冒険297.懺悔(中編)

 ====== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 大文字伝子(だいもんじでんこ)・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。

 大文字[高遠]学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。

 一ノ瀬[橘]なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。

 久保田[渡辺]あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。

 愛宕[白藤]みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。降格中だったが、再び副隊長になった。

 愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。


 斉藤長一郎理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。

 夏目房之助警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。


 増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。

 馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。

 結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。

 工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向の巡査部長。。

 伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。

 大空真由美二等空尉・・・空自からのEITO出向。

 西部[早乙女]藍・・・元警視庁からの出向。今は、非常勤(EITO準隊員)

 西部警部補・・・高速エリア署刑事。「片づけ隊」班長。


 草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。

 久保田誠・・・あつこの夫。警視庁警部補。

 久保田嘉三・・・警視庁管理官。久保田警部補の伯父。

 高峰圭二・・・みちるの姉くるみの夫。元警視庁警部補。今は警備員をしている。


 市橋早苗・・・移民党総裁。内閣総理大臣。

 高見敬一・・・移民党。厚労省大臣。(72歳)

 佐藤哲治・・・小梅党。国交省大臣。(72歳)

 村越警視正・・・警視庁テロ対策室室長。

 渡辺道夫・・・警視庁副総監。あつこの伯父。

 依田俊介・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。あだ名は「ヨーダ」。名付けたのは伝子。

 福本英二・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。大学は中退して演劇の道に進む。今はアマチュア劇団の公演は年2回とし、普段は建築事務所で非正規雇用として働いている。

 福本[鈴木]祥子・・・福本が「かつていた」劇団の仲間。後に福本と結婚する。福本との間に娘が生まれた。

 物部一朗太・・・伝子の大学の翻訳部の副部長。モールで喫茶店を経営している。

 南原龍之介・・・伝子の高校のコーラス部の後輩。今は見合い結婚した文子と学習塾を経営している。

 山城順・・・伝子の中学の後輩。愛宕と同窓生。海自で事務職員として働いている。

 山城[南原]蘭・・・南原の妹。美容室で働く美容師。

 服部源一郎・・・南原と同様、伝子の高校のコーラス部後輩。見合い結婚したコウと音楽教室を経営している。

 みゆき出版社編集長山村・・・伝子と高遠が原稿を収めている、出版社の編集長。

 中津敬一・・・警視庁テロ対策室勤務の警部。


 =================================================

 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 ==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==


 午後4時。シネコン映画館。

 伝子の懸念とは裏腹に、久保田管理官に情報屋から、週刊誌ネタで新聞各紙が「副総監失墜を狙っているという情報が入った。そして、それをネタに各野党が準備を始めた、と。

 スクリーンには、副総監と村越警視正が並んで座っている。

 マイクを持った、副総監は先んじて言った。

「皆様に朗報です。と言っても、経過報告ですが。」

 隣の村越警視正が説明を始めた。

 既に逮捕されている、コブラグループの被疑者から、供述が取れました。コブラは女性、マングースは男性だそうです。2人とも、『扮装』をしているので、年齢は定かではありません。どうやら、今朝の事件で嫌気がさしたようです。漸く判明したのが性別だけかとお嘆きの方もおられましょうが、我々には、一歩前進です。今朝の磔事件はコブラの仕業に違いないが、恐らくは、ヒットマン、殺し屋を雇ったのだろう、とのことです。詰まり、彼らには出来ない芸当ということを自白しました。今後の経緯は逐次お知らせします。」

