君を助けるための石
秋風爽籟
第1話 君のために出来ること
尊には、鈴すずという結婚して10年になる妻がいる。
鈴とは大学の時にバイト先のドラッグストアで知り合った。
バイト先の仲良しグループでキャンプに行ったのがきっかけだった。
話が合って、すぐ意気投合した。
そして…間もなく付き合うことになった。
尊と鈴は、25歳で結婚した。
尊の仕事は、医療機器の営業だ…
鈴は、中小企業の総務の仕事をしている。
子どもは、いないが…
2人は旅行やドライブが趣味で
夫婦で仲良く行っている。
そんな幸せな生活だったのに…
それは、ある日突然起こった…
ある暑い日の夜…
食事を終えた鈴が、立ち上がろうとした時…
ふらついて倒れてしまった…
「鈴、大丈夫か?」
「うん…なんか、ふらついて…ごめんなさい」
そう言ったまま、鈴の意識はなくなった…
尊は、すぐ救急車を呼んだ…
病院に着いて、医師から倒れた時の状況を聞かれた。
「突然倒れて…意識が無くなったんです」
「それ以外で気が付いたことは?」
「いえ、特にないです」
「分かりました。検査をしてみましょう」
それから、検査をしたけど…
原因が分からないという…
「そんなことがあるんですか…」
と医師に聞いたけど…
「あらゆる検査をしてみます」
「よろしくお願いします」
と言うしかなかった…
気が付くと、もう翌朝になっていた…
とりあえず、会社に電話をして…
出社できる状態になったら出社すると伝えた。
鈴の会社にも電話を入れ、事情を話した。
尊は、入院の準備をしに家に帰った。
これから…どうなるんだろうか?
と考えていたら…いつの間にか眠ってしまった…
尊は、誰かが起こす声で目が覚めた…
「尊…起きなさい」
「ん?誰?」
「私は、
―――何を言っているんだ?俺は夢を見ているのか?
「あの…何が何だか分からなくて…いったい何の御用でしょうか?」
「お前の妻、鈴の病気の原因についてだ」
「妻は確かに病気ですけど…どういうことですか?」
「鈴の病気の原因は、鈴が持ち帰った石にある…」
「石?何のことですか?」
「鈴が、ある神社から石を持ち帰ったのだ…それが原因でこうなっている」
「石が原因?」
「その石を戻せば、鈴の病気は快復するはずだ…それが出来るのは、おまえだけだ」
「何処の神社なんですか?」
「それは、教えられない…」
「どうしたらいいんですか?」
「石はここにある」
と言って鈴の大事にしているジュエリーボックスを見せた。
「ほんとうだ…いつの間に…」
「神社は、お前達が一緒に行った神社の中にある。神社の写真の上に石を置けば、その神社に行ける。行ってみて石を置いてみるのじゃ、石が光ったらそこの石だと分かるはずだ」
「でも、僕と鈴が一緒に行った神社は、10年の中で沢山あります。そんなに時間をかけていたら、鈴の身体が持たないんじゃないですか?」
「神社に行っている時間は、こちらの時間にして10分だ…」
「分かりました。やってみます」
「ただし…石を置く姿は誰にも見られてはいけないぞ。それと…いきなり10年前に戻るのではなく…最近の過去から順番に行くこと…分かったな」
「分かりました…」
気が付くと…伊邪那岐神は居なくなっていて…
尊も、また眠っていたらしい…
尊は目を覚ました…
―――あれは、夢だったのか?
確かめるために、鈴のジュエリーボックスを開けてみた。
すると…あの石がある…
信じがたい話だが…
鈴を助けるために…
俺が出来ること…
伊邪那岐神の言う通り、やってみるしかない…
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