第3話 氷結悪役令嬢との縁談話
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俺が転生した先は銀髪が特徴的な少年だった。
名前はリオベル・ウルフィンと言う。
彼に転生した時は丁度五歳の誕生日を迎えたばかりで前日の夜に粛清騎士と言う仮面騎士に両親を目の前で殺されていた。
その翌朝に俺はリオベル・ウルフィンとして転生したのである。
「あの無口で仏頂面をしていた少年とは思えませんな!!」
「うるさい打ち込みに集中しろ!!」
激しい剣撃を交わす中で専属執事のハイゼン・ウォルターは笑い小馬鹿にし俺は顔を赤くし注意した。
転生してから十年が経過し十五歳になった俺は毎日朝から晩まで時たま勉強を挟みながら元王宮剣術指南役で専属執事のハイゼン・ウォルターに剣術を教えて貰っている。
だからだろう体は筋骨隆々の鋼の様な肉体になっていた。
「なんだよ……もうヘタれたのかハイゼン?」
修練所で尻もちをつく専属執事のハイゼン・ウォルターに手を差し伸べる。
すると笑いながら執事のハイゼンは差し伸べた手を握った。
「面目次第もごさいません……まさか打ち負かされる時が来ようとは本当に目頭が熱くなります」
ハイゼンは懐から取り出したハンカチで涙を脱ぐった。
「あーあーはいはいジジィアピールは良いから次は裏剣の方な?」
「あの不作法な剣術に教える事はありませんよ?」
「受けるだけで良いんだよ」
笑いながら俺は目を瞑り顔の前に逆手持ちに居合の構えをした独特の構えをする。
「魔力はいかがなされますか?」
「もちろんありで」
「切り傷ができますよ?」
「良いじゃねぇか
すると専属執事のハイゼンが持つ木剣の刀身には淡く青いオーラが立ち上った。
呼応する様に俺の木剣にも銀色のオーラが立ち上る。
「いいね・・・手加減するなよ?」
「かしこまりました」
『魔力』は戦士が魔法使いとの戦闘で使う対抗手段だ。
『魔力』を発し流す事で身体能力を高め防具を強化し武器の威力を高める。
魔法使いはこれに詠唱を加える事で魔法を行使することができるが戦士は詠唱が終わる前に戦闘を挑めると言う利点がある。
俺が初めて転生した日に修練場に置いてあった人形や防具などが斜めに両断されたのも『魔力』が発動した影響だった。
“ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッツ!!”
初めの掛け声もなく阿吽の呼吸で俺とハイゼンは激しい剣による打ち合いを始める。
剣と剣が打ち合う度に甲高い金属音の様な『魔力』のぶつかりあう音が木霊した。
「やはり品がありませんな・・・重々御前試合などでは使わないようにして下さい」
「わーーかってるよ・・・」
俺は頷き溜息をつきながらもハイゼンに向かって行く。
しかし俺の前世の頃に習得した『居合術』は転生した異世界では使いにくい剣術だった。
貴族は礼節と作法を重んじる。
剣術の試合にも作法や決まり事があり俺が盲目座頭剣士だった時に修めた居合術は貴族の行う礼節と作法を重んじるものとは相反する剣術だった。
仕方がない元は無法者たちを殺すための剣術であり前世の俺に礼節や作法など存在しない。
「さて・・・この位にしておくか・・・」
「あぁ・・腰が痛い・・・」
ハイゼンは修練場の片隅で腰に手を添えながら蹲っている。
今や彼も老体であり激しい修練を行った後は疲れが腰に来るらしい。
「あとで揉んでやるから今は我慢しろ」
「あん摩術など何処で覚えたのですか?」
「本で読んだんだ俺は物覚えがいいから読んだだけで何でもできるんだよ」
まさか前世で覚えた『あん摩術』とは口が裂けても言えない。
しかし生まれ変わってから前世のお母さんが『あん摩術』は一生ものだと言っていたが本当だなと痛感した。
「ところでリオ様・・・縁談に興味はございますか?」
「縁談か・・・」
修練場の脇にある施術室でハイゼンの腰を
『縁談』とはつまりは『結婚』をしないかと持ち掛けられていると言う事だ。
前世の自分では考えられない事であり何処となく考え深い。
「ん?」
「どうかなされましたか?」
「ちょっとまて縁談相手って誰だ?」
女神様から転生する前に読まされた物語を俺は忘れた事はないだからわかる。
この冷徹悪役貴族は縁談は一回しか受けていない。
確か氷結の悪役令嬢で彼女に恋し見放されたが為に自暴自棄となり彼の悪行に拍車をかけた。
無論それは身から出た錆びであり言い訳の余地がないくらいに冷徹悪役貴族の俺が悪い。
「えっーーーとリゼット・ルリエスタ嬢でございます」
表情を曇らせながらハイゼンは答える。
同時に俺は深くため息をついた。
リゼット・ルリエスタ嬢は王都近くの領地を治める令嬢であり数多ある王家直血貴族一つであり噂によれば様々な悪名を持つ。
『氷結の魔女』『拷問令嬢』『色欲の悪魔』『快楽殺戮姫』その全ては彼女の行った悪行から来ているとされていた。
「なんで断らなかった?」
「地方の田舎貴族が王家直血貴族の令嬢からきた縁談を断ることができましょうか?」
「まぁ断れば最悪一族もろもろ断絶なんて普通だろうな?」
ハイゼンの痛めた腰の施術を終えると彼は立ちあがりこっちを見ながら問いかける。
「リオ様・・縁談・・・いかがなさいなますか?」
「受ける以外選択肢があったら教えてくれ?」
こうして元盲目座頭剣士の冷徹悪役貴族の俺ことリオベル・ウルフィンはリゼット・ルリエスタ嬢の縁談話を受けることになったのだ。
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