 そして、質問タイムに入った。「週刊誌の件ですが。あ。川波月報の川奈です。週刊誌の記事は、把握されておられますでしょうか?」

「お答えします。川波月報の川奈さんですね。あなたは、非常に紳士的だ。どうも記者会見で大きな声で感想を言う記者が最近多いので、皆そんな記者だと思い込んでいました。では、紳士的は川奈さんに丁寧にお答えしましょう。記事には、ある方からある方への手紙、とありました。何処で入手したのかは分かりませんが、私のお答え出来る範囲でお答えします。川奈さんが、お聞きになりたいのは、副本部長が誘拐され、身代金の授受があったかのような記述ですね。事実は小説よりも奇なり。グリコ森永事件は、正にそれでしたが、副本部長が誘拐された、という事実はありません。当時の、つまり事件当時の副本部長は、この私です。捜査本部におりました。残念ながら、本部長は故人となっておられるので、本部長からの、ここでの証言は不可能です。本部は解散し、ご存じの通り、時効が過ぎております。事件から40年の月日が流れました。当時の捜査員も他界した者が少なくありません。その捜査員から、何らかの証言があったようなことは、記事には書かれておりません。川奈さんは紳士的でいらっしゃるから、『疑惑があるから有罪だ』みたいなことは、おっしゃらないと思います。ひょっとしたら、もう40年経ったというニュースを見て、誰かが『創作』されたのではないでしょうか?百歩譲って、その創作に近い事実があったとして、何をどうしたいのか、不明です。怒る気にもならない。過去の事件の話はこれくらいにして、コブラ&マングースの事件に関する情報は、窓口を設けましたので、どんどんお寄せ下さい。今回の事件で言えば、磔台を積んだトラックを目撃したとか、また、過去の事件で、ああ思い出した、ということがありましたら、その窓口にお電話ください。間違っていても構いません。電話が面倒な方は、広報のメールアドレスにお送りください。記者の皆様には、是非この国民的危機の『先達』として、国民の皆様にご協力を促して頂きたい。この通りだ。」

 副総監は、座ったままだったが深くお辞儀をした。

 川奈記者は何も言えなくなった。他の記者は数人のみ、当たり障りのない質問をして、終った。

 午後5時。伝子のマンション。

 高遠は、メンバーとLinen会議をしていた。

「惚れ惚れしたねえ。今までで一番の会見だった、完璧だよ。」と、依田が言うと、「おい、依田。。大袈裟だと言いたい所だが、お前の言う通りだ。俺も感服したよ。」と、物部は言った。

「思えば,副総監とは不思議な縁だな。いや、副総監兄弟、と言うべきか。」と伝子が言った。

「先輩が、あの川にダイブして、特殊詐欺犯人を取り押さえ無かったら、藪の中の、副総監の弟さんを発見出来なかったんですよね。」と、福本が言った。

「そして、先輩はEITOに参加することになったんですよね。」と、南原が言った。

「コブラが女性で、マングースが男性。夫婦か、姉弟あるいは兄妹かも知れませんね。」と山城が言った。

「コブラの暴走を止める役割がマングース?」と、服部が疑問を口にした。

「じゃあ、ウチと一緒だ、って誰も言わないね。」と高遠が言うと、「失礼だぞ、婿養子。」と、伝子が口を挟んだ。

「この頃、こんなだよ、誰が入れ知恵したんだろう?」と高遠が言うと、「私よ。私ということに、なさい!」と、山村編集長が言った。

 フィットネス関係でまた事件が起きたので、編集長は会社か自宅にしかいない。それで、Linen会議に加わっている。

「とにかく、マングースの、これからの動きが気になるわね。」と祥子が言うと、「案外、今夜、声明があるかも。」と蘭が戯けて言うので、「止めなさい!」と、南原と山城が異口同音に言って、蘭を止めた。

 午前0時過ぎ。

 蘭の冗談は、冗談で無くなった。

 子供達は、春休み。もう後半になるかな。でもね、今年の春休みは3月で終るよ。子供達が楽しみにしているイベント。大人達が奪っていいのかな?恨まれるよ、きっと。『共通項』は約分しなくちゃね。

