第十三話: 地下組織への潜入

悠斗たちが王都で遭遇した地下組織の一件は、彼らの心に深い影を落とした。王都の地下に潜む闇の存在、そしてその組織が彼らを狙っているという事実は、悠斗たちにとって新たな脅威となった。彼らは地下組織についての情報を集め、その目的を探るために行動を開始した。


翌朝、悠斗たちは早速、地下組織に関する情報を得るために動き出した。まずは王都で評判の高い情報屋を訪ね、組織の正体や活動範囲についての手がかりを求めた。


王都の裏通りに位置する薄暗い店の中、悠斗たちは情報屋と対面していた。情報屋は小柄な中年男性で、狡猾な笑みを浮かべながら彼らを迎えた。


「さて、お前たちは一体何を知りたいんだ?」


情報屋は手元の書物を弄りながら、悠斗たちに問いかけた。彼の態度は緊張感があり、まるで何もかもを見透かしているかのようだった。


「地下組織について知りたい。王都の地下に潜んでいると言われる集団のことだ」


悠斗が真剣な表情で答えると、情報屋は少し驚いたように目を細めた。


「地下組織、ねぇ…あまり詳しく話すと俺の身も危うくなるが、まぁ少しは教えてやろう。あそこは普通の人間が近づいてはならない場所だ。何しろ、王都での様々な裏取引や犯罪活動を一手に引き受けているんだからな」


情報屋の言葉に、エリスが眉をひそめた。


「それなら、なぜ私たちが狙われたのかしら?ただの旅行者を襲うなんて、何か目的があったはずよ」


エリスの問いに、情報屋は少し考え込んだ後、重々しい口調で答えた。


「お前たちが持っている情報が、彼らにとって脅威になると判断されたんだろう。地下組織は、異界の門や災厄に関する情報を収集しているとも言われているからな」


「異界の門…まさか、それも彼らの目的の一つなのか?」


悠斗はその言葉に驚きながらも、その可能性を真剣に考え始めた。もし地下組織が異界の門や災厄の謎に関与しているのだとすれば、彼らの旅の目標と衝突するのは避けられない。


「地下組織に潜入するにはどうしたらいい?」


悠斗が情報屋に尋ねると、情報屋は顔をしかめた。


「潜入だと?それは危険すぎる。あそこに足を踏み入れた者は、二度と戻ってこないと言われている。それでも行くつもりか?」


悠斗は決意を込めて頷いた。


「俺たちはこの世界の災厄を止めるために戦っている。地下組織がその一端を担っているなら、避けて通るわけにはいかない」


情報屋はしばらく沈黙していたが、やがて深いため息をついて言った。


「わかった。だが、潜入するには慎重に準備をする必要がある。地下に通じる道はいくつかあるが、最も安全なルートは南門の近くにある古びた倉庫だ。そこから地下に降りることができるが、危険は覚悟しろ」


「ありがとう、助かる」


悠斗は礼を言い、情報屋に手を振って店を出た。外に出た瞬間、エリスが不安そうに声をかけた。


「本当に行くつもりなの?危険だってわかってるでしょ?」


「もちろん、危険は承知の上だ。でも、このまま何も知らずにいるわけにはいかないんだ。地下組織が異界の門に関わっているなら、なおさら調査が必要だ」


悠斗の言葉に、エリスもリュウも黙って頷いた。彼らはこれから直面するであろう危険を覚悟しながらも、互いに信頼し合って前に進むことを決意した。


夜が訪れ、悠斗たちは情報屋から教えられた倉庫へと向かった。倉庫の周囲は静まり返り、人影もほとんどなかった。月明かりの下、悠斗は慎重に倉庫の扉を開けた。


「気をつけて。何が待ち受けているかわからない」


悠斗は仲間たちに声をかけながら、倉庫の中に足を踏み入れた。内部は埃っぽく、かつては物資が保管されていたであろう箱や棚が散乱していた。だが、その奥には隠し階段があり、地下へと続いていた。


