文例 三人称 砂漠で黒龍の襲撃を受け全滅する中隊の描写

 リゼット(=隊長の名前)の指揮する中隊(百名規模)が荒野で野営中に、黒龍(体長5メートル程)の群れ50匹に襲われて壊滅寸前になるシーンを描いてください。次回の話で救護がきますが、その回では絶望的な状況になるように描いてください


 例は1~5まであります

 

 ■例1


 荒野に降りる夜の冷気が、リゼットの中隊を包み込んでいた。夕方からの行軍の疲れを癒すように、騎士や兵士たちは無言で焚き火を囲んでいる。暗く広がる荒野に、遠くの狼の遠吠えがかすかに響き、ただ冷えた風が彼らの鎧に音もなく忍び寄っていた。重苦しい静寂に包まれたそのとき、不気味な黒い影が暗い空を横切り、中隊の頭上を覆った。


「——空を見ろ!」


 誰かの叫びが響き、兵士たちが顔を上げる。そこに広がるのは、漆黒の鱗が月明かりに鈍く輝き、夜空を飛び交う無数の黒龍の群れ——その数、およそ五十。体長五メートルはある黒龍たちが、鋭い爪と炎のように燃える赤い眼をぎらつかせ、中隊を上空から狙っている。


「皆、構えろ!奴らはただの獣ではない!」


 リゼットの鋭い指示に従い、兵士たちは一斉に武器を構えたが、その声が届く間もなく、第一の黒龍が低空飛行で襲いかかった。重たい風切り音と共に黒龍の爪が兵士たちを薙ぎ払い、次の瞬間には数人が宙を舞い、地に叩きつけられる。剣や盾で応戦するも、その巨体と鱗の硬さに刃が通らず、兵士たちは次々と蹴散らされていく。


 リゼットは即座に状況を把握し、被害が拡大するのを防ごうと指示を飛ばす。


「後退しながら戦線を固めろ!敵を一箇所に引きつけるんだ!」


 しかし、彼女の声は荒野に鳴り響く黒龍たちの咆哮にかき消され、兵士たちの悲鳴が交錯する。空から降り注ぐかのように、黒龍たちは次々と低空飛行で襲いかかり、容赦なく牙をむき出しにして兵士たちに突進する。その光景はまるで、戦場というよりも、巨獣の群れにただ貪り食われているようだった。


 リゼットは眼前で仲間が炎に包まれ、次々と倒れていくのを見ながら、喉が焼け付くような絶望感に苛まれていた。目の前の兵士が焼き尽くされ、背後で別の兵士が斬り倒される。次第に、兵士たちの数が見る見るうちに減っていき、戦列が崩れていく。


「……持ちこたえろ……頼む、持ちこたえてくれ……」


 彼女の祈るような声は荒野の冷たい風にかき消され、黒龍たちはなおも執拗に中隊を追い詰め続けた。彼女の手は汗で滑り、剣の柄を握りしめる力が徐々に失われていく。


 ついに、彼女の周囲には生き残りが十数名程度しか残っていなかった。数少ない者たちはもはや顔に疲労と恐怖が刻まれ、何も言葉を発することなく、ただ息を荒げながら、視界が霞んでいく中で立っているのみだった。冷たく荒れた荒野の空気が、彼らの悲愴な叫びを飲み込み、無情に広がっていく。


 翌朝、救護が訪れるまで、中隊はほぼ壊滅状態だった。荒野に散らばった兵士たちの遺骸と、静寂に包まれたその場には、夜を生き延びた数人の者たちのかすかな息が残るのみであった——


■例2 

 

 荒野の夜風が鋭く頬を切りつけるように冷たかった。リゼットの中隊が焚き火の周りに集まり、厳しい一日の行軍の疲れを少しでも癒そうとしている時、遠くに低く唸るような音が響いてきた。重く鈍い音が荒野の空気を震わせ、その正体が近づいてくると、全員の視線が凍りつく。


「リゼット様、見てください!」


 兵士の一人が指差した先、夜空の暗闇にぽつりぽつりと揺れる光が浮かび上がる。次第に、その正体が黒龍の一団であると分かると、中隊は一瞬にして緊張に包まれた。遠目にも、その体長が五メートルはあるであろう黒龍が群れを成し、眼光は燃えるような赤。口から吐き出される熱気が夜風に乗って中隊の方へと漂ってくるのを感じた。


