第1章 孤独な二人の出会い part.2

昼休みになると、真奈は一人で屋上に向かった。教室にいると視線を感じて落ち着かないので、いつも昼食は屋上で取るのが彼女の日課だった。冷たい風が頬をかすめ、真奈はゆっくりと弁当の包みを解いた。


だが、その静けさはすぐに破られた。足音が近づき、真奈はふと顔を上げた。そこに立っていたのは、翔太だった。彼は手に自分の弁当を持ち、真奈ににっこりと笑いかけた。


「ここ、いい場所だね。僕もここで食べてもいいかな?」


真奈は一瞬戸惑ったが、何も言わずに頷いた。彼女にとって、誰かと一緒に食事をするのは久しぶりのことだった。


翔太は隣に座ると、軽くお辞儀をしてから弁当箱を開けた。中身はシンプルなおにぎりと少しのおかず。彼はその一つをつまみながら、ぽつりと話し始めた。


「真奈さんは、いつもここで食べてるの?」


不意に話しかけられ、真奈は戸惑った。どう答えればいいのか、一瞬迷ったが、結局、小さく頷くだけにとどまった。


翔太はそれを見て、優しく笑った。「そっか。いい場所だよね。ここ、静かだし。」


それからしばらくの間、二人は黙々と食事を続けた。だが、その沈黙は不快なものではなく、むしろ心地よいものだった。翔太は真奈の静けさを尊重し、無理に話そうとはしなかった。


ふと、真奈の手元が止まった。彼女の弁当箱に、母親が作ってくれた思い出の味が残っている。けれども、それはもう戻らない過去の一部でしかない。真奈の表情が曇り、手が止まったまま動かなくなった。


翔太はそんな彼女を見て、少し考えた後、優しく声をかけた。「無理に食べなくてもいいよ。もし、何か話したいことがあれば、いつでも聞くから。」


真奈は小さく首を横に振ったが、翔太の言葉に少しだけ心が軽くなった気がした。彼女は再び弁当を閉じ、静かに立ち上がった。「ありがとう……」と、ほんのかすかな声で呟いた。


𝓉ℴ 𝒷ℯ 𝒸ℴ𝓃𝓉𝒾𝓃𝓊ℯ𝒹...

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