4.どうやら、アリスと買い物に出かけるようです

「クロちゃん、おはよう!」

「ん、おはよう」


 教室に入ると、アリスが元気にあいさつしてくれた。可愛いなぁ。目の保養になる。

 あくびを嚙みしめあいさつを返す。

 今日は案の定、寝不足だった。頭がフラフラするし、足取りも重い。今日はいつも通りの時間に寝てやる!


「寝不足かい?」

「……遅くまで本、読んじゃって」

「明日はダンジョンに入るんですから、今日は早めに寝てくださいね」

「そうするわ」


 シュルツとマーキスに心配されてしまった。


「今日の買い物どうする?」

「もちろん、行くわ。今日の楽しみだもの」

「良かった!」


 手が自動的にアリスの頭を撫でに行く。可愛いから仕方ない。

 私が癒されていると、教室の扉が開き、学園長が入ってくる。


「みなさん、おはようございます」

「「「おはようございます」」」


 今日からは、授業が始まる。

 居眠りしないように、心の中で気合いを入れ、授業に集中する。

 でも、1限目が歴史はやめてくれ……。


「クローディア君、この国が建国して何年経ったか分かるか?」


 学園長の声が聞こえ、瞼を開く。

 当てられていると気づき、バッと立ち上がる。


「───はい!500年です!」

「……その通りだ。しかし、睡眠学習は控えるように」

「はぃ」


 恥ずかしくなり、声が小さくなる。

 授業中にねむってしまうなんて……。寝不足は敵だ。再認識した。


 その後の授業は、何とか乗り切った。

 もう、限界だ。

 昼食を軽くすませ、自分の席に突っ伏すし仮眠をとる。これで少しは回復すると思いたい。




「クロちゃん、もう始まるよ」


 肩を軽くゆすられ、アリスに起こされる。

 顔を上げ、少し体を伸ばす。あー、スッキリした!睡眠大事。座右の銘にしようかな?


「ありがとう」

「元気になった?」

「ええ。元気いっぱいになったわ」


「良かった」と笑いながら、席に着く。

 私は姿勢を正し、午後の授業に備える。数学と政治よ、かかってこい!


 ※


 接戦だったが、なんとか勝利した私は、アリスとショッピングセンターに来ている。

 ダンジョンに持っていくものを買うのかと思っていたけど、「あっ!期間限定のアイスでてる!」というアリスに手を引かれ、気付いたら手には桜餅アイスを持っていた。

 おお、ホントに餅が入ってる。


「今日からだって。ラッキーだったね!」

「そうね。とても美味しいわ」


 あっという間に食べ終わり、さて、どこのお店から行こうかと席を立とうとすると、


「明日、大丈夫と思う?」


 アリスが不安な声で訪ねてくる。

 座り直し、アリスの問いに答える。


「大丈夫よ。学園長も15層まで問題ないと言われたでしょう?」

「そうだけど……」

「ボス戦が心配?」

「……うん」


 10層のボスは、トレントという木の魔物だ。

 魔法は使わず、複数の枝で攻撃してくる。本体は動かないし、枝の動きもゆっくりだ。それに、火が弱点だから、攻撃を3人で防いでいる間に、アリスの魔法をシュルツが支援して放つと難なく倒せるだろう。

 むしろ、負けることを想像するのが難しい。


「いつも通りやれば、問題ないわ」

「……そうだよね」

「弱気なんて、珍しいわね。心配するのはいつも私の仕事だと思っていたわ」

「それって、私が考えなしの能天気ってこと?」

「そういうところも可愛いわよ?」


「もう!」と笑うアリスをみて、少しは元気出たかなと安堵する。

 席を立ち、アイス屋さんを出る。


「何買う?」

「んー、ポーションは欲しいよね」

「あとは……、いいかな」


 そろえるものが少ないことに気付く。

 まあ、上層までしか行かないし、ダンジョンに泊まるわけでもないしなぁ。


「洋服でも見て回ろうか」

「そうだね」


 苦笑しつつ、可愛いものを探しに歩き出す。

 アリスに似合う髪飾りを見つけ、プレゼントしてしまった。

 推しにプレゼントできる素晴らしさに感謝!


 ※


 今日はダンジョンに入るということで、朝からソワソワしていたアリスたちを見かねたのか、「今日の授業はここまでにします。午後からは実習にしますので、ダンジョンに入っても大丈夫です」という学園長の言葉に「「「ありがとうございます!」」」と男子の声が重なる。

 ……私たちに甘くない?


 早速、受付で手続きを取り、ダンジョンの入り口の前に立つ。


 「さあ、準備はいいかい?」


 シュルツの問いにみんなが頷く。


 「いつも通りやろう。学園長から15層まではお墨付きをもらってるしね。じゃあ、行こうか」


 マーキスを先頭に、マシュー、シュルツ、アリス、最後に私の順でダンジョンに入っていく。

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