冒険278.デプスの本性

 ====== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 大文字伝子(だいもんじでんこ)・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。

 大文字[高遠]学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。

 久保田嘉三管理官・・・警視庁管理官。伝子をEITOにスカウトした。EITO前司令官。

 藤井康子・・・伝子のマンションの区切り隣の住人。モールで料理教室を開いている。

 村越警視正・・・警視庁テロ対策室室長。

 新里警視・・・あつこの後輩。警視庁テロ対策室勤務。

 大文字綾子・・・伝子の母。介護士をしている。

 筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁からEITO出向の警部。伝子の同級生。元カレ。



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 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 ==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==


 正午。伝子のマンション。

 東京体育館の闘いを、『にゅうめん』を食べながら、高遠、伝子、綾子、藤井が、原田が作った『闘いの』記録動画を観ている。

「もう、アメリカTVドラマ顔負けね。伝子さんが1号なの?」と、藤井が言った。

「うん。」「2号と3号は、なぎさちゃんとあつこちゃん。後は誰?」と、綾子が言った。

「5号があかり、6号がさやか。あ。最初に口上を言ったのが総子。総子のアイディアだったんだ。」

 伝子の説明に、「4号がいないわね。」と綾子が言った。

「お義母さん、みちるちゃんですよ。産休に入ったでしょ。」「ああ、それで。総子ちゃん、変なアイディア出したのねえ。敵がよく待ってくれたわね。」

「敵に知られずに、戦闘配置する為の時間稼ぎですよ、ポカンと口開けている者がいるでしょ。」「ああ、そういうことなの。皆不平言わなかったの?」

 2人の会話に、藤井が割って入った。「『おねえさま』の命令は絶対。寵愛受ける為なら絶対服従、よね。」「それじゃ、大奥みたいじゃない?」

 皆黙っているので、綾子は「大奥だったんだ。」と、一人納得した。

「じゃ、『上様』は?婿殿?」「まあね。でも、夜伽はないですよ。要は、結束力が堅いから、何とか敵を倒しているんです。次回は、もっと厳しい戦いかもねえ。」

「向こうの兵隊は、『傭兵』だものね。武力より知恵、ってことね。」食べ終えた藤井は、「じゃ。また後で。」自分のエリアに帰った。

 今日は、藤井の『公開料理教室』だ。送り迎えは、筒井が来てくれることになった。

「平和が一番ね。」食べ終わった綾子は、高遠を制し、洗い物を始めた。

「これ、伝子の分。」と、高遠は、真新しい、可愛いエプロンを出した。

「派手だなあ。これが、みちるが手下に用意させたエプロンかあ。」と、伝子は少し戸惑った。かなり、派手である。

『手下』とは、みちるが御用達にしているコスプレ店店長玉井のことで、玉井は、『惚れた弱み』で、みちるに執事のように仕えている。

 みちるは、産休で、EITOも丸髷署の勤務も休んでいる。その代わり、バックアップサポートとして、エマージェンシーガールズのユニフォームの手入れや注文等を行うことになった。詰まり、内勤的な自宅待機である。

