れではなく出会いであればよかったものを。
深く溜息をつきながら、私は彼が置いて行った代金をカウンターからキャッシャーへと移した。
カンカララン。
勢いよくドアの開く音がしたのと同時に、ドアベルが誰かの入店を知らせた。ヨシアキが出て行った店の入り口には一人の細身の男性が立っていて、店内へと入るところであった。彼はカウンターへ近づくと、アイスレモンティーを注文した。
「承りました」
彼に注ぐ紅茶用のグラスを取り出して、レモンをカットした。彼はエリの様子に気がつくと、隣に座り声をかけた。
「大丈夫ですか?」
そのとき私は凍り付いた。紅茶に使う氷が冷たかったからではない。突っ伏していた彼女の頬にうっすらと笑みが広がるのを見逃さなかったからだ。
「ええ......少し辛いことが――」
エリは顔をあげて彼を見ると、また偽りの涙を流した。
――――❀――――
約束よりも二十分ほど早く喫茶店に着いた。年老いたマスターにカフェオレを頼むと、カウンターの端の席に座って、鞄の中からモームの『劇場』を取り出す。スマホが鳴った。【
――半年前――
その日の公演と反省会が終わり、帰り支度を済ませた私は裏口から劇場の外へと出た。扉を開けると、純白のハンカチを持った男が私を待っていた。
「ハンカチを落とされましたよ。デズデモーナさん」
以前私は『オセロー』のデズデモーナを演じた。しかし、今日の演目は『オ セロー』ではなく、『ハムレット』だった。彼はどこか勘違いをしているのだろうか。
「それではオセロー将軍の妻である私に、死が訪れるのかしら?」
シェイクスピアの著した戯曲内では、オセローは新婦のデズデモーナにあげたハンカチをなくされたという理由で彼女を殺している。
「いえ。僕は死ではなく――」
彼はハンカチを手の中に入れた。
「バラの花をと思ったのですが」
指を鳴らすと、ハンカチは美しいバラの花束に変わった。
「いかがですか?」
バラの花束を差し出す男。その時の私は、彼のどこかに追い求める影が見えた気がした。
「お受けしても構わなくてよ」
彼――寺田仁章に微笑みを向けた。
ドアベルの音が響き渡る。彼が着いたのだと気が付いたけれど、敢えて無視をして『劇場』を読み進めた。
彼が隣に座ったのを感じて、気づかれないよう小さく息をつくと、「遅かったじゃない」と本をしまった。
「それで
その一言で舞台の幕が上がった。これから始まるのは仁彰との最後の芝居。私が演じるのは二股をかけられた挙句振られる女。
飼っていた犬が死んだ時の母を思い出しながら、仁章をじっと見つめる。母は犬については何も言わず、異様に優しかったのを今でも覚えている。悲しい事実を隠す時、人は忘れていた優しさを思い出したかのように異常に優しくなるのだと知ったのはその時で、今ではその事実はすっかり身に染みてしまった。
「仁章さん。あなた私に隠し事してるでしょ」
「そんなことないと思うけど。どうして?」
戸惑ったように震えた声色と仁彰にしては荒い口調。演技に役立てるために以前習った心理学から、動揺と焦りによるものだと判断できる。ならば優しく畳みかけるように話した方がいい。
「あなたの目よ。嘘の色が映ってるわ」
「君に嘘をついた覚えはないよ。それとも、思わせぶりな行動をしてたかい?」
掛けていた眼鏡を外してレンズを拭いた。こうして間を空けて焦らすことで、相手の中に更に強い動揺が生まれる。こういう駆け引きをするのに女優はうってつけだ。
「私もそれを願っていたわ。けれどそうもいかないようね」
「さっきから何を言ってるか、さっぱり分かんないよ」
眼鏡を掛け直してじっと仁彰を見る。その戸惑いに満ちた眼を見て次の台詞を放った。
「他の誰かを抱いたその手で、どうして私を愛してると言えるの?」
これは何かの芝居にあった台詞だった。何の演目だったかは忘れたけれど、今となってはそんなのどうだっていい。
「分かってるのよ、私。あなたの『愛してる』はもう来ないって」
「そんなわけないだろ? 僕は君を愛してるよ、愛梨」
「やめて。そんな腐った言葉を聞いたところで嬉しくとも何ともないわ」
「どうしてそう決めつけるんだい? 僕は不義なんて――」
「
私が二人の一緒にいるところを目撃したのは一週間程前のこと。私たちの関係も潮時で丁度良かった。だが女優への浮気相手にモデルとは洒落たことをするものだ。
