第21話 島根県鹿足郡の神社

鈴が倒れて5日目 10時



尊は、病室に戻った後で…ウトウトしてしまった。


気が付くと…持っていた石が無い…



―――あれ?俺、石を持っていたはずなのに…



ポケットを見ても、鈴の布団の中にも無い…



―――あの石が無くなったら…鈴を助けられない…



尊は焦った…



ふと、ベットの下を覗き込むと…


子どもと目が合った…


5歳くらいの男の子だ。



「あれ?君はここで何をしているの?」


「隠れてる…」


その子の手を見ると…石を握りしめている…


「ボク、その石はオジサンの大事な石なんだ。返してくれるかな?」


「あっ、ごめんなさい。オジサンが落としたから…」


「拾ってくれたんだね。ありがとう」


そう言って手を伸ばすと、石を返してくれた。


「なんで、隠れてるの?」


「検査をするって言われたから…逃げて来た」


「そうか…検査は嫌だよね…」


「オジサンも入院していたことがあるから、分かるよ。でも、オジサンが良くなって退院できたのも検査をしたからなんだよ」


「そうなんだ…」


突然、ノックの音とともに看護師さんが慌てた様子で入って来た。


「あっ、翔くんここにいたんだね。病室に帰ってお話をしよう?」


「うん、わかった…」


「ごめんなさいね…ありがとうございました」


「オジサン、さよなら」


「翔君、またね」


―――危なかった~。石を無くしたら大変だ…


―――気を付けないとな…



次の神社は、何処かな…


アプリを開いて、スワイプするけど…


なかなか神社がない…



4年前は、滝に行くのにハマっていたから滝の写真ばかりだな…



あっ、あったあった…


4年前の5月だ…



ここは、尊が自分用に新しい車を買った時に行ったんだ…


軽自動車は、鈴が通勤用に使っているから


バイクを売った代わりにスポーツカーを買ったんだ…


でも、展望台や滝は狭い道が多いから、車高の低いこの車では行かない。



それで、今日は観光地と決めて…鈴と出かけたんだった。



津和野の街並みを見て回って…


その後で、この神社に行ったんだ。



さて、行ってみるか…



すると…


そこには、朱色の明るい建物が見えた。


朱色の鳥居をくぐって階段を上る…



ここは、津和野城の城山の一角に位置し、時刻を知らせる太鼓が鳴り響いた谷間であったことから名前がついたようだ。


現在では、日本五大稲成一社に数えられているらしい。



すごい神社だったんだ…



御祭神は、宇迦之御魂神うがのみたまのかみ伊弉冉尊いざなみのみこと


願望成就の神様として崇められているそうだ。



鈴は、子どもの事を願ったかもしれないな…



まずは、本殿に行ってみよう。


でも、人が多いな…


人がいない方に行って石を置いてみよう。


尊は、石を置いてみたが…石は変化しない…


隣の建物にも石を置いてみたが…石は光らない…



隙を見て、本殿にも石を置いてみた…


石は、やはり光らなかった…



ここでもないのか…


尊は、戻るしかなかった…



「鈴、またダメだったよ…ごめんな…」



そう、話し掛けても鈴は答えない…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る