第16話 遊戯司神
「……ッ!」
刹那何者かが、襲ってきた。
「リル!大丈夫か!」
怖気が走った。
今動いたら死ぬと体中の細胞が訴えかけてくる
「…ッ!フェンリルだと!?」
フェンリルはB+〜A-の実力を持っておりそのスピードはAランク冒険者でも見切れないほどの速度だ。
当たり前だがDランク冒険者につとまるような相手ではない。
しかもレオンは魔力がない状態だ。
万全の状態だったら少しは勝算があったかもしれない。しかし運命の女神は残酷だ。魔力がない状態でフェンリルと相対したレオンの命運は尽きた。
フェンリルはまずい…
魔力があった状態ならなんとかなったかもしれないが今は確実に無理だ。
だがここで逃げたら…いや逃げれないだろうが仮に逃げれたとしたらこいつは街に甚大な被害を出す。
それだけは阻止しなければ!
俺が持つ技の中で一番速度が速いやつをつかう。
「戦技: 瞬撃」
《界雷》
刃が触れる…その瞬間奴が笑ったような気がした。
「……ガァッ!」
傍から見たら奇妙な光景だっただろう。
一人の青年が構えた瞬間にふっとばされたように見えたはずだ。
「くっ…」
やはり見えなかったな…
フッ…やっぱり俺では奴に勝てないな…
今生きているのも運がよかっただけだろう
ならその運を最大につかわさしてもらおう。
レオンは今の衝撃で仮面がとれた顔をあげる
「生きている限り何度でも向かってやる!」
…何度向かっていっただろうか…
もう手足の感覚もない。視界もおぼろげだ。
……奴がきた。
もう立ち上がる体力もない…。でも、俺が稼いだ時間で助かる命があるなら安いものかもしれないな。
リルは、生きていられるかな…奴が興味を示さないといいんだが…。
今思うと、この世界にきて…いやこの世界に来る前から仲間と言える人はいなかった。
リルは俺の中で初めて仲間と思える奴だった。
それだけが心残りだな…
(ごめんな、リル…)
世間で言う貧民街で私は産まれた。
母は蕾がほころぶような笑みを見せる優しい人だった。
そして、父は横暴な人だった。母や私に暴力なんて当たり前。それでも母へその小さい体で私を必死に守ってくれた。
父が酒場の喧嘩で誤って刺されて死んだ時も少しも心は痛まなかった。ただ自業自得だと思った。
そのあと母はなんとか勤め先を見つけ、お世辞にも裕福とは言えないがとても幸せだった。
でも、それはある日唐突に終わりを告げた。
私はいつも通り母が家に帰ってくるのを待っていた。
でも、母は家に帰ってこなかった。
私は夜寝ずに待った。しかし朝になっても母は帰ってこなかった。
その時混乱していた私は母を探すために街中を探し回った。
その時ある事件後の現場に遭遇した。
お貴族様に無礼を働いたらいてその場で斬首されたようだ。
母だった。
その後のことはあまり覚えていない。
目が覚めたのは街の教会の孤児院だった。
後で聞いた話によると母が帰りを急いでいたところをお貴族が見たらしい。
そしてなぜかお貴族が激怒し謝る母の言うことも聞かずにその場で斬首した。
お貴族曰く「その薄汚れた格好でわたしの視界に入るな」だと。
ふざけるな!と激しく激昂したのは覚えている。
イケメン議員とか言って庶民から貴族に成り上がった庶民街出身の貴族だった。
復讐のためそこから私はがむしゃらに強くなろうとした。
ちょうど成人も近かったのですぐに冒険者になれたのも大きいかった。
そしてソロに限界を感じていた頃出会ったのがレオンだった。
初めはあの貴族のように外面だけがいいやつだと思っていた。
でも一緒に過ごしているうちに気付いた。
彼、私と同じくらい…いや私よりも人から愛情を受けて育っていないことに気づいた。
いや彼には仲間と言えるような人もいなかったのかもしれない。
彼は人から愛情をもらうことに慣れていなかった。
そのときなぜか。
なら私が昔母にしもらったように私が注いであげればいいと思った。
でもその機会が訪れる前に彼は無謀とも思える戦いに身を投じようとしている。
でも止められなかった。彼の瞳をみた瞬間同じだとおもった。
私のことをした父から守るために立ち向かっていった母の目とおなじだったから…
「…レオン……ッ!」
気絶していたみたい…。
「うッ…!」
まだ頭が痛む…でもそれより…
「レオンは?!」
どこ?!気絶してからそんなに時間は経っていないはず……
「レオン!」
リルは駆け出していた。
今までずっと守られていた。なら今度は自分が守る番だと。
「レオン!!」
「…リル?……」
間一髪レオンを突き飛ばせた。
「リル!」
「よかった…レオン無事で…」
こんどはちゃんと私が守れて…よかった…
そこでリルの意識は暗転した。
リルに守られた。
今まで誰かに守られたことなんてなかったレオンには彼女の想いがまるで泉に広がる波紋のように体の隅々まで広がった。
「ガルルル…」
仕留めようとした獲物を邪魔されフェンリルは機嫌が悪そうだ。
レオンは気絶した彼女の頬をそっと撫でた。
そしてレオンは立ち上がった。
レオンは手を握りしめる。
体が動かないからなんだ?今この瞬間に一歩踏み出すために全身全霊を尽くせ!
魔力がないからなんだ?まだこの身が残っている!
リルは体を張って守ってくれた。
リルが俺を助ける時自分も巻き添えになるかもしれない、という恐怖に比べればこれくらいなんともい。
「全身全霊で貴様を倒す!」
《条件真なる
《スキル遊戯司神の封じられていた権能を解放します》
《
《条件英雄の勇気が達成されました》
《スキル遊戯司神の封じられていた権能を解放します》
《
今はなんだっていい。
やつを倒せる力があれば。
《
《相手の能力をスキル化します》
《スキル
ボロボロの体を意思の力で無理矢理立たせる。
「この一撃に全てをかける」
「戦技: 神撃」
《疾風迅雷》
「…フー終わった……」
多分フェンリルは自分が倒されたことにすら気づいていないだろう。
それほどまでに一瞬で勝負はついた。
早く…リルを手当てしないと…
「くっ…」
今度こそレオンは力尽きた。
当たり前だ。とっくに限界は越えていた。
《スキル
脳内に響くアナウンスを聞きながらレオンの意識は暗転した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます