第20話





雲一つないよく晴れた空。

心地よく吹く風に乗って香るのは磯の匂いと子供達の楽しそうな声。

絶好のプール日和となった今日、俺達は海水プールに来ていた。前回は燈が具合が悪くなるという災難に見舞われて予定をずらすことになったが今日は誰一人かけることなく、寧ろ一人増えたりしつつ今日という日を迎えられた。



「太陽!と光を反射する海!」


「サイコー!!」


「マジで海の近くじゃん。てか、めっちゃ近くに海あるけど、こんな近いなら海入った方がよくね?」


「あっちの岩の上の黄色いテープから向こうに行くとあのおじさんに止められるからな」


「え?うわ、あのおっさん、めっちゃこっち見てんだけどッ……。行かない!!行かないっすよ!」


「すっごく入りたくなくなる方法があるけど」


「なになに!!」


「下に船着場があるだろ?」


「うんうん!船あんね!」


「その横のコンクリが削れてるとこあるだろ。あれ、波の力でああなった」


「……つまり?」


「ここら辺割と荒れやすいから海に入ったら……」


「入ったら?」


「帰ってこれなくなる……かも」


「それは断言していい。かもではない」


「……実際、ここの海水プールであの黄色いテープを超えて海に落ちた子供が亡くなってるらしいから本当に止めた方がいい」


「それを!早く言えよ!!死人出てるの!?」


「昔の話。だから、夜は……出るらしい……」


「出んのッ……!?」


「……ここのキャンプ場、泊まってみる?」


「泊まらん!泊まらんって!!」

「やだ!!絶対ヤダ!!」

「普通に嫌なんだけど。外で寝るとか無理。虫いんじゃん」


「冗談」


「冗談か!わっかんねーって!冗談言う時はもっと顔を……こう、朗らかにしろ!!」


「幽霊も冗談だよな?」


「……」


「おい!黙んな!否定しろ!」



こうして、賑やかに始まった訳だがみんな不真面目に見えて真面目だからプールに入水する前の準備運動をちゃんとしてから入水していった。飛び入り参加のヒムラも入水してるのに文句を言っていたが、その顔はとても楽しそうだった。



「磯臭ぇ」


「海だからな」


「あっれ~、お前はそんなこともわかんないの?」


「はぁ?」


「てか、彼女はよかったの?」


「……別に。……アイツ、予定があるから……」


「ふーん?」


「……泳がないの?」


「泳ぐ泳ぐ」



体育祭の時もそうだったが、彼女の話になるとヒムラは一瞬目が泳ぐ。何か疚しいことでもあるのかと聞きたくなるが、聞いた所で答えてはくれないだろうと思って聞かないでいる。それより、燈はどうしてるか気になり周りを見渡すとすぐに見つけることが出来た。

燈は持ってきた浮き輪に掴まってプカプカと水面に浮いていた。自分で動くことはせずに目を閉じて風の吹くままに動かされてる様子に思った以上に楽しんでいるみたいで安心した。気が抜け過ぎてる燈を見て俺はゴーグルをしっかりとつけてからプールに潜って静かに燈の元へと水中から近づいていき、だらんと投げ出された泳ぐ気のない足の元に来た。

そして、足を掴んで柔い力で下に引っ張った。驚いたのか足をバタつかせてきて危なく顔面に蹴りが入りかけた。素早く離れて少し待つと燈も潜ってきた。燈は喋れない代わりにジトっとした目で不満を伝えてきた。

けど、そんなのは痛くも痒くもないとドヤっていると、燈が予想外の行動に出た。



「!!ゴボッ!?」



まさかの変顔攻撃になす術もなく、一瞬にして酸素を失い水面に出なければならなくなった。燈はそういうことをしないタイプだと決めつけていたから、色んな意味でダメージを受けていまだに腹筋が震えている。



「おま……それは、反則だ……」


「一輝のマネしてみただけだが?どうだった?」


「本家超えしてた」


「マジ?」


「おい、そこ!二人で楽しそうにすんな!」


「そうだー!混ぜろー!」


「お前ら元気すぎ……」


「ヒムラはぐったりしてんね。大丈夫?」


「大丈夫……」


「あれあれ~?ヒムラくんもうギブですか~?」


「は?な訳……」


「次は40秒だ!」


「……俺達は休むか?」


「そうしよ……」



燈と二人で岩陰に座って休憩し始めた。

プールを眺めながら黙々と飲み物飲んだりお菓子を食べたりして腹を満たした後に漸く口を開いた。



「泳ぐの体力使うな……」


「浮き輪使ってたのに疲れた?」


「浮き輪に掴まるのも大変なんですー!」


「そうか?」



太陽は遮られるものがないからここぞとばかりに輝き蜃気楼も出来ていて、今日がどれだけ暑いか一目でわかるほどだった。

なのに、隣にピッタリとくっつく体温を鬱陶しく思っていないことに気づけないままミハルに呼ばれるまで二人で喋っていた。

遮る物がないからジリジリと太陽に焼かれた訳だが燈と接していた部分は焼けていなくてどれだけの時間、隣にいたんだと面白くなって家の風呂場で一人笑った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る