「来るぞ!各自持ち場を固めろ!」

 リゼットが冷静さを保ちながら指示を飛ばしたが、その声が震えているのを自分でも感じていた。


 黒龍の群れは一斉に急降下し、中隊の中央に突っ込んでくる。先頭の一体が爪を振り下ろし、地面を砕く音と共に数名の兵士が一瞬で弾き飛ばされた。その巨体が迫るたび、兵士たちは反射的に盾を掲げ、剣を振り上げるも、その鱗にはほとんど通じない。剣が弾かれ、盾が粉々に砕ける音が次々と響く中、リゼットは兵士たちの悲鳴を耳にしながら、仲間たちが次々と倒れていくのを見た。


「ここで下がるわけにはいかない……!」


 彼女は自分に言い聞かせるように前進し、黒龍に向けて突撃するも、その巨体は彼女の攻撃を軽々と避ける。さらに、別の黒龍が頭上から炎のブレスを吐きかけてきた。リゼットはすぐに盾を構え、火の粉に覆われたが、背後の兵士たちの悲鳴が絶え間なく響く。焔の中で倒れた仲間たちの姿が、燃え尽きるように視界に入るたび、心に重苦しい絶望が広がっていく。


 夜は深まり、黒龍の攻撃は執拗に続く。何度も剣を振るい、盾を掲げ、声を張り上げて指示を出し続けたが、兵士たちの動きは徐々に鈍くなっていた。黒龍の攻撃が止むことはなく、何度も襲撃の波が押し寄せてくる中、もはや戦列を保つこともままならない。


 リゼットの視界には、生き残りがわずか数名になった兵士たちが疲弊した姿で見えた。彼らの目には死の覚悟が滲んでおり、逃げる場所も助けもないことを悟っているかのようだった。


「……もう少し、耐えて……! 朝日が……朝日が差し込めば……!」


 かすかな希望を口にしたものの、彼女の声は荒野の静寂にかき消されていった。絶望的な夜の中、ただ荒れ果てた荒野に黒龍の群れが羽音を轟かせるのみ。焚き火の残り火が弱く光を放ち、リゼットはその儚い光に希望を見出そうと必死に目を細めたが、それも瞬く間に消え失せ、暗闇に飲み込まれていった。


 そうして、夜が完全に明ける頃、荒野には生存者がほとんど残っていなかった——その場に、崩れ落ちる兵士たちと共に、戦い抜いた者たちの無念の姿が静かに横たわっていた。


■例3


 荒野に冷たい夜風が吹きつけ、リゼットの中隊は薄い霧の中で野営の支度を整えていた。どこまでも続く灰色の荒野には、隠れる影もなく、焚き火の炎が小さく揺れる中、兵士たちは警戒を怠らなかった。それでもどこか緊張は緩んでいて、仲間同士の軽口や笑い声が闇の中で静かに広がっていた。


 だが、突如、兵士の一人が何かに気付き、怯えた声で叫んだ。

「見ろ、東の空を……!」


 誰もが息を飲んで振り返ると、夜の暗闇に混じって、わずかに光る黒い影が動いていた。それは翼のシルエットを成し、そしてまるで鼓動を打つかのような重低音が遠くから響いてきた。見上げると、その影は何十にも重なり合い、徐々に数を増しているのが分かる。黒龍の群れ、数えるまでもなく、少なくとも五十の巨影が荒野の空を覆い尽くし、ゆっくりと中隊へと迫っていた。


「全員、武器を取れ! 陣を固めるんだ!」


 リゼットの命令が響くと、兵士たちは慌てて盾を構え、剣を握りしめた。すでに幾人かは震え、恐怖に声を失っている。しかし、容赦なく夜空から舞い降りてくる黒龍の群れは、怯える彼らに何の猶予も与えなかった。黒龍の一体が先頭に降下し、地面に着地すると、その巨大な爪が乾いた地面をえぐり、鋭い風が兵士たちの頬を斬り裂いたかのようだった。


