第23話 ②
「遠慮なく上がって、燈くん!」
「あざす!」
「今日も暑いね!勉強の前にアイス食べな!」
「やった!ありがとうございます!」
夏休み明けのテスト勉強をする為に駅まで迎えに来てくれた達央さんの車に乗せてもらって一輝の家にお邪魔した。家に着いたらすぐに一輝は部屋を片付けてくるからここで待っててと言い残して二階に上がっていった。
残された俺は達央さんと二人きりになったが、何度も遊びに来ているから最初に感じていた緊張は何処ぞへ消えて今は普通に話せるしアイスを遠慮なくいただくことが出来るほど打ち解けてしまった。
「またテストか。だから、勉強をしにきたんだね」
「はい。まぁ、俺は今回自信あるんですけどね」
「え、なんで?いっつも、自信なさそうなのに」
「いつもは……、一旦、忘れて」
「忘れるんだ」
「今回は!夏休みの宿題も自力で、……一輝の手も少し借りたけど!概ね、自力で解いたし」
「え!?偉い!それは今回のテスト、楽しみだね」
「もう、余裕で赤点回避な点取れますよ!……ま、さっきは少ししか一輝の手を借りてないとかって言いましたけど、一輝のお陰な部分が大半なんですけどね。いっつも、助けられてばっかりで……」
「そんなことないよ。一輝も燈くんとおんなじこと思ってる筈だよ。それに僕も一輝の近くに燈くんみたいな人がいてくれてすっごく嬉しいんだ」
「え?……ホントですか?」
「本当だよ!燈くんと仲良くなってからの一輝は前みたいに無理しなくなったし」
「無理?」
「一輝、テスト前になると朝方まで勉強してるの。……知らない?」
「朝方、までは知らないです。かなり遅くまで勉強してるのは何となく知ってはいましたけど……」
「そこまで、無理して勉強しなくても点数取れるくらい頭いいのにね。それを本人は自覚出来てないらしくて……」
「……」
寂しげに笑う達央さんになんて言ったらいいのかわからずに黙り込む。達央さんから聞かされた一輝は見覚えのある姿だったから。
だって、テスト前の一輝は異常だと思うくらい勉強をする。休み時間の合間にも勉強するくらいだ。だから、朝方まで勉強してると言われても違和感はなかった。
「……僕が言っても、止めてくれなかったんだ。体が心配だから寝てほしいって言っても。でも、燈くんと仲良くなってからは朝方まで勉強しなくなったんだ!だから、僕は燈くんが何か言ったからだと思っていたんだけど……」
「んー?……勉強しなくてもいいくらいの点数取れてる、的なことは言った気は、します。それ以外は……特に。あ、俺がいんのにまだ勉強しようとした時に止めたくらいですかね」
「それが良かったんだろうね。燈くんが言ったから一輝も止めようって」
「そう、なんすかね……」
「絶対そう!僕は嬉しいよ。燈くんみたいな人が一輝と……」
「燈、部屋綺麗になったから」
「お、マジ?じゃ、期待しててください!」
「うん!期待してる!程々に頑張ってね!」
「はい!」
達央さんが何かを言いかけたのが気にはなったが、時間は有限の言葉を思い出して急いで一輝の後ろをついていった。
部屋につくまでに考えるのは達央さんに聞かされた話だった。朝方まで勉強していてよく今までよく倒れなかったなという感心半分ともう半分はなんでそこまでして勉強するんだろという疑問で頭はいっぱいになっていた。
「……やっぱ、今日は勉強やめるか?」
「え?あ!するする。悪い。考え事してて部屋についたのに気づいてなかったわ」
「考え事?」
「一輝って頭いいのに……、手抜かないじゃん」
「テスト勉強のこと?俺はみんなが思ってるほど頭、良くないよ。寧ろ勉強してあの点数なんだからもっと頑張らないと」
「90点以上取れてんならよくね?そんな頑張んなくても。一輝は何点目指してるの?」
「全教科100点」
「ひゃッ!?全教科100は……。なんでそこまで100に拘んのさ?」
「……昔、言われたから。100点以外は駄目だって」
「……誰にだよ?そんなアホみたいなこと言った奴」
「……」
一輝は部屋に着いたのにぼうっと立っていた俺が疲れていると思ったのか勉強を止めるかと甘い提案してきた。俺のことを本気で心配している目をしていた。ガチで勘違いしかけていると思い、即座に否定して考え事の内容を話した。そのついでに長年疑問に思っていたことを聞いた時に一輝の顔から表情が抜け落ちた。その顔に何故かデジャブを感じながら、一輝の言葉を待ったが口を一瞬開いて、閉じてしまった。
「一輝……?」
「……それよりも、勉強をしようか。話に時間を取られちゃったからあんま時間ないけど」
「……わかった」
さっきまですらすらと話していたのに、答えなかったのは余程その人の名前を言いたくないのだと思って無理に聞かずに聞き分け良いフリして鞄から勉強道具を出した。一輝は誰かは言わなかったけど、今日話を聞いて昔聞いた噂が嘘ではなかったのだと確信した。
一輝をここまで勉強馬鹿にした犯人。
それは、多分、
「燈、そこ違う」
「え、嘘!?自信めちゃくちゃあったのに!」
「めっちゃ惜しい」
また考え事をしていたら、間違う筈のない問題を間違っていたことを一輝が教えてくれた。急いで書き直して一輝に合っているか確認して貰うとグーサインをされた。
その後は一輝の邪魔をしないように間違わないように集中して勉強に取り組んだ。こんなに真面目に勉強したら、次のテストは歴代最高得点を叩き出せる自信しか湧いてこなかった。それから、一輝の家から自分の部屋に帰ってきた後も勉強を続けたが、日付が変わりそうになった所で止めてスマホを手に取った。
一輝にメッセージを送信すると既読がついて返事がきた。
『寝るから燈も寝て』
『お前が寝るなら寝るけど』
『寝る』
『確認しに行くぞ』
『頑張れば有言実行出来る距離だから本気にしそう』
『するが?』
『わかった。本当に寝るから、燈も寝て』
『信じて寝るから。嘘ってわかったら次から家までガチで行く』
『お前には嘘つかない。おやすみ』
『おやす』
部屋の明かりを消してベッドに横になる。
一輝がホントに寝たのか気になったが、今日一日酷使された脳は睡眠を要求してきて、それは抗い難く僅か数秒で眠りの世界に誘われた。
翌朝。
目覚めると達央さんからメッセージが届いていた。
『今日もぐっすりだったよ!燈くん、本当に何をどうやったの?』
と書かれていてあの後ちゃんと寝たんだと思って一輝にそう言うと「俺が嘘つくと思ってたの?」と臍を曲げられた。どうやら俺が達央さんに聞いたと勘違いしているらしいので、聞いたのではなく聞かされたのだと伝えるとどうにか許してくれた。それと、前に達央さんは聞かなくても俺に一輝のことを色々教えてくれると言ったのを思い出したみたいですぐに信じてくれた。
朝から一輝の拗ねた顔というめったに見れない珍しい顔を見れたし、今日はなんかいい事ありそうだと思いながら一輝と共に学校に向かった。
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