風の涯。


 教科書を捨てて

 海岸へ向かった

 砂浜を走れば

 足首まで取られて


 風の涯


 貝がらを踏みつぶすたび

 命の痕跡を粗雑にした私を寄せる波が責める


 教科書が教えてくれぬ

 この慟哭の溶ける場所は

 きっとこの海ではない

 足首をつかむ言葉


 叫ぶように歌おう

 何にもならずとも

 きっと選んだのは私

 他でもない私


 風の涯よ怒れ

 世の矛盾と慈愛を併呑させる

 この身勝手極まりない生物を


 教科書を捨てて

 海岸へ向かった

 拾い上げた貝がらは

 私を責めてもくれないから

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