冒険217.会社の覚悟
====== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
大文字伝子(だいもんじでんこ)・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。
大文字[高遠]学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。
一ノ瀬[橘]なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。
久保田[渡辺]あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。
久保田誠警部補・・・愛宕の先輩刑事だった。あつこの夫。久保田管理官の甥。
愛宕[白藤]みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。
愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。
斉藤長一郎理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。
夏目房之助警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。
村越警視正・・・副総監付きの警察官幹部。あつこがEITOに移ってから、副総監の秘書役を行っている。
増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。
金森和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。
馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からのEITO出向。
馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。
大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。
田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。
浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。
新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長補佐。
結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。
安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。
日向(ひなた)さやか一佐・・空自からのEITO出向。伝子の影武者担当。
飯星満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。
稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。
愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。
工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向。
江南(えなみ)美由紀警部補・・・元警視庁警察犬チーム班長。EITOに就職。
伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。
葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。
越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。
小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。
下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁から出向。
高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。
筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁からEITO出向の警部。伝子の同級生。
青山たかし元警部補・・・以前は丸髷署生活安全課勤務だったが、退職。EITOに再就職した。
河野事務官・・・警視庁からのEITO出向。
財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。
仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。
橋爪警部補・・・丸髷署生活安全課刑事。愛宕の相棒。
久保田嘉三管理官・・・EITO前司令官。斉藤理事官の命で、伝子達をEITOにスカウトした。
山城順・・・伝子の中学の後輩。愛宕と同窓生。今は、非常勤の海自事務官。
山城[南原]蘭・・・山城の妻。南原の妹。
物部一朗太・・・伝子の大学の翻訳部の副部長。故人となった蘇我義経の親友。
依田俊介・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。あだ名は「ヨーダ」。名付けたのは伝子。やすらぎほのかホテル東京支配人。