「ねえ。どうして彼女なの? 私じゃいけないの?」
仁彰は無言だった。
「何とか言ってよ。私を『愛してる』って言うなら、彼女は? 私が好きなら私だけを愛してよ」
台詞とは裏腹に私の心は言葉から乖離していく。愛だなんて口では言いながら、ほんの一瞬でも彼を愛したことも愛おしく思ったこともなかったから。それなのに互いに嘘の愛を与え合う日々の何がいいのか。それは私にも分からない。だって私が本当に好きなのは――。
当時、仁章はマジシャンとして生計を立てていた。今は何をしているかなんて興味がない。所詮は彼も私のコレクションの一つに過ぎなかったということだろう。彼と付き合い始めてから半年が経ったけれど、私は彼とは別の人とも関係を 結んでいた。その人に仁章と付き合っていたことがバレて、私たちは破局した。 いや、それも別に構わなかった。今まで全員、別れても気にしなかった。付き合った合計が増えていく――。むしろ嬉しい兆候だ。ただ、一人を除いては。あいつだけを除いては。
「君のことは好きだよ。でも捺美のことも愛して何がいけない? 僕は嘘をついてないし、騙してもいないよ?」
「話してもいないわね。あなたも私も同じ愛を与え合えないなら嫌よ」
そう、お互いに分け合っていたのは心からの愛情ではなく、ただ愛し合っているという芝居だった。半年も演じたんだから、公演となれば相当な額になるだろう。
私が仁章の誘いに乗って付き合った理由は、目があいつに似ていたから。ただそれだけだった。今までのコレクション全てにおいて、付き合った理由は『どこかがあいつに似ているから』で統一されている。
幼少期、私の周りにはたくさんの男の子がいて、私は彼らの注目の的だった。あいつ、
そんなあいつが急に家に来たのは小学二年生の秋だった。インターホンに呼ばれた私は、パジャマ姿のまま外に出た。夕暮れに染まる空の下、隼人は息を切らしながら引っ越すことを告げると、そのまま走って帰ってしまった。そのとき初めて私の中で何かが欠けたような気がした。それまでずっと好きだった中谷くんへの興味が失せたのはそれもある。
高校に入学した初日、私が何よりも驚いたのは親友と同じクラスだったことではなくて、同じクラスに隼人がいたことだ。しかも隣の席に。背はぐんと伸び、顔立ちも整ってきていたが、そのそばかすや面影はあいつだった。下手な英語の発音も相変わらずあいつの口からこぼれた。私はこれまで感じたことがないほどドキドキしていた。けれど、久々にしかも奇跡的に再会できた喜びと同時に私の胸を襲ったのは大きなショックだった。
「
隼人は私をそう呼んだのだ。今までは「愛梨」だったのに名字で。意外な程深くその言葉は私を傷つけた。
後から聞いた話だが、高校初日に名字で呼んだのは私が自分のことを覚えているかも分からないし、恥ずかしかったからだそう。言われてみれば最もな理由だ。だが、あいつが私を名字で呼んだお陰で、私は『絶対に隼人と付き合う』という目標ができたのだった。そしてその目標は高校一年の夏に果たされた。
私の告白を受けた彼はあっさりと快諾しただけでなく、「自分もずっと好きだった」と照れながらも私に話した。
それから花火に夏祭り、誕生日にハロウィンにクリスマスと行事を共に過ごし、送る日々に愛を詠い幸せの花を咲かせた。このまま一緒にいて時間を重ね、近しい未来には、私は榮依愛梨になるだろうと想いをはせていた。
けれど隼人は交通事故で死んだ。目撃情報によれば、小さな男の子がボールを追って、車が走る中に飛び出したのをかばったらしい。あいつらしい死に方だ。
私ははじめその話を聞いて笑った。けれど、相手の話していることが事実なのだと悟ると、「冗談でしょ?」となお笑い、嫌な寒気や血の気が引いていく感覚を隠しておかしな声を上げて泣いていた。
気づけば私は舞台女優を目指して、それのための学校に通っていた。女優であれば自分でいる時間が短くて済む。隼人のことを考えたり、思い出して辛くなる時間も無くなる。結局のところ、私はずっと隼人を想って今日まで生きているのだ。あいつと過ごした時間の中で私は止まったまま生きているのだ。
隼人……。私、いつまでこのままなのかな?
