第31話 サポーター組vs???

 お互いの実力が知れた所で、俺は昨日作成した美亜・飯塚の戦闘能力についてまとめたファイルを2人のスマホに送った。


「成瀬美亜のオーパーツはイナヅチ。簡単に言うと雷を操る剣だ。薙ぎ払いと共に半円の雷撃を飛ばす【雷刃らいじん】、突きと共に雷撃のビームを飛ばす【雷槍らいそう】、剣を上に向けて、雷を落とす【雷砲らいほう】。この3つがおもな技だ」


 主な、というかアイツは多分この3つの技しか使えない。


「【雷刃】は出が速いが威力は低い。【雷砲】は威力・範囲共に強力だが剣を上に向けてから3秒程タイムラグがあり、その間は隙だらけだ。剣先を天から逸らせば攻撃も止まる。気をつけるべきは【雷槍】。出もそこそこ速い上に威力も高い」

「雷ビームか。何か対策はあるのか?」

「美亜は突きを放つ際に膝と肘を曲げる癖がある。そんで突きは必ず体の正面に放つ。そこに注視すれば避けられる」


 凛空は律儀にメモ帳にメモを書き込む。


「オーパーツ自体はかなり強力。癖が無く、技のバリエーションもいくらでも増やせそう」


 一色さんが言う。

 その通り。イナヅチ自体はかなり強力だ。雷は足が速く威力が高く、更に攻撃を受けた相手を麻痺らせる効果がある。その雷を簡単に操ることができ、攻撃範囲もかなり広いイナヅチは優秀なオーパーツと言える。磨けばかなりのモノになる。


「宝の持ち腐れだな。動画を見たが、剣術はお粗末だ。いくらでも隙はある」


 凛空は予習までしてきたようだ。根は意外に真面目だな。


「次に飯塚。コイツのオーパーツ“グランマ”は自由に大きさを変化させることができる斧だ。斧の柄を伸ばして間合いを伸ばしたり、斧をデカくして敵を圧し潰したりできる。飯塚自身もパワーがあって、巨大化した斧を振り回すことができる」

「動画を見る限り、こっちは隙らしい隙がねぇな。斧の扱いもまぁまぁだ」

「斧を伸ばせると言っても最長で6メートル。その外から魔法を撃てば安全に崩せる。三文字魔法以下しか使えないから遠距離戦ならまず勝てる」


 しかし大きな問題が1つ。


「ただ、凛空と一色さんはオーパーツの補助が無いから7メートル以上の間合いを維持できないだろう。だからコイツは俺がやる。飯塚と接敵した場合は魔法を駆使して逃げてくれ」

「それは構わない。けれど、飯塚と成瀬が一緒にいたらどうするの? 遠・中・近距離、全てに対応できるバランスの良いコンビでしょ」


 一色さんの言うことはもっともだ。だが、


「アイツらはすこぶるコンビネーションが悪い。一緒に居たならむしろラッキーだ」

「いやいや、さすがにコンビネーションの練習ぐらいしてくるだろ」

「それも無い。アイツらはプライドが高いからな。『相手がサポーターだけなのに、特訓なんてしたら恥』……って考えるだろう」

「けっ。舐めやがって」

「もし奴らが油断せず、ちゃんと準備してきたとしても、俺ならあの2人を確実に崩せる自信がある。嫌と言うほどアイツらの動きは見てきた。小さな癖から大きな癖まで網羅している」


 さすがに俺の知っている癖全てをこの短期間に修正するのは不可能だ。


「……あなたは卓越した観察眼を持っている。そのあなたに常に観察され続けた成瀬美亜はあなたに絶対に勝てない」

「え? あ、はい。ありがとうございます一色さん、そこまで言っていただいて……」

「べ、別に。普通のこと」

「なんだおめぇ、さっきから歯切れが悪いっつーか、いつもと様子が違くねぇか? 女の子の日か?」

「【月華雷】!!」


 凛空は一色さんが放った雷に焼かれた。


「ノンデリセクハラ男処すべし」

「み、味方に魔法使うんじゃねぇよ……!」


 今のは凛空が100悪い。


「情報共有はこの辺りでいいだろ。コンビネーションの練習に入ろう。フィールドバトルは最初にクリスタルでランダムにステージのどこかに飛ばされる。転移位置によって3人すぐに集まることもできれば、戦いが終わるまで単独で動くことも、2人で戦うこともあるだろう。その全てに対応できるように、それぞれのペア3パターンの連携訓練とトリオの連携訓練をやる」

「異論はねぇが、相手はどうする?」


 練習相手、か。


「……どうしよう。そういえば考えて無かったな。仮想敵……相手がシーカーだから、オッドキャットのシーカーに頼めたらいいんだけど」


 カツン。と、背後で靴音が鳴る。



「その役目、僕がやろうじゃないか」



 ニッコリ笑顔でそう言ったのはアビスだ。

 俺達サポーター3人はその提案に激震を走らせる。


「アビス様!?」

「……さすがにお前はアイツらの代役にしては強すぎやしないか?」


 アビスは1人でフェンリル全体を相手にできる。それぐらい別格だと練習にならない気もする。


「大丈夫さ。君達なら僕相手でも十二分に立ち回れるよ」

「面白れぇ! S級シーカーと戦う機会なんざ滅多にねぇぜ!」


 テンションを上げる凛空。怯え気味の一色さん。

 俺は2人のテンションのちょうど狭間だな。アビスと手合わせできるのは嬉しいってのが半分、練習になるか心配な気持ちがもう半分だ。


「僕に傷1つでもつけることができれば、君達はフェンリルに勝てるだろう」


 アビスは撃った相手を重くする銃、罪と……そして対象が重い程威力を増す剣、罰を構える。

 前回戦った時と違って、オーパーツ有りの全開の唯我阿弥数だ。その威圧感はあの直情型の凛空の足を竦ませるほど。


「……アビスが相手となると1ミリの連携のズレも許されない。凛空、一色さん、俺の指示をちゃんと聞いてくれ」

「わかってら!」

「了解」


「準備はいいかい? 始めるよ~」


 アビスとの演習が始まる。




 ――――――――――

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