《三章 尋問》
「親子の団欒を邪魔して申し訳ありません。国の依頼で王都から来ました、ルーグナーと申します」
「……ルーグナー?私が王都にいた頃、聞いたことのない名前ね。どちらの家の方かしら?」
ローラはアデルが家名を名乗っていないことを不思議に思った。それは、あまりにも相手のオーラが貴族と、いやそれ以上の存在のように感じ取っていたからだ。多くの戦闘からローラは相手の事を観察するのに長けている。それも、優れ過ぎている。【
「いや、ただの平民で────」
「────私にはそれは通用しないわよ」
ローラの鋭い観察眼がルーグナーを見据える。 戦いの経験で培われた直感は、ただの平民とは到底思えない何かを彼から感じ取っていた。
事実上、元第一王子であるルーグナーは
「……」
瞬き一つすら相手に情報を与える、そんな緊迫感がルーグナーを襲っていた。
「ママ、急にどうしたの?」
ただならぬ雰囲気の二人に割って入ろうとしたルナだが、ローラは気にせず話を進める。
「あなたの立ち居振る舞い、気品。あと、その服もありきたりなものではない。魔力の流れも特異。だからてっきり貴族だと思ったのよ。ねぇ、ルナ、この人は普通じゃないわね?」
ルーグナーは黙ってローラの眼差しを受け止める。 彼女の洞察力は世界でも屈指。そんな彼女の読みを内心恐れ、警戒する自分がいる。
「そうなの?」
ルナはローラにそう尋ねた。
正直、私に聞かれたところで殆ど知らないのよね。それにしても、ママってやっぱりすごいわ。短時間でそこまでの情報を読み取れるんだから。
「えぇ……。あ、何処かで見たことがある気がするわ」
ローラはルーグナーの正体に気づきかけている。その瞬間、割って入る声。
「申し訳ありません、ローラ様。その話はここまでにしていただけると」
「あなたは?」
「シアン領主ディアンの長男、インペル・シアーズです。彼は私の友人であり、貴族とも交流があります。強い魔力を持ち、それを気にしているのです」
インペルはルーグナーの秘密を知る数少ない人物。ここでの発言は重要な役割を持っていた。
しかし、ローラは止まらない。
「ディアンの息子ね。懐かしいわね、確かお父様は金勘定が得意だったかしら。ところで、貴族のあなたが平民を名乗る彼と深く関わっているのね?昔のあなたとは違う」
緊張が走る中、インペルの表情は変わらないが、事態の異様さは明白だった。
「そして、不思議なことに、あなたはルーグナーに妙に気を遣っている。まるで────」
ローラの言葉に二人は顔を強ばらせる。
「────あなたのほうが身分が低いみたい。もしかして貴方、いや、貴方様は、第────」
「「……!?」」
ルーグナーとインペルは互いに顔に出てしまう。初対面でここまで真実に近づいた者はほとんどゼロに等しかった。まして、何か自分の情報を話したわけではないのにだ。
ルーグナーとインペルが危機に陥っていた時、ルナは話に割って入った。
「ママ、そろそろ本題にしましょう。この人たちは私の仕事仲間よ。それ以上の詮索はやめて頂戴?」
ルナの割り込みが、危険な空気を断ち切った。
なんかやばい話になりそうだから割り込んだんだけど、正解だったかしら?ルーグナーの抱えているものってすごく大きそうだから、私は関わりたくないの。
それにしても、ルーグナーってほんとに何者なんだろうか。もしかして、王直属の貴族の隠し子だったりして。もはや、王の隠し子?いや、流石にありえないわね。
私の頭の中で推測がぐるぐると回るが、簡単には答えは出ない。
ローラとルーグナー、インペルのやりとりは続いていた。
「昔の癖でつい観察してしまうの、ごめんなさい」
「いえ、こちらこそ。貴族の方に会うと思って色々と準備していましたから、うまく対応できていたようでよかったです」
ルーグナーはとっさに嘘をつき、状況をやり過ごした。相手が踏み込みすぎたと反省し、一歩下がってくれたおかげでなんとか逃げ道ができたのだ。
「私も謝罪などいりません。むしろ、こちらが突然お邪魔した立場ですので、警戒するのが自然かと」
インペルもローラを庇うような発言をし、これにてひとまず話は落ち着きを見せた。
「自己紹介が遅れました。私はローラ・カルディア。元第一騎士の団長をしていたこともあります。そして、ルーグナー君、インペル君、ルナ、ようこそ我が家へ。さあ、事件の話を始めましょう」
三人は空いた部屋へと案内され、静かに物語の幕が開いたのだった。
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