第22話 そして生まれる仮面夫婦

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 そうして俺は国王の前で行われる十二仮面騎士の一角を決める御前試合を行う為に屋敷を旅立ち王都に到着すると直ぐに御前試合が行われレオパルド卿からボコボコにされた。

「ちくっ……しょう……」

 レオパルド卿に前髪を掴まれ国王の前で無理やり顔を引き上げ見世物にさせられる。

 レオパルド・レヴァンテンは礼儀を重んじる剣術戦において最強であり剣術に加えて魔法も併用する魔法剣士でしかも炎魔法による一撃で顔に傷をつけられ剣と四肢を外された。

「国王陛下……私めを国王直属護衛十二騎士にお加え下さい」

「うむ……レオパルド・レヴァンテン貴様の魔法剣術まことにあっぱれであった……その弱い敗残者を飛竜の穴に叩き落とせ」

「承りました」

 レオパルド卿から前髪を掴み引っ張り闘技場の中央に開いた転移穴に向かって連れて来られるとそのまま穴の中に放り投げられる。

「悪いが死んでくれ……リオベル」

 糸の切れた人形の様に体をぐるぐると回転しながら穴の中に落ちて行くと現れたのは飛竜が飛び交う渓谷の中でありたまたま飛んでいた一匹の飛竜に食われた。

“ーーーーーーーッツ!!”

 そのまま飛竜は旋回し谷を抜け近くの森に着地すると変身が解けボロボロの俺をお姫様抱っこするレオパルド卿の侍女メイドが現れる。

「大丈夫ですかリオベルさま」

「あの野郎……一撃で四肢を外しやがった……」

 飛竜に変身していたレオパルド卿の侍女メイドは外れた関節の一つ一つを戻していく。

「これで大丈夫かと」

「悪いな……」

 関節を戻しフラフラになりながら立ち上がると近くに設営された簡素なテントが目に入る。

「コチラへ傷は残りますが治癒魔法で処置します」

「あぁ……」

 レオパルド卿の侍女メイドに連れられ設営された簡易テントに通されると中には治癒魔法で治癒するための魔法使いが待機していた。

「酷い顔……ここまでする必要があるのですか?」

「リゼッタ!?」

 思わず俺は言葉を漏らす。

 テントの中で待っていたのは涙目になったリゼッタでなぜに彼女がここにいるのか理解する事が出来なかった。

「どうして……」

「貴方が仮面貴族マスカレイドになると聞いて私も一緒に仮面貴族マスカレイドなる為にアリアに協力してもらったんです」

「仮面貴族になるって……もしかして……」

「はいクロエ共々屋敷に火を着け死んだ事にしました」

「屋敷に火を着けた!?」

 さらに俺はリゼッタの言った言葉を復唱する。

 確かに仮面貴族マスカレイドになるためには死ななくてはいけないがまさかウルフィン家の邸宅に火を付けるなんて事は想像する事が出来なかった。

「御前試合の前日なのでリオベルは知らないと思います」

 同時にリゼッタは俺の胸に飛び込む。

 しかしフラフラの体では受け止める事が出来ずに尻もちをつきながらも飛び込んできた彼女を受け止める。

「私は貴方が死んだなんて冗談でも聞きたくはありません……行くなら私も一緒に行きます!!」

「リゼ……」

「一人にしないで……」

「……すまなかった」

 リゼッタが悲しむ姿を想像する事は出来た。

 しかし彼女に危害が及ぶことを恐れ何も言わずに邸宅を出たのである。

「フフッ……お姉様のこんな姿が見れるなら今回の協力は儲けものですね?」

 リゼッタの思いを受け止めているとテントの中に入ってきたのは栗色の長い髪の穏やかな顔をした女性だった。

「貴方は?」

「申し遅れました私はアリア・レヴアンティン……リゼッタお姉さまの義妹になります」

 これがリゼッタの話の中でよく出てくる義妹のアリアかと思いつつ幼い顔立ちの中にも芯があるのは何処かリゼッタと似ている気がする。

「どうも……リゼッタの夫のリオベルです」

「存じ上げております」

 俺は頭を下げリゼッタの義妹であるアリアに挨拶をすると彼女は抱き着くリゼッタと俺の姿を見ながらうんうんと頷いていた。

「確かにお姉さまが好きそうな殿方ですね?」

 義妹のアリアと会うのはこれが初めての事である。

 そんな姉の旦那様を堪能するアリアに対してリゼッタは強い口調で言った。

「レオパルド卿はやりすぎです顔に傷をつけなくても良いでしょう!!」

「手心を加えれば国王陛下に見抜かれますよ?」

「しかし……」

 アリアの言い分は正しい。

 手心を加えれば国王ならず御前試合を見に来た仮面貴族にも見抜かれ何らかの罠にはまる可能性もある。

 だからレオパルド卿は本気で剣を振るい本気で魔法を使ったのだ。

「こんな顔の俺は嫌いかリゼッタ?」

 俺は胸に抱き着くリゼッタに向かって問いかける。

 すると泣きながらもフッと可愛らしい笑みを零しながら首を横に振った。

「いいえ……どうなろうと私の気持ちは変わりません」

 そうリゼッタは言うと彼女は抱き着きながら治癒魔法を掛け傷を治し顔の傷以外にほとんどの外傷が治るとテントの中に入ってきたのは刀と魔具を持った侍女メイドのクロエだった。

「これは……」

「家においていった魔具と刀です」

 侍女メイドのクロエから魔具と刀を手に取ると何処からともなく眷属の刀に宿る精霊『朧』と黒翼の女神『べテルス』が姿を現した。

『『あるじぃ!!!』』

 二人は泣きながら姿を現すと声を合わせ主と叫ぶ。

 そうして目の前まで迫りながら刀に宿る精霊『朧』は問いかける。

『どうして我らを置いていったのですか!?』

「仕方がないだろう御前試合では魔具や刀は持ち込み禁止なんだから……」

 刀に宿る精霊『朧』の問いかけに返答すると空かさず黒翼の女神『べテルス』は叫ぶ。

『こんなにボロボロに……今すぐ我らと共に殺しにいきましょう!!』

「これから後ろ盾になる人だ殺せるわけないだろう?」

 二人も心配していたんだなと思うと自然と笑みがこぼれる。

 なぜか安心してしまったのだ。

「とにかく……また会えてよかったよ……」

 そう俺は言うと『朧』と『べテルス』は泣きながら抱き着こうとした……その時である。

「渡しませんよ?」

『『えっつ?』』

「リオのココは渡しませんから!!」

 まるで威嚇する猫のように精霊と女神にリゼッタ対抗する。

 その姿に『朧』と『べテルス』は怒りそれ以外の周囲にいた全員は笑ってしまった。


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