依田[小田]慶子・・・依田の妻。やすらぎほのかホテル東京副支配人。
福本英二・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。大学は中退して演劇の道に進む。今は建築設計事務所に非常勤で勤務。
福本[鈴木]祥子・・・福本が「かつていた」劇団の仲間。福本の妻。
南原龍之介・・・伝子の高校のコーラス部の後輩。元高校の国語教師。妻文子と塾を経営している。
南原[大田原]文子・・・南原の妻。
服部源一郎・・・南原と同様、伝子の高校のコーラス部後輩。
服部[麻宮]コウ・・・服部の妻。
渡伸也一曹・・・EITOの自衛官チーム。GPSほか自衛隊のシステム担当。
草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。
スコット・ガーランド・・・Metal社アメリカ本社副社長。
大文字綾子・・・伝子の母。介護士をしている。
藤井康子・・・伝子のマンションの区切り隣の住人。モールで料理教室をしている。実は、EITO準隊員。
本庄虎之助・・・本庄病院院長。
芦屋三美・・・芦屋グループ総帥。EITOの株主。三つ子の姉妹の一美は大阪府警に、二美はEITO大阪支部に勤務している。
高峰圭二・・・高峰くるみの夫。みちるの義兄。元刑事で、今は警備員をしている。
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==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==
午前7時。Metal社日本支社。
Metal社アメリカ本社副社長である、スコット・ガーランドが記者会見を開いていた。
「ご存じの通り、日本支社前社長の仁科が逮捕されたので、私が暫定的に支社長を勤めます。専務である宗像敏夫を副社長とし、いずれは、宗像に社長を引き継ぎます。さて、今朝、勝鬨橋で10人の死体が上がりましたが、いずれも、当社の下請けを請け負っていた、有限会社 東洋IT派遣の従業員です。実は、恥ずかしながら、仁科が作っていたダミー会社の従業員です。全員、那珂国人です。EITOによると、仁科はダークレインボーの『幹』、すなわち幹部である、サンドシンドロームの『枝』、即ち、幹部の腹心の1人だったようです。」
会場にざわめきが起こった。スコットは、ざわめきが静まるのを待って、こう言った。
「酷い殺され方をした10人は、EITOによると、ダークレインボーの中でも、サンドシンドロームは残忍な幹部だそうで、こんな殺され方をしたようです。」
記者の1人が、手を挙げながら言った。「元支社長が、腹心の1人ってことは、元支社長の命は大丈夫なんですか?」
「それは、私がお答えしましょう。」と、横の村越警視正が言った。
「ダークレインボーの幹も枝も、作戦が失敗に終ると、殺されるか自殺をするのが常でした。それで、厳重に保護しております。裁判まで進んでも裁判所で死んではいけないので、裁判所で裁判は行わない、というのが検察庁からの通達です。」
会場はまた、ざわめいた。筒井は、その様子を理事官に報告していた。
午後1時。EITO本部。会議室。
「結局、辻褄合わせをされた感じだな。」と、夏目は言った。
「EITOが介入して、『下請け』のBase book部隊が明るみ出てしまったから、Metal社日本支社を潰す予定が不可能になった。その責任をBase bookのオペレーターであるダミー会社の従業員を殺し、会社を潰した。」と、伝子が言った。
「おねえさま。警視庁がガサ入れすると、その会社のPCのHDDは物理的に破壊されていたそうよ。多分、中身のデータをクラウドかどこかに移した上でね。」と、あつこが報告すると、大蔵が、「賢明、なんて褒めたくはないが、フォーマットしても復元出来るからね。警視、ディスプレイや他の機器は?」「綺麗なもんよ。手慣れているのね。あまり時間は無かった筈だけど。」
「殺人部隊は、別にいたんでしょうか?」と馬場が言うと、「当たり前のこと言わないでよ。」と金森が言った。
「まあまあ、夫婦喧嘩は帰ってからにしてくれ。勝鬨橋付近の目撃者は見付け難いかな?」と、理事官が言うと、「理事官。そのエリアだけ停電していたそうです。停電部隊もいたんですね。」と結城が言った。
「あ。そうだ。おねえさま。結局、トップインフルエンサー達は、『わざと』規約違反扱いにされたんですか?その那珂国人の派遣従業員は全員ですか?」みちるが尋ねると、「どうやら、そのようだ。殺された垣田も傷害で逮捕された徳川も、自分だけ酷い目に遭ったと思っていたが、20人のトップインフルエンサー全員が同じ目に遭ったことが中津興信所の調査で分かった。そうですよね、中津さん。」
ディスプレイの中の中津健二が笑った。「見透かされちゃっているなあ、いつ言おうかな?って、思ってたら。アンバサダーのおっしゃる通りです。その派遣従業員は全員、仁科の命令の下に、工作を行ったんです。正規のMetal社員はエーアイで抽出された投稿のチェックを行っていただけなのに。」
「罪が無いのに、罰を与えていたのか?なんてことだ。」と、理事官は憤慨した。
「徳川も真実を知らせれてショックだったようです。本庄弁護士は、断固『情状酌量』を訴えるそうです。アンバサダー、良かったですね。」と言う中津に、越後が「隊長が依頼されたんですか?」と尋ねた。
「うん。実は、学が言い出したんだけどね。本来の被害者は徳川達だって。」
