足音の記憶。


 ランドセル重い下校の途中で、

 アベリアの花をむしった。

 どこまでも、どこまでも、

 手の中いっぱいに集めて良い気がしていた


 学校の気配は、いつも私をはじきだす。

 どこに移っても、お前はここの子ではないよと、

 そんな声が私の背中を、とん、と押す。


 子ども達の声、駆けて通りすぎてゆく。


 ランドセル重い下校の途中は、

 本来の通学路を避けてみる。

 どこまでも、いつまでも、

 どうせ家には誰もいない。


 小さなさびしさは、夕焼けの手前で一番重くなる。

 誰もいない、誰もいない、

 死んでしまった人は出迎えてくれない。


 子ども達の声、駆けて通りすぎてゆく。


 わたしひとり、取り残されて鍵をかけた。

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