第21話 新既存

健たちの旅は、さらなる苦難を予感させるものだった。崩壊した街の瓦礫が積み重なり、かつての文明の名残を僅かに残すのみ。瓦礫の下には、無残に潰された建物や、放置された車両が無数に転がっていた。


「この街も、もう終わりだな…。」健がつぶやいた。


瓦礫の間を縫うようにして進む彼らの視界には、異形の怪物たちが獲物を狙って徘徊していた。その姿は、人間と動物が融合したかのように見え、かつての進化の過程が狂気の沙汰に陥った結果を思わせた。


「ここから抜け出さなければ、俺たちも奴らに…。」芽々が不安げに口にする。


「早く進もう。立ち止まる時間はない。」健が決意を込めた声で命じた。


だが、運命は彼らに無慈悲な選択肢を強いる。背後から迫る異形の怪物が、仲間の一人を襲撃する。鋭い牙が肉を裂く音と、仲間の絶叫が響き渡る。


「助けてくれ!」彼の叫びは無駄に終わることを彼自身が知っていた。血が地面に溢れ、怪物は無残に彼の命を奪っていった。


健は一瞬、足を止めたが、他の仲間たちが彼を急かした。「行こう、健!ここに留まっては全滅だ!」


健たちは、涙を噛み締めながらその場を後にし、さらに進むことを決意した。

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