思わず両手で顔を覆った。今曇ったこの眼鏡も、隼人の母親から譲り受けたあいつのフレームが使われている。
「お得意の『悲しい顔』かい? 君も僕もいつの間にか迷路に迷いこんだようだね」
元々迷路なんてない。迷ってすらいない。私たちはすれ違って過ごしてきただけだった。仁章は女優のエリを求めて。私は仁章の中にごくまれに見えた隼人を求めて。
「そうね。嘘と偽愛の濃霧に包まれて。あなたは出口が見えたのかしら?」
「もちろん。もう芝居はやめにしよう。これ以上の無駄足はごめんだね」
「同感ね。私が辿り着いた答えにも『二人』はいないわ」
彼はきっと私と仁章のことを言っていると思っただろう。けれど私の言った二人はそれとは違う。隼人はかえって来ないと知っている。分かってる。なのに......。
「そう拗ねるなって。僕らの小指は他の誰かと繋がっていたんだ。それだけの問題さ」
「ええ」
とりあえずその相手は寺田仁章ではない。けれど、隼人以外に誰がいるというのだろう。
「それじゃあ私の家に置いてったあなたの物。全て持って行ってよ」
「処分してくれて構わないよ。君のいらない物は僕もいらないからさ」
「そうね。思い出も爪痕も何もかも全部、灰になってしまえばいいわ」
きっとそうできれば、あいつを忘れられるならもっと楽なのだろう。けれどそんなことは私にはできなかった。これからもできないで、私は隼人の幻影を追い続けるに違いない。
「そんな風に言わないでくれよ。お互いの幸せのためだろ? 君も僕も両手に自由がもたらされるんだから」
自由ーー。私にそれは到底来そうにない。今までだってそう。きっとこれからも偽りの愛を振りまいて生きていくのね。あいつのいなくなってしまった世界で。
「ねえ。時間を戻せるなら、その全てが分かるのかな? すれ違った道も、壊れてしまった思い出も」
幼少期に戻れたら、私は紛れもなく隼人を選ぶ。そして連絡を取り続け、高校も最初から一緒に……。そして、あいつも逝くことなくずっと共に。それができるなら、もっと世界が違って見えたのかもしれない。女優なんて目指さず、誠実な妻になっていただろう。現実がこれだ。
「君は悪くないよ。少しもね」
突っ伏した。確かに私にはあいつの死はどうにもできなかった。けれど私はあいつを背負い続けている。そしてもう誰も心から愛することは無理だと分かっている。彼以上に誰かを愛することも、心惹かれることもなく、隼人の残したその幻影だけを追い求めているのだから。
次に誰かを想うときに、私は隼人を忘れられるの?
「大丈夫ですか?」
誰かのそんな優しい声が聞こえる。思わず笑みが広がったのが自分でも分かった。その声は隼人に似ている。
結局私は変われないのね。聞こえもしない声や見えるはずのない幻を信じて、それが失くなったらまた捨てるのね。何度もそんな罪を塗り重ねて自分の悪行を更新していく。遊ばれた哀れなコレクションを連ねていく――。もう戻れない。無垢な私には。だからまた自分と相手を騙して恋を始めましょう。純粋な乙女、中原愛梨はもういない。私は舞台女優のエリなのよ。
深呼吸をして気持ちを切り替えた。
こんにちは、次はあなたの番よ。腐った私の心を、ぽっかり空いた傷を癒すための――。
「ええ......少し辛いことが――」
顔をあげて彼を見た。その瞳の奥に隼人が佇んでいるように見えて、私は哀しみとこれから始まるまた新たな偽愛の日々に涙を流した。
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