「全員、耐えろ! こいつらに負けるな!」


 リゼットは剣を振り上げ、突撃の号令をかける。しかし、まるで無限の力を誇示するかのように、黒龍はその巨大な翼を広げ、強烈な炎の息を吐き出した。熱波が押し寄せ、前列の兵士たちは悲鳴とともに火に包まれた。後列の兵士たちは、呆然とその光景を見つめ、足がすくんで動けなくなってしまう。


「持ちこたえろ! 絶対にここで崩れるな!」


 リゼットは必死に叫び、奮い立たせようとしたが、黒龍の群れは次々と襲いかかり、兵士たちが放つ剣や槍をものともせず、鋼の鱗で弾き返してしまう。黒龍の尾が鞭のように振り下ろされ、数人の兵士が簡単に吹き飛ばされ、倒れたまま起き上がらなかった。


 リゼット自身も、黒龍の猛攻を受けながらも剣を振り続けたが、絶え間ない攻撃に次第に体力が奪われ、盾を掲げる腕が鉛のように重くなっていく。兵士たちの叫び、地面に叩きつけられる衝撃音、そして黒龍の咆哮が荒野に響き渡り、周囲にはただ絶望が広がっていた。


 夜が深まるにつれ、人数は減り続け、戦意も次第に失われていった。もはや立ち上がれる者もわずか数人、彼らの瞳には死の影が色濃く宿り、再び敵に立ち向かう気力も見えない。リゼットは崩れ落ちる仲間を振り返り、そして何かを決意したように最後の力を振り絞って叫んだ。


「……朝日が昇るまで、ここで耐え抜こう。最後の一人でも……私が戦い続ける!」


 彼女の言葉は、荒野の冷たい空気に吸い込まれ、消えていった。どこか遠くで、かすかに朝の光が兆しているように思えたが、その淡い希望も黒龍の暗影に飲み込まれ、二度と現れることはないかのようだった。


 そうして、夜が明ける頃には、荒野の地に生き残った者はほとんどいなかった。焼け焦げた地面と、倒れた仲間たちの姿が静かに横たわり、ただ無情に風が吹き渡るのみだった。


■例4


 荒涼とした荒野に夜が訪れ、リゼットの指揮する中隊は小高い丘の影に陣を張っていた。静けさが広がり、兵士たちは火を囲みながら食事をとり、疲れた体を休めていた。乾燥した空気に微かな焦げた土の匂いが漂い、冷たい風が彼らの装備をかすかに揺らしていた。


 突然、遠くの空で影が揺れた。リゼットは何か異変を感じ、遠くを凝視した。月明かりに浮かび上がる黒い影は、荒野の冷たい空気を裂くように徐々にその姿を明らかにした。それは、黒龍の群れ——夜闇の中でその鱗が鈍く光り、まるで地平線から迫り来る嵐のようだった。


「全員、武器を取れ! 陣形を整えるんだ!」


 リゼットの声が鋭く響き、兵士たちは慌てて盾を掲げ、槍を構えた。しかし、相手は空を駆ける恐怖の存在だった。黒龍は次々と舞い降り、まるで嵐が吹き荒れるかのように強烈な風が巻き起こった。先頭の兵士たちがその風圧に押されて一歩下がった瞬間、第一の黒龍が牙を剥いて突進してきた。リゼットの隣の兵士が悲鳴を上げる間もなく、黒龍の牙が鋼の甲冑を貫き、彼は地面に叩きつけられた。


「耐えろ!立ち止まるな、死ぬまで戦い続けるんだ!」


 彼女の必死の声も空しく、黒龍たちは容赦なく次々と兵士たちに襲いかかる。槍を向ける間もなく、重い鱗に弾かれ、次々と倒れていく仲間たちの姿がリゼットの視界に映った。彼女自身も必死に剣を振るったが、その爪一つで刃が砕け、彼女は地面に転がされた。


 やがて、前列の兵士たちは押し流され、残った者たちが崩れかけの盾を掲げて防御を試みていた。だが、黒龍の群れはさらなる攻撃を加え、彼らのわずかな防御をも打ち砕こうとしていた。


 ある黒龍が空高く飛び上がると、突然、強烈な火炎を吐き出した。炎の柱が荒野を焼き尽くし、周囲の温度が一気に上がる。リゼットはその熱に背を向けて立ち上がり、再び剣を構えたが、次々と倒れる仲間たちの声が彼女の耳を突き刺した。彼女は無念の表情で叫んだ。