 元々、事件で知り合った、コスプレ店での外商として、エマージェンシーガールズのユニフォームを発注している。

 その時、久保田管理官用のPCが起動した。

 伝子のマンションには、EITO専用のPCと、久保田管理官専用のPCがあり、それぞれリモートで、相手方から起動し、シャットダウン出来る。

 それらと連動するタブレットも数台ある。DDメンバーが直接的に参加する場合、タブレットを使って会議をすることになっているが、このタブレットは、暫く使われていない。

 伝子達は、揃って、ディスプレイの前に座った。藤井と綾子は、EITO隊員ではないが、EITO準隊員扱いとなっている。

 画面には、村越警視正が映っている。

「高遠君の隣は、藤井康子さんと大文字綾子さんかな?初めまして、村越です。副総監付きで仕事を、テロ対策室長をしています。まず、お知らせしておこう。『大枝』の岡迫が亡くなった。今朝午前6時だ。大文字君が『薬を盛られていたか』という問いをして、肯定したということだが、彼は、腎臓に病気があって、その腎臓を悪くする薬を飲んでいた形跡があった。『くノ一』の格好をしていた『小枝』の女は水上悠。岡迫の内縁の妻だった。今風に言えば、事実婚だな。水上は、岡迫の死去で、口が軽くなった。今、久保田管理官は新里警視と共に取り調べを行っているが、先の『目刺し殺人』の犠牲者は、いずれも岡迫の部下、詰まり、『小枝』の役割の者達で、あの『ひょう』が降った時に参加していたらしい。やはり、ナチュラル・デプスという人物は残忍だね。件の特殊なナイフで刺された跡があり、内蔵を抜き取られていたらしい。オペをすることでの殺人だ。余程、岡迫を許せなかったと見える。水上は、初めは組織の人間では無かったらしい。デプスのお気に入りになった岡迫がのめり込んでいるのを見て止めようとしたが、結局、取り込まれてしまった、という。5人と岡迫は、丁重に葬るよ。岡迫の遺言でもあるし、水上の希望でもあるからね。5人の名前は、北原勇次、江美晋太郎、奥野姫子、霜月多鶴夫、笠井丹治、だ。まとまった段階でEITOに送るから後で目を通して欲しい。ジョニーに面通しをしたら、奥野だけは知っていた。それと、残り2人の『枝』だが、1人だけ水上によって名前が明らかになった。名前だけだが。霜月多鶴子と言う。」

「警視正。5人の1人と名前が似ていますね。」と、伝子が言うと、「その通り。多鶴子は多鶴夫の姉だ。それで、知っていたようだな。ジョニーや旭川は知らなかったが、水上は霜月と親しかったのだろうね。」と、村越警視正は応えた。

「まだ、相手の動きはないが、予断は禁物だ。今の話は、理事官にも報告しておく。」

「あ。警視正。僕にも1つだけ分かったことがあります。」「何だね?高遠君。」

「昨日は、2月20日、今日は2月21日。そして、明日は2月22日です。」

「そうだが・・・何か謎でも?」「明日ですが、『竹島の日』、『猫の日』、そして、『忍者の日』です。後の二つは、語呂合わせですが。今回の作戦は、伝子が聞いた話では、岡迫が言うところによると、他の『枝』が作戦のシナリオを描いたそうです。私は忍者の日を、何らかの勘違いで覚えて、岡迫と水上に忍者の衣装を着せたのだと思います。白藤巡査部長が懇意にしているコスプレ衣装店の店長によると、忍者の衣装というのは一番ポピュラーなだけあって、品切れしやすいそうです。2人だけに着せた、と考えるより、2人分しか調達出来なかったと考える方が自然です。元から持っていれば、たやすいことでも、たった2日で揃えるのは恐らく不可能だと思います。」

「忍者の日に猫の日かあ。知らなかったなあ。竹島の日は知っていたが。ああ。そうだ。ドーベルマンだが、この犬も毒を盛られていたようだ。後の子犬は、訳が分からないが、動物愛護団体に引き取って貰ったよ。どうもありがとう。進捗があれば連絡が行くだろう。それでは。」

 画面は消えた。4人は暫くぼーっとしていたが、藤井は言った。「ミカンでも食べる?」

「明後日は、天皇誕生日。こっちの方が狙われやすいが・・・待てよ。学。明日の忍者の日と天皇誕生日は一日違いだな。勘違いじゃなくて、連続すると、不味い事情があったのかも知れないぞ。」

「流石だね、ホームズ。君はいつも一歩先を行くね。」「ああ、遅れてついてこい。」

「私は、ついて行かないわよ。」と、2人の会話に綾子は割り込んで言った。

 ドアが開いて、藤井が入って来た。

「ミカンを取りに行き。持って来たと思った高遠はゾッとした。藤井の背中に拳銃を突きつけた男が、侵入したからだ。

「どちら様?」と高遠が尋ねると、男は言った。「見れば分かるだろ?強盗さ。」

 男は、2つ目の台詞を言えなかった。伝子が、飯星から教わったプロレス技『延髄切り』を披露したからである。

 ドアを開けて、筒井が入って来た。

「筒井、電話。110番。」と、伝子は言った。

 筒井は、一目見て状況を把握し、「入る家、間違えたな。」と、言いながら、スマホを取り出した。

 ―完―



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