 》

 音声が数秒おいて、

《意地の悪い男だね。さっさと全滅させればいいのに。おやつ、あげないわよ。》

 という違う音声が流れた。

 午前9時。EITO東京本部。会議室。

「男の声と女の声か。実は、村越警視正は、マスコミの目をそらす為に、フェイクを流した。先に結論を言っておく。コブラ&マングースは男女2人じゃない。同一人物だ。それが、『枝』の証言だ。子分達、詰まり、枝や葉っぱの前では、どちらかのキャラクターで振る舞っている。見事に演じ分けているから、最初は分からなかった。だが、兵隊が少なくなって来てから、分かったことだ。多重人格かも知れない、とも言っていた。昨夜のメッセージは、コブラが女性、マングースが男性と言った、村越警視正の言葉を受けてのことだろう、と思う。」

 理事官に継いで夏目警視正は、「おやつ、という言葉と3月で終るという言葉から、直近のイベントで3月31日、即ち今日終了するイベントをピックアップした。草薙。」と、草薙を振り返った。

 タブレットを持った草薙が話しだした。

「先ず、フォーミュラE東京大会。レースは昨日終りましたが展示会は今日までです。場所は東京ビッグサイト。2つ目は、アウトドアデイジャパン 東京 2024。場所は代々木公園。最新のキャンプ用品やアウトドアギア、テクニカルウエアをはじめ、キャンプやアウトドアライフに彩りを添える関連アイテムやアパレルファッション、モビリティとしてのクルマ・バイク・自転車、また、会場で楽しめるアクティビティ体験やワークショップ。詰まり、特設会場で体験をしたり、店で買物をしたりするイベントですね。後は、百貨店の『北海道展』などがありますが、4月以降も予定されています。」

「約分、というと数学の約分のことを思い出すが、どう思うね、大文字君。」と、理事官は伝子に尋ねた。

 理事官の言葉に、伝子は、「『共通項は』って、言ってますよね。『同類項は』なら『簡約』ですが・・・。草薙さん。東京ビッグサイトと代々木公園を結んで真ん中くらいにある場所はどこですか?」と尋ねた。

「芝公園あたりですかねえ。」と、草薙が応えると、「そこで、決戦を望む気だな。今日の午後3時に。いきなり来たか。」と、伝子は呟いた。

「じゃあ、ギリギリ間にあったかな?」と、マルチディスプレイに中津警部が現れた。

「警察と中津興信所、夏目リサーチでタッグを組んで、やっと、コブラ&マングースの『尻尾』を掴みましたよ、理事官、警視正、大文字さん。件の詐欺女から辿ってね。大文字さん。もし、決戦に『幹』が出てきたら、切り札になります。」

「了解しました。理事官、東京ビッグサイト、代々木公園。そして、芝公園の『人払い』をお願いします。芝公園以外は、少人数で待機。本隊は芝公園だ。なぎさ、あつこ、さやか。心してかかれ!」

「はい!!」3人は、揃って返事をした。

 午後2時半。総理官邸。

 総理の執務室に、・厚労省大臣の高見敬一、国交省大臣の佐藤哲治が集まっていた。

 そこに、『くノ一』の衣装を着た5人の女が現れた。陰から現れた早乙女、工藤があっと言う間に倒した。

 早乙女は平然と言った。「『抜け忍』にでもなる?」

 午後3時。東京ビッグサイト入り口。

 結城が、馬越と共に、警官隊、警備員、そして、SP隊のメンバーと打ち合わせをして、巡回に回った。

「西部さん、ここに敵が現れなかった場合は、我々は本隊と合流します。少人数の場合は、片付き次第応援に移動します。」と、結城は言った。

「了解しました。その際には、入場禁止を解禁。入場者に周知した上で解散します。」

 午後3時。代々木公園。

 伊知地が、増田と共に、警官隊、警備員、そして、SP隊のメンバーと打ち合わせをして、巡回に回った。

「多分、ここは陽動でしょうなあ。しかし、相変わらず大文字さんは頭の回転が速い。」

「私もそう思いますよ。」久保田警部補の言葉に高峰圭二は、頷いた。

 ―完―

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