「まだ終わらせるな! 最後まで……私がここにいる限り、誰も諦めるんじゃない!」


 その声もやがて混乱と絶望の中にかき消されていった。黒龍の影は次々と降り立ち、兵士たちの陣を呑み込むように埋め尽くしていた。リゼットの体も限界に近づき、重い盾を支える腕は鉛のように感じられた。それでも、彼女はその場から動かず、最後の抵抗を見せていた。


 夜はますます深まり、兵士たちの悲鳴と、黒龍の怒号が響き渡るばかりだった。その絶望的な光景の中で、リゼットの胸中にはただ一つの願いが浮かんだ。次に光が差すとき、生き延びた者が一人でもいるようにと——それだけを祈りながら、彼女は再び剣を振り上げ、群がる黒龍に向かって駆け出した。


例5


 荒野は静寂に包まれ、リゼットの中隊は束の間の休息を享受していた。

 砂塵舞う地に小さな焚き火の明かりがちらちらと揺れ、兵士たちは警戒しながらも疲れた体を休めていた。夜の冷気が骨に染みわたり、彼らの防具が微かに鈍い光を返す。だが、その静けさは、すぐに冷たく不吉なものへと変わり始めた。


 遠くの暗闇から、低く不気味な咆哮が響く。リゼットは鋭い耳を研ぎ澄ませ、夜の闇を見据えた。その瞬間、兵士たちも異変に気づき、緊張が走った。


「準備をしろ!」

 リゼットの鋭い声が響き渡る。


 兵士たちは慌てて槍と盾を構え、闇の奥から迫り来る影に備えた。月光に照らされたその姿は、恐ろしいほどに巨大で黒々とした鱗に覆われた、体長5メートルの黒龍たち。視界の限り、数十匹もの影が闇を裂くように浮かび上がる。まるで荒野が生き物の群れに飲み込まれるかのような光景だった。


「黒龍だ!総員、陣形を組め!」


 リゼットは叫び、剣を握りしめる。彼女の指揮下にある百人の兵士たちは、盾を高く掲げて防御態勢に入った。しかし、50匹もの黒龍に対しては、あまりに少数だ。圧倒的な数と力に、彼らの意志が試される。


 黒龍たちは低空を舞いながら、次々と火を吹きかけてきた。炎が夜空を裂き、荒野はまるで地獄のような赤と黒の世界に染まった。先頭に立っていた兵士たちの盾は、黒龍の火炎を浴びて融解し、彼らは絶叫を上げながら崩れ落ちていった。リゼットの命令が飛ぶ間もなく、黒龍の爪と牙が鋼の防具を貫き、兵士たちは次々と倒れていく。


「隊長、持ちこたえられません!」

 側近の兵士が必死に叫ぶ。


 リゼットは冷たい汗を流しながら、全員に後退を指示する。しかし、彼らの背後にも黒龍が回り込み、包囲が徐々に狭まっていった。隊列が崩れ、兵士たちが散り散りになる中、リゼットは最後までその場を離れず、戦士たちを守るために剣を振り続けた。


「恐れるな!最後まで戦え!」


 彼女の声は気丈だったが、眼前の現実はあまりに絶望的だ。黒龍たちは次々と牙を剥き、獲物を貪るように襲いかかってくる。空には翼の影が舞い降り、地には無数の火炎が吹き荒れ、兵士たちは次々と倒れ、残された者も逃げ場を失っていた。


 リゼットもまた、数匹の黒龍に囲まれ、激しく戦っていたが、すでに疲労が限界に達していた。彼女の鎧には無数の傷が刻まれ、剣の刃も欠けている。それでも、倒れた仲間の傍で彼女は奮い立ち、最後の力を振り絞って黒龍の一匹に立ち向かった。


 その瞬間、ある黒龍がリゼットの頭上に飛び降りる。彼女は何とか剣で受け止めるが、その勢いに耐えきれず、膝をついてしまう。すでに満身創痍の彼女の背後には、さらに別の黒龍が迫っていた。彼女の視界がぼやけ、耳鳴りが遠くで響く中、兵士たちの絶望的な悲鳴だけがかすかに聞こえた。


 荒野はもはや、かつての仲間たちの安息の地ではなく、黒龍たちの暴虐が支配する地獄の様相を呈していた。

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