第10話 1ー10 体力と格闘術

 その週の土曜日14日、俺は河川敷に来ていた。

 梓ちゃんとのデートは、来週21日に予定しており、既に彼女に伝えている。


 勿論、OKは貰っているよ。

 今度二人で行く予定なのは、江戸時代の藩校の名前をもじったK園。


 3万5千平米もある池泉回遊式庭園群で、江戸時代の武家屋敷も残っているんだ。

 ここは、知る人ぞ知るデートスポットだから、周り中がカップルなんで、俺と梓ちゃんの二人連れでも余り人目を気にしないで済むはずだ。


 ところで河川敷での検証なんだが、目当ての場所に着いて、100mの巻き尺でもあればよかったが、家にはそんなものは置いていないから、歩幅でおよその距離を測り、チョークで印を小さくつけるところから始めたよ。

 100mで印をつけ、さらにそこから、もう100mで印をつけ、またそこから200mを測って印をつけた。


 そうしてスタート地点に戻り、適宜、休憩を挟みながら徒競走のタイムを計った。

 100mで10秒台後半が出て、まずびっくりしたな。


 俺の脚、ちょっと前まではそんなに速くはなかったぞ。

 精々13秒代後半のはずなんだが・・・。


 200mで21秒台のタイムが出て、またまたびっくり。

 400mでは44秒台前半、どれも世界記録じゃぁないはずだが、100m以外はそれに近い記録だよ。


 後で調べたら、100mは9秒58が世界記録で、日本記録は9秒95、高校記録は10秒01だった。

 200mでは、世界記録19秒19、日本記録は20秒03、但し、高校記録は20秒34だった。


 400mの場合では、世界記録43秒03、日本記録は44秒78、但し、高校記録は45秒47だった。

 うーん、少なくとも400mについては、日本新記録に高校新記録になっちゃうかも・・・。


 瞬発力はまだ低いんだけれど、持久力があるからね。

 だから400mでは日本記録が出ちゃうのかもしれない。


 まぁ、そもそも距離が正確に測ったものじゃない上に、自分で手押しのタイムだから誤差もあるだろうから、余り気にしないようにしておこう。

 但し、体育祭の徒競走では余り早すぎないようにセーブしなけりゃいかんだろうな。


 ぎりぎり一位か二位が良いだろうな。

 次いで、元の地点に戻って橋のたもとから出発。


 目指すは1.6キロほど先の橋のたもとで折り返し、ここに戻って来ること。

 ストップウオッチを押しながらスタート、うん、身体が軽い。


 幾らでも走れそうな気がするなぁ。

 折り返し地点でタイムを見たら3分50秒を切っていた。


 あれ?

 早過ぎない?


 でも、俺って、全然疲れていないんだよな。

 まぁ、この際だから、思いっきし、やってみるか。


 で、後半結構頑張ってみた。

 結果、3000m(3.2キロかも?)で驚きの7分12秒でした。


 俺のタイムを三分以上も縮めちゃった。

 家に帰ってネットで確認した。


 7分12秒は、3000m男子の世界記録だよ。

 これまでの記録は、7分20秒67だもんね。


 これは・・・。

 ウーン、距離が違っていた?


 計時誤差?

 まぁ、いろいろ考えられるよね。


 いずれにせよ、注意しなきゃな。

 特に中距離と長距離走、本気出したら陸上界にスカウトされそう。


 今のところ、俺はアスリートなんかになりたくねぇ―。

 翌日の15日(日曜日)、日中は例によってT山に行き、格闘術の練習だ。


 パソコンでダウンロードした動画を、micro SDカードに取り込んで、スマホで見ることができるんだ。

 動画をそのまま延々と流し続けると通信量が多すぎるから、そこは工夫してダウンロード動画の録画再生にしているわけだ。


 後、充電用のバッテリーパックも持参している。

 今回持って行くのは充電二回分用で、ついでに念のためだけれど、リュックには携帯型のソーラパネルも入っている。


 日中の日向(ひなた)ならこいつで十分充電も可能だ。

 いつものようにコンビニでお弁当代わりのおにぎりとお茶とスポーツドリンクを購入。


 一応、小型のステンレス製魔法瓶二本も持って行くので、ペットボトルから入れ替えておけば、冷たいままで4時間程度は間違いなく保温ができる。

 5月の半ばなんだけど最近は温暖化の所為か、風が無いと30度近くまで気温が上がることもあるので、水分補給は絶対必要だ。


 T山の登り口、今日は意外とハイキング客が多いみたいだったが、俺の練習場は無事に空いていた。

 そこに着いてからは、スマホの映像を見ながらひたすら型の練習だ。


 空手の練習は簡単にできるんだが、合気道は相手が居ないとチョット難しい。

 それでもイメージだけで手と足を連動させるようにする。


 二時間も動き回ると流石に汗をかくんだが、疲労感が全くないのにはおそれ入る。

 やっぱり、かなりの持久力がついているみたいだが、どこかでエネルギーダウンが来そうでちょっと怖いよな。


 一度、ある程度の限界を確認しておく必要はあるかもしれない。

 脂肪の燃焼でエネルギーを得ているとしたら体脂肪が減っているはずだな。


 そういえば何となくだけど腹筋も割れてきたような気がするんだ。

 あまり疲れては居ないんだが、しばしの休憩を挟んで再開する。


 午後三時を過ぎるころには、何となく格好がついてさまになってきた感じがする。

 正拳突きや上段蹴りでビシッと音がするんだぜ。


 空手なんてそれまでやったことないのにな。

 帰りがけにステータス観たら、いろいろ上がっていたが、ステータスの基本項目はCHA以外全般に上がっていて、VITの上昇分が大きいな。


 確か初期値は8だったはずが、今は30と四倍近くになっている。

 スキルでは、格闘術がLv4になったぜ。


 それと連動して闘気も上がったな。

 今日の練習中は、闘気をまといながらの稽古だったから・・・。


 俺の身体は丈夫にはなっているだろうけど、多分普通に木や壁を殴ったら絶対に拳や腕を痛める。

 でも、闘気で守られていれば、それが無いんだ。


 その為に、攻撃や防御の際には、いつでも闘気を纏えるように練習している。

 常時発動もありなんだろうけれど、それをやると流石に疲れるんだ。


 身体じゃなくって気持ちの問題なのかな?

 夕刻には家に帰って、言語能力の育成のためX-Ne◇tで二本の外国映画を観る。


 今日は、中国映画と韓国映画だ。

 明日はインド映画と、タイ映画の予定。


 学校の勉強も一応やるんだが、実は情報とか知識の類も『Resistance』に関りがあることが判ったんだ。

 例えば読んでよくわからない記述とか、理解が難しい理論ってあるじゃん。


 それも、頭脳に読み込む際の抵抗の影響なんだ。

 だからどうやっているかはわかんねぇけど、俺の頭にすんなり入るようにイメージしてやると意外と覚えられちゃうんだな、これが・・・。


 シナプス回路のどっかをいじくっているかもしれないが、学校で受けた授業は余程のことが無いと忘れない。

 自分の読んだ参考書はしっかり頭に入っていることが判ったよ。


 今のところ頭から煙も出ていないようだから、それなりの容量はあるんだと思う。

 だから俺の家での勉強時間は一日1時間だけにしている。


 基本的に問題集の熟読な。

 同じ問題が出たら即回答が判るようにしている。


 まぁ、受験対策に過ぎん。

 普通の勉強は、センセが教えてくれるはず。


 後は普通に読書なんかで雑学を集めるのかな?

 その結果は来週の中間試験で判るだろう。


 ◇◇◇◇


 5月19日と20日に中間試験があった。

 結果から言うなら、俺としては満点だ。


 但し、感想文的なものは評価が判らん。

 少なくとも選択式のテストは、完璧だったはず。


 記述式については、答えがはっきりしているようなものは無問題モウマンタイ

 総じて最低でも平均90点は行けたものと思っている。


 うん、守護霊の黄爺さんのお陰でテストの成績までよくなったような気がするぜ。

 今度会ったら、しっかりと礼を言っておこうと思う。


 中間試験も終えて、翌日の21日(土曜日)は、梓ちゃんとデートだ。

 K園の開門時間は9時からなんだが、映画のように周遊開始時間が決められているわけじゃないから、そんなに早い時間にする必要はなく、待ち合わせはK園前の茶屋付近で午前10時半にしている。


 ここは観光コースにもなっているからいくつかのバス路線もあり、梓ちゃんのところからも便利なはずだ。

 俺はユニクロのパンツに長袖Tシャツで前回とは色違いのものを着た。


 ウェストポーチを腰に着ければ準備完了。

 頭はやっぱり櫛削っているから、お袋に出かけるところを見られて言われた。


「彼女さん、何時いつか連れてらっしゃいね。」


 俺は、顔を赤くしながら何も言わずに玄関を出たよ。

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