冒険228.『かいめい』(前編)
===== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
大文字伝子(だいもんじでんこ)・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。
大文字[高遠]学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。
一ノ瀬[橘]なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。
久保田[渡辺]あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。
愛宕[白藤]みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。
愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。
斉藤長一郎理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。
夏目房之助警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。
増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。
金森和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。
馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からのEITO出向。
馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。
大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。
田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。
浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。
新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長補佐。
結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。
安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。
日向(ひなた)さやか一佐・・空自からのEITO出向。伝子の影武者担当。高木と結婚することになった。
飯星満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。
稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。
愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。
工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向。
江南(えなみ)美由紀警部補・・・元警視庁警察犬チーム班長。EITOに就職。
伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。
葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。
越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。
小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。
下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁から出向。
高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。
筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁からEITO出向の警部。伝子の同級生。
青山たかし元警部補・・・以前は丸髷署生活安全課勤務だったが、退職。EITOに再就職した。
財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。
仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。
渡伸也一曹・・・EITOの自衛官チーム。GPSほか自衛隊のシステム担当。
草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。
河野事務官・・・警視庁からのEITO出向。
久保田嘉三管理官・・・EITO前司令官。斉藤理事官の命で、伝子達をEITOにスカウトした。
久保田誠警部補・・・愛宕の先輩刑事だった。あつこの夫。久保田管理官の甥。
藤井康子・・・伝子マンションのお隣さん。EITO準隊員待遇。
中津健二・・・中津警部補(中津刑事)の弟。興信所を経営している。大阪の南部興信所と提携している。
西園寺公子・・・中津健二の恋人。愛川静音の国枝大学剣道部後輩。
高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。
泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。
根津あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。
南部寅次郎・・・南部興信所所長。
山城順・・・伝子の中学の後輩。愛宕と同窓生。今は、非常勤の海自事務官。
山城[南原]蘭・・・山城の妻。南原の妹。
物部一朗太・・・伝子の大学の翻訳部の副部長。故人となった蘇我義経の親友。
物部[逢坂]栞・・・伝子の大学の翻訳部の同輩。物部とも同輩。美作あゆみ(みまさかあゆみ)というペンネームで童話を書いていた。物部と再婚して、出産した。
依田俊介・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。あだ名は「ヨーダ」。名付けたのは伝子。やすらぎほのかホテル東京支配人。
依田[小田]慶子・・・依田の妻。やすらぎほのかホテル東京副支配人。
福本英二・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。大学は中退して演劇の道に進む。今は建築設計事務所に非常勤で勤務。
松下宗一郎・・・福本の元劇団仲間。
本田幸之助・・・福本の元劇団仲間。
豊田哲夫・・・福本の劇団仲間。
服部源一郎・・・南原と同様、伝子の高校のコーラス部後輩。
服部[麻宮]コウ・・・服部の妻。
村越警視正・・・副総監付きの警察官幹部。警視庁テロ対策室室長。
原田正三警部・・・新宿署風俗担当だったが、福井県警に転勤。
天童晃(ひかる)・・・かつて、公民館で伝子と対決した剣士の一人。EITO東京本部トレーニング顧問。EITO準隊員。
高峰圭二・・・高峰くるみの夫。みちるの義兄。警察を退職後、警備員をしている
高峰舞子・・・高峰の娘。
みゆき出版社編集長山村・・・伝子と高遠が原稿を収めている、出版社の編集長。
池上葉子・・・池上病院院長。高遠の中学卓球部後輩池上彰の母。彰は他界。
真中志津子・・・池上病院総看護師長。
=================================================
==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==
午前5時。中田家(池上家)。その一室。
表札は、カモフラージュの為、また変わっている。池上院長の池上葉子の家である。
おさむの隣に、伝子と高遠は眠っていた。伝子は流産していなかった。子供の安全の為、隔離していたのである。流産していないことは、斉藤理事官、久保田管理官、なぎさ、藤井しか知らない。
この家は隣接している池上病院と内部で繋がっている。この事を知る人間も限られている。総看護師長の真中志津子が駆け込んで来た。
「やっぱり。」志津子は、眠っている2人のスマホがバイブであることを確認した。
2人は、大阪の南部興信所所員の幸田の結婚式の帰り、いつまた闘いになるかも知れないので、我が子の側に少しでもいたかったのだ。池上病院のヘリポートにオスプレイは着陸し、深夜に病院から、この家の内部に来た。志津子が来たのは、急を告げる為だ。
「起きて!大文字伝子さんが死んだわ。」
午前7時。EITO本部。食堂。
なぎさが、『あり合わせ』で、伝子と高遠に早い朝食を出した。
「おねえさま。おにいさま。息子と会えたの?抱きしめてあげた?」「うん。」「すまないね、なぎさちゃん。食事用意して貰って。」
「賄いは、常時ストックがあるから。午前3時頃、世田谷区のガスタンクが爆発したの。それを合図にするかのように、都内都下26カ所で火災。ボヤだけどね。そして、レッドサマーは、Redで声明。」
伝子は、志津子の見せてくれた、Redの文字メッセージを思い出した。
《
やっと、俺の出番だ。あとがつかえているのに、のんびりしている女子大生の時代は終った。夜明けまでに『変化』があるよ。レッドサマー。
》
《
お待たせしたね。まずは打ち上げ花火だ。ああ。改名するよ。フォッグブルーに。冬だし。
》
先のメッセージは午前0時。次のメッセージは午前3時にアップロードされた。
「これから、どうなるの?おねえさま。私、恐い。」「こら。ここはウチじゃない。それにお前は副隊長だ。」
「はい。」なぎさは、涙を拭った。なぎさは、時々『おんな』を見せる。
高遠は慣れていた。なぎさは、公言している通り、『B』だからだ。
「さ、そろそろ、支度して。おにいさま。あつこが迎えに来るわ。」と、なぎさはスイイチを切り替えた。
午前9時。EITO会議室。
斉藤理事官は腕組みしていた。マルチディスプレイが点いた。
「理事官。ガスタンクは、夕方までには鎮火予定だそうです。爆発の15分前に、消防で『燃えている』という通報があったそうです。消防が駆けつけた時、燃え始めだったそうです。文字通りマッチポンプですね。と、久保田管理官は言った。
「延焼しないんですか?」と日向が言うと、「新婚旅行がお預けで残念だな、日向君。実は、ガスタンクはガスが抜かれた後のガスタンクだ。饅頭のアンコはもうない。それと、都内で起きた26軒のボヤも、消防に通報があって、消防車が到着すると同時に燃えだした。」
「じゃ、大火災を起す積もりじゃなかった、と・・・。」と仁礼が言った。
「そういうことになるな。ああ。お預けの話だが、靑山君と江南君も暫くはお預けだ。副総監が来月式場を抑えていたらしいが、キャンセルされた。それと、マスコミには伏せるように言ってあるが、『大文字伝子』という名前の女性が湘南で溺死した。地元では、サーフィン中の事故で片づけているが、調べる必要がある。」
「私と同姓同名、ですか。私と間違われて殺害された可能性もある、ということですか。」と、伝子は悄然となった。