「ここからが本番ね…」


エリスは深呼吸をし、リュウも緊張した表情で階段を見つめていた。悠斗は彼らを励ますように微笑み、先頭に立って階段を降り始めた。


階段を降り切ると、そこには広大な地下空間が広がっていた。薄暗い明かりが灯り、どこか冷たい空気が漂っていた。遠くには人の声や、何かが動く音が聞こえてくる。


「ここが地下組織の拠点か…」


悠斗は辺りを見回しながら呟いた。その時、突然背後から声が聞こえた。


「よく来たな、勇敢な旅人たちよ」


悠斗たちは驚いて振り返ると、そこには黒いローブをまとった男が立っていた。彼の顔は半ば隠されており、その冷たい目だけが光っていた。


「お前たちがここに来るのは予想していた。だが、我々に挑むというのなら、それ相応の覚悟が必要だ」


男の言葉に、悠斗は木の枝を握りしめた。彼が地下組織の一員であることは間違いなかった。そして、彼が悠斗たちを待ち構えていたことも。


「俺たちに何の用がある?何が目的だ?」


悠斗は冷静に問いかけたが、男は答えず、静かに手を掲げた。その瞬間、暗闇から複数の男たちが現れ、悠斗たちを取り囲んだ。


「お前たちの持つ情報は、我々にとって非常に重要だ。だが、それ以上にお前たちの力が必要だ。我々と協力するつもりがあるのなら、命は助けてやろう」


男は冷酷な笑みを浮かべながら提案してきた。しかし、悠斗たちが彼らに協力する気は毛頭なかった。


「俺たちはこの世界を守るために戦っている。お前たちに協力するつもりはない」


悠斗の断固とした言葉に、男は静かに笑い声を上げた。


「そうか…ならば、力ずくでお前たちを従わせるしかないな」


男の言葉と共に、取り囲んでいた男たちが一斉に襲いかかってきた。悠斗はすぐに反応し、インフィニティグロースのスキルを発動させて敵の攻撃を防ぎつつ反撃した。エリスとリュウもそれぞれの力を駆使して戦い、リーナは慎重に魔法を放ちながら援護した。


戦いは激しさを増し、地下空間に響く衝撃音と魔力の波動が次第に大きくなっていった。しかし、悠斗たちは次々と現れる敵に圧倒されつつあった。


「くそっ…一体どこまで敵がいるんだ!?」


悠斗は息を切らしながら叫んだが、敵は止まることなく次々と襲いかかってきた。彼らはまるで無限に湧いてくるかのようだった。


その時、リーナが不安げな声で言った。


「悠斗さん、あの男が指揮している限り、敵はどんどん現れてくるかもしれません…」


リーナの指摘に悠斗は気づいた。敵の動きはあの黒いローブの男が統率しているようだった。彼を倒さなければ、この戦いは終わらない。


「わかった、あいつを倒す!」


悠斗は再び木の枝を握りしめ、男に向かって突進した。エリスとリュウもそれに続き、リーナは後方から魔法で援護した。


黒いローブの男は悠斗たちの動きを冷静に見極め、次々と攻撃をかわしながら反撃してきた。彼の動きは素早く、そして強力だった。しかし、悠斗たちは力を合わせて彼に立ち向かった。


「これで終わりだ!」


悠斗は全力で木の枝を振り下ろし、男に一撃を加えた。その瞬間、男の体がふっと消え、闇の中に消えていった。


「まさか、幻影だったのか…?」


悠斗は驚きの声を上げたが、その時、闇の中から再び声が聞こえた。


「お前たちの力は見せてもらった…だが、これで終わりではない。我々はまだ、お前たちを試すつもりだ」


男の声は次第に遠ざかり、やがて完全に消え去った。それと同時に、周囲の敵も姿を消し、地下空間は静寂に包まれた。


「一体何が起こったんだ…?」


悠斗たちはしばらくその場に立ち尽くしていたが、戦いが終わったことを確認し、ようやく一息ついた。


「どうやら、奴らは俺たちを試していたようだ…でも、何が目的だったんだ?」


悠斗は疑問を抱きながらも、仲間たちと共に地下空間から脱出することにした。彼らはまだ地下組織の全貌を掴んでいないが、これからの戦いに向けてさらに警戒を強める必要があると感じていた。


王都に潜む闇と、異界の門にまつわる謎。その裏に隠された地下組織の真の目的とは何なのか?悠斗たちは新たな決意を胸に、さらなる冒険に向けて歩みを進めるのだった。

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