冒険261.未知の敵『ナチュラル・デプス』

 ===== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 大文字伝子(だいもんじでんこ)・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。

 大文字[高遠]学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。

 一ノ瀬[橘]なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。

 久保田[渡辺]あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。

 馬場[金森]和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。

 高木[日向]さやか)一佐・・・空自からのEITO出向。

 高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。EITOボーイズに参加。

 飯星満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。

 江南(えなみ)美由紀・・・元警視庁巡査部長。EITOに就職。

 七尾伶子・・・警視庁から出向の巡査部長。

 大空真由美二等空尉・・・空自からのEITO出向。

 高坂一郎看護官・・・陸自からのEITO出向。基本的に診療室勤務。

 久保田嘉三管理官・・・警視庁管理官。伝子をEITOにスカウトした。EITO前司令官。

 愛宕[白藤]みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。

 愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。

 斉藤理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。

 夏目警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。

 筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁からEITO出向の警部。伝子の同級生。

 大文字綾子・・・伝子の母。介護士をしている。

 藤井康子・・・伝子のマンションの区切り隣の住人。EITO準隊員。

 本庄尚子・・・本庄医師の姪。弁護士。


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 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 ==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==


 1月14日。EITO本部。会議室。

 なぎさは、伝子の命令で、「ただの反省会くらい休め。一ノ瀬さんに親孝行しろ。」と言っていた。

「おねえさまは、いつ気がついていたの?」と、あつこは伝子に尋ねた。

「なぎさは、ウーマン銭湯で不思議な少女と出会った、と言っていた。不思議な少女とは、不思議にウマがあった、とは言っていた。再会したという報告は無かった。だが、一つだけ確認しておいた。オーナーが三美さんになったから、『規約』が変わったかと尋ねた。そういう話は聞いていない、と返事が返ってきた。鈴木先生に調べて貰ったが、その名前の小学生はいない、という。戦闘の直前だったが、ウーマン銭湯にデータを送って貰って驚いた。やはり、ウーマン銭湯のシステムは正常に作動していた。ウーマン銭湯は、今は、成人女性でないと入れないんだ。それなら、何故入れたのか、入ろうとしたのか?入れたのは、システムが成人女性と認めたからだ。入ろうとしたのは、なぎさに近づいて、何かを調べようとしたからだ。」

「そんな、凄いシステムなんですか?」と、日向が尋ねると、「瞬間的にCTを撮り、骨密度等から、年齢を割り出せる。」と伝子は応えた。

「お名前カードで確認するだけだと思っていたわ。」と田坂が言った。

「お名前カードで確認する時、ストップモーションだろう?その時CTが走る。特殊なCTだ。レントゲンのように一瞬でいい。」と伝子はまた、説明した。

「何故、危険を感じていたか?なぎさは、一回しか遭っていなくても、目に♡マークが入っていた。新しい隊員は知らないが、なぎさはBだ・・・サザンクロスだが、花言葉で『願いを叶えて』『光輝』『遠い思い出』という意味があるそうだ。ひかる君のお母さんが教えてくれたよ。コンティニューの、久女の願いが込められていたんだろう。初めから敗北を覚悟していたようだった。」

 皆、黙って聞いていた。

 沈黙を破って、質問したのは、あかりだった。

「副隊長は、きっと立ち直る。私は、そう信じてる。それで、隊長。新しい敵のことは、名前以外分からないんですか?」

「うん。」と言って、伝子はホワイトボードに書いた。『ナチュラル・デプス』と。

「追加情報は、自称牧場映子次第だな。コンティニューの娘で、コンティニューの『枝』だったんだから。」と、夏目警視正は言った。

「敵はいつ攻めてくるか分からない。休める時に休め。大前君は1月17日が『阪神淡路大震災』から29年だから、何か起きるかも知れない、と言っている。」と、理事官は言った。

「そう言えば、鈴木先生が、偶然コンティニューの同級生だったようですが、震災後に関西から転校してきた、と言っていました。何とかそれまでに決着つけたかったのかも知れませんね。」

 午後1時。伝子のマンション。

「総子ちゃんからメールで、応援呼んでくれれば良かったのに、って怒ってたよ。」と、帰ってきた伝子に高遠は言った。

「ああ。忘れてた。」「ああ、忘れてた・・・総子ちゃん、トラウマになるわよ。」

 入って来た綾子が言った。

「たまには、正論言うんだ、クソババアも。」「私は、もうトラウマよ。」

「なんだとぉ!!」伝子は綾子と取っ組み合いを始めた。

 そこへ、チャイムを押しても返答が無いので、愛宕夫妻が入って来た。

「おねえさま、止めて!!あなた、お母さんを!!」

 みちると高遠が伝子を、愛宕が綾子を引き留めて、引き離した。

 藤井が水の入ったじょうろを持って来て、伝子と綾子にかけた。

 続いて、高遠から受け取ったピコピコハンマーで頭を叩いた。

 みちるは、浴室からバスタオルを持って来て、親子に渡した。

「コーヒーでも入れましょう。」と言って、高遠はコーヒーや紅茶の用意を始め、みちると藤井が手伝った。

 その間、愛宕は双方から『事情聴取』を始めた。

 その内、伝子が折れた。「かあさん、ごめん。『今日は』私が悪かった。」

「今日は?」まだ、鼻息荒い綾子に、「まあまあ。先輩は謝り方が下手なんですよ。」と言った。

 午後2時。

 以前、服部が持って来たレコードを高遠がかけて、騒ぎは収まった。

 曲は「ルビーの指輪」だった。


「一佐は、こういうことも出来ないんだよな。」と、ポツンと愛宕は言った。

「今日、一ノ瀬家にいるんですよね、先輩。みちるに聞いたけど、最近、情緒不安定なんですって。」「うん。そこへ事件が連続、悪の正体が・・・だよ。近い内に、須藤先生の検査を受けさせようと思う。」と、伝子は応えた。

「僕も、池上先生に相談したら、池上病院の風間先生も『本人次第』って言うかも知れない、って言ってましたよ。」と、高遠はコーヒーを飲み干して言った。

「本人次第ねえ。あ、おねえさま。暫く、なぎさっちには、司令室待機にして貰ったらどうかしら?あつこも、そう言ってた。おねえさまはソノオ、行動隊長復帰しているし。班長的な隊員も何人かいることだし。今回みたいな総力戦は、そうそうないだろうし。」

「そうだな。みちるも成長したな。」「くふくふくふ。」

「変な笑い方するなよ。あ。そうだ、先輩。早乙女さんが西部警部補と一緒になるって話、聞いてます?」「いや、初耳だ。じゃ、こっちも婚約で狙われる可能性が・・・あ、指輪か。」「辰巳君の彼女の指輪、ひかる君のお母さんが鑑定したら、本物だったらしいですよ。500円じゃ勿体ない買物だったって・・・あ、文字通り拾いものの買物だったって。」

「成程な。コンティニューは、やはり、せっかちじゃなかった。イミテーションの指輪とすり替えたんだ。」

「愛宕さん、この場合、どうなるの?窃盗?」「まさか。知らなかった訳だし。今の話は先輩の推理だけど、証拠はない。盗品の証拠でもあればイミテーションと交換にするしかないけど。」

「皆で黙っとけばいいんじゃない?」と綾子が言い、皆は笑った。

 チャイムが鳴った。高遠が玄関に出ると、本庄弁護士だった。

「高遠さん、塩!!」高遠は、慌てて台所に行き、本庄にかけてやった。

「先生、お葬式の帰りですか?」と、伝子が問うと、「ううん。忌々しいことがあったから、お清め。」と、言った。

 高遠は、紅茶の用意をした。

「例の、コンティニューの娘。通称牧場映子。本名、内藤映子。国選で回って来た私に『先生。統合失調症というセンでお願いします』って言ったの。断る!!って言ってやった。気がついたら、ここに来てた。本庄病院に行ったら、叔父やいとこになじられるのが分かってるから。」

「伝子の人徳だね。」と、本庄に紅茶を出しながら、高遠は言った。

「統合失調症の人が、私、統合失調症ですって言うと思う?」

 本庄の言葉に、全員がかぶりをふった。

 高遠は、この『平和』の日が長く続くことを祈った。

 24時間後、沈黙は破られた。

 ―完―

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