群れない陰キャが異世界で群れて頑張る話(仮)

クリヲネ

第1話

 この世には二種類の人間がいる、陽キャと陰キャだ。さらに言えば陰キャにも二種類ある、群れる陰キャと群れない陰キャだ。そして俺は紛れもなく群れない――


 人間の分類に思考を巡らせ、自分の位置を客観的に分析して、時間をつぶしていると目論見通りに、古典の教師が授業の終了を告げ、学級委員が号令をかけ、退屈だった四時間目の授業が終わった。


「今日学食〜?」


 と意味のない言葉を口にしながら、自分とは違う種類の人間――陽キャたちが椅子を騒音を立てながら下げ、食堂へと向かってゆく。


 弁当でもなんでもとりあえず食堂に行くのだからいちいち言うなよ、浮かんできた言葉を頭を振って追い出し、パソコンを起動させ、開くのはネット小説サイト。今日はどんな作品に出会えるのかという期待を胸に、何を基準に選ばれているのかいまいちわからないおすすめ欄をスクロールする。


 なかなか面白そうな題名が並んでいる。ハーレム、学園、異世界ファンタジー、などなど。


 悩んだ末、クリックしたのは元カノと同居というラブコメディー。王道だからこそ、その作品ごとに特色があって面白い。一話から見ようと、題名にカーソルを合わせクリックすると、ふっと手元が暗くなる。


 あれ、蛍光灯切れたかな。見上げようとした刹那、女性の金切り声がクラスに響き渡る。


「キヨミズくん、上えええええええええええええええええ」


 あの人は……霜田さんだな。あれ、キヨミズなんてヤツいたっけ?


 疑問に思いながらも、その声に押されるように上を見る。と、割れた蛍光灯と落ちてくる天井が見える。もはや逃げることもできないほどの距離まで迫ってきている、無駄だとわかっていながらも頭に手を被せる。非常事態でパニックになった頭を単語が通り過ぎていく。


 手抜き工事、老朽化ろうきゅうか、最期、死、終わり、終焉しゅうえん、霜田さん、キヨミズくん、ん?俺の名前??違う、俺の、俺の名前は――


 体を揺らす凄まじい衝撃が走り、痛み。轟音ごうおんとともに意識が遠のいていく、視界はしゅに染まる。そしてガラスの破片が床にぶつかる小気味のいい音がして、すべてが黒に塗りつぶされた。

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