「なんて素晴らしいご夫婦なんでしょう。」と越後は涙ぐんだ。
田坂が「越後は、涙脆かったんだ。よしよし。」と越後の頭を撫でた。
「そのトップインフルエンサー達だがね。18人の。Metal社が何らかの補償をすると発表したよ。ピンチはチャンス。スコット社長はやり手だね。事件のお陰で、かえって利用者が増えるかも知れない。」と、久保田管理官が画面の中から言った。
「あ。」「どうした、安藤。」と伝子は、声を上げた安藤に尋ねた。
「隊長。何で、10人のオペレータで20人のトップインフルエンサーをいたぶる必要があったんでしょう?」「ダークレインボーの究極の目的は『日本の分断』なんだ。色んな犯罪を行ってきたが、犯罪はその目的の為の手段なんだ。」
「分断・・・って。」「私から説明していいかしら?」「三美さん。神出鬼没ですね。」
「あなたにそんなこと言われるとはね。いいわ。安藤さん。簡単に『日本人同士憎み合う世界』、それが理想なのよ。古来、支配者達は、複数のグループで憎み合い、弱らせることをよくやって来たわ。結果、弱ってしまった所を叩けば、簡単に落とせる。親那珂派の国会議員達は、常に混乱するような発言をしているでしょ。Base bookのインフルエンサー達は、他のユーザーの共感を得やすい。どんな意見に対しても。だから、邪魔なのよ、奴らにとって。組織はダークレインボーだけじゃないわ。アプローチも様々ね。」
「大阪の蒲鉾屋の事件ですか。」「そう。詳しい事を知りたい人は、河野さんに資料を貰いなさい。」
安藤は、伝子と三美の会話に興味を持ったので、後で資料を貰うことにした。
午後3時。伝子のマンション。
高遠が、綾子に伝子から聞いた話を話していた。「ふうん。じゃあ、一番可愛そうなのは、殺されて火事現場に放り込まれた人?」「いやいや、お義母さん。Metal社で葬儀費用と『お悔やみ金』出すらしいです。」「商売、上手ね。株、上がりっぱなしじゃない。」
「その通り。あ。お迎え・・・が来た。」「え?」
現れた、なぎさに綾子と高遠は吹き出した。なぎさは、きょとんとした。
午後4時。本庄病院。栞の病室。
伝子、綾子、高遠、藤井が入って来る。広い個室だが、既に物部、依田、慶子
、福本、南原、文子、服部、コウ、山城、蘭が勢揃いしている。
「おいおい。患者が見えないぞ。物部さんは大家族だったかな?」と院長が言った。
「すいません。大文字。何とかしてくれ。」「分かった。じゃ、皆、栞と握手してから順番に出て。」
皆、素直に廊下に出て、病室には物部夫婦と伝子夫婦と院長だけになった。
「元気な赤ちゃんをな。私は失敗だったから、栞は無理せずゆっくりな。」栞が頷くと、高遠と伝子も廊下に出た。ロビーに行くと、皆が待っていた。
「栞には、十分な時間がある。店も、元々物部が1人でやっていた。辰巳君もいる。ウェイトレスを1人雇うかもとも言っている。皆、心配するな。きっと丈夫で元気な赤ちゃんが誕生する。」
「先輩の言う通りだ。祥子も、ちゃんと赤ちゃんを産んだ。逢坂先輩も心配ないさ。」と、福本が言い、「そうだな。じゃ、時間も半端だし、皆帰ろうぜ。」
伝子と高遠は、院長に挨拶に行った。他の皆は、揃って災難に遭うことになった。
午後7時。伝子のマンション。
2人が夕食を終えた頃、伝子のスマホに祥子から電話があった。伝子はスピーカーをオンにした。
「先輩。英二が戻らないの。本庄病院に電話したら、逢坂先輩に遭った後、まだ帰らないの。」
高遠は、自分のスマホからLinenのテレビ電話をかけた。
物部に急を告げると、「おかしいな。誰も病室に戻って来てないぞ。そうだ。新しいDDバッジは、押さなくてもピンポイントで居場所が分かるんだったな、高遠。」と応えた。
「すぐ、草薙さんに、あ。渡さんか。連絡してみます。」
高遠は電話を切らずに、EITO用のPCを起動させた。草薙が出てきた。
「皆の居場所ですね。おい、渡。」と、草薙は隣の渡に声をかけた。
暫くして、渡が画面に映った。「高遠さん。アンバサダー。DDメンバーが一カ所にいます。」それを聞いた物部が、スマホを持って走りながら、「警備員に確認してみる。」と言った。
「ああ、高峰さん。地獄に仏とはこのことだ。」と物部は電話の向こうで言った。「大袈裟だなあ。どうしました?」物部は手短に高峰に事情を話した。
高峰が、同僚に尋ね、その同僚がテレビ電話に話した。
「10人位の男女が、マイクロバスに乗り込むのを見ましたよ。団体さんの見舞客なんだな、って思いました。」
伝子は、渡にEITOメンバーと警察の両方に連絡するように依頼した。
高遠は、伝子のスマホの祥子と、自分のスマホの物部に、落ち着いて待つように説得した。「私も、その車両を本社に知らせて探して貰います。」と、電話の向こうの高峰が言った。
高遠は、電話を切ると、その車両の特徴を青木にLinenで送った。
青木は、自分のグループ以外に2つのLinenのグループと交流があり、いつも高遠は青木に目撃情報が欲しい時に協力をして貰っている。
EITOとの交信を終えた伝子は、「拉致事件に間違いない。緊急だ。オスプレイを手配した。台所から出撃する。学。準備だ。」と言って、伝子は寝室に走った。
高遠は、台所のベランダの脱出口を開けた。伝子が台所に戻ると、外に縄梯子が降りて来た。高遠は、火打ち石を打って、伝子を見送った。台所の出入り口を閉めると、藤井と綾子が立っていた。
「いつから?」と2人に尋ねると、「拉致事件に間違いない。緊急だ、から。」と綾子が応えた。
―完―
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