「うむ。草薙。珍しい名字には違いないが、どれくらいか調べさせた。発表してくれ。」と理事官は草薙を指名した。」
「大文字姓は全国では60人。宮城県が一番多くて20人。サーフィン中に亡くなった女性は宮城県でした。そして、アンバサダーと同姓同名の人ですが、3人です。引き算すると、後1人です。福井県ですね。」
「よし、県警に保護させよう。場合によっては、EITOも出動を頼む。」と、久保田管理官は言って、通信を切った。
「理事官。ウチも、福井に出張させましょうか?」と中津健二が言い、「よろしく頼む。」と理事官は応えた。
午後2時。伝子のマンション。
「あなたは、今いなくていいの?本部に。」と綾子が言うと、「待機だ。なぎさが、少しでも自宅で仮眠してくれ、と追い出された。」と伝子は応えた。
「いい部下に育ったわねえ。で、寝ないの?ああ。私がお邪魔なのね。寝るって、眠る事じゃないんだ。」「お義母さん、妄想が激しすぎると思いますよ。夕べは、とんぼ返りだったから、疲れているだろう、って気遣いですよ。」
2人が話している間に、ソファーで伝子はまどろみ、眠った。
高遠は、寝室から毛布を持って来て、伝子にかけた。
「今度は、どんな敵かしら、やっぱりおんなかしら?」「さあ。サンドシンドロームは、名前しか教えてくれなかったから。」「コロニーの錠剤って、初めて聞いたわ。ひょっとしたら、新種のコロニーを広められるところだったのかしら?」
「恐らくは。コロニーの対策は、一に消毒、二に消毒、三、四が間隔、隔離。ああ。マスクも必須。」「どれもやられること前提の消極的なものばかりだったわ。」「経口出来れば、接触感染より強力ですからね。サンドシンドロームは『モルモット』だったっていうことです。だから、自爆を選んだ。薬では死にたくない、と。でも体が飛散したら、感染したかも。」「飛散したの?」「驚かないで下さいよ。数時間にしか過ぎないけど、四肢のない体で、言葉も言えない寝たきり状態で生きていました。」
高遠は、子細を伝子から聞いていたが、綾子にはきついなと思って、オブラートに包んで言った。
午後3時。
チャイムが鳴って、高遠が出ると、山村編集長が立っていた。
「高遠ちゃーん。びっくりしたわよぉ。大文字伝子なんて死亡者の名前が出たから。」と、言いながら、編集長は抱きついた。
そこで、高遠は経緯を説明した。「そう。結婚式のダブルヘッダーだったのね。同姓同名の人って、やっぱり世の中にはいるのね。」
「亡くなった人を含めて日本には3人だそうです。もし、サーフィンが事故死でなかったら危ないから、3人目は保護するって言ってました。もし、事故死でないなら、案外、この辺で伝子も狙われていたかも。」
「で、愛妻は今?」と尋ねる編集長に、高遠は指を指した。
綾子が、お茶の用意をした。「あ。どうも。お久しぶりですね、おかあさん。綾子さんでしたっけ?」「はい。いつも娘と婿がお世話になっております。」
「どう思います?編集長。伝子が狙われたかそうかはともかく、一連の火事とフォッグブルーの挑戦状。」
「何で、私に?」「参考の為に。編集長ほど見識のある方は、僕の身の回りには他にいませんから。」「上手いこと言うようになったわね、高遠ちゃん。私はネエ、何か『陽動』のような気がする。火事に目を向けさせて、他の悪いことをする。泥棒とか殺人とか。」
「成程。まだ世が開けてない時間ですものね。あ。編集長の説だと、火事の周辺に事件がないかどうか探る必要があるかも知れない。詰まり、お前らは鈍感だから分からないだろうが、こんな近くで事件が起こっているぞ、とか。26軒、いや、ガスタンク入れると27軒のボヤは、何か『ひとつの事件』を隠す為かも知れないな。」
高遠は、EITO用のPCを起動し、理事官に報告をした。
「成程。例えば、ボヤの現場の近くで空き巣があったとして、それは、単なる空き巣じゃなかった。フォッグブルーが動き出したのだから、単なる空き巣の筈がない。そういうことかね。よし、調べてみよう。河野君!」と言いながら、理事官は通信を切った。
「それはそうと、高遠ちゃん。逢坂先生の子供、産まれたのを知ってる?」「いいえ。」
高遠は、時間を聞いてびっくりした。昨夜3時。Redに敵のメッセージが入った頃だ。
きっと、物部達は、作戦行動に出るかも知れない、と自粛したのだ。そして、総看護師長も。
「行きましょう、編集長。お義母さんも。」「伝子は?」「忘れるなよな。主役だぞ、私は。」
午後4時。池上病院。栞の病室。
物部と高遠と編集長と綾子と伝子は、新生児室に行ってから、入って来た。
「水くさいですよ、先輩。」「ゴメン、高遠君。伝子。忙しいと思ってさ。」
「いい名前だわ。流石、美作先生。あ。マスターが付けた名前?」「いいえ、私よ。」
編集長は撮って来た新生児室の写真を見ながら行った。本当は撮影禁止なのだが、内緒で撮ったものだ。写真にはネームプレートに『満百合』と書いてある。
「まゆり、かあ。いい響きね。字も凝ってる。流石、栞さんね。」
そっと入って来た、池上院長が高遠と伝子に囁いた。「ゴメンね。あそこから直行させる訳にも行かないし、まっすぐヘリポートに案内させたの。」
2人は黙って頷いた。
その時、伝子のスマホのバイブが振動した。
伝子は、すぐ廊下に出た。「出動かな?」と物部が言うと、伝子が帰って来た。
「出動よ。物部、悪いけど2人を送って。編集長。ありがとう。」伝子は廊下に出た。
「はいはい。ご母堂と婿殿は送り届けますよ。」「副部長。聞こえてないと思いますよ。」
皆は笑った。伝子の無事を祈って。
―完―
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます