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「マキゾー、履いているジーパン脱げよ。」
中牧は言葉の意味はわかるが、なぜジーパンを脱がなきゃならないかまったく分からなかった。
「おまえ早よ脱げや~。
テンション下がるべ?熱々のピザが冷めたら不味いだろ?
それと同じだよ。」
まさかの展開に中牧はオロオロしている。
「おい!せっかくのイベントだ。時間が経っちまうと冷めちまうだろうが。」
不良少女の腕を掴み、中牧は倒れている不良少年の顔を跨いで中牧の側に歩み寄った。
「コイツのチンコをベロベロに舐めてやってくれ。
コイツは女とした経験がねえの。
ほんでな、コイツを男にしてやってくんねえかな?
マキゾー、ヤンキー姉ちゃんの気持ちが高まってきたら、本番をしてもいいからな。」
不良カップルは声にならない掠れ声で泣き出した。
公園の時計塔は20時を回った。
6月とはいえ日中に比べて気温が下がり半袖では肌寒い。
時折り吹きすさぶ風が、頬や二の腕を冷やす。
心身ともに追い込まれている3人は、逃げ場のない恐怖に震える実験用の小動物のようだ。
「うぅ…誰か助けて…。」
鬼頭は不良少女を無理やりしゃがみ込ませた。
「おら、いつまでも泣いてんじゃねぇよ!
そこの弱虫彼氏が見てる前でマキゾーのチンコを嬉しそうな顔で舐めろよ。
早くやれおらっ!」
髪を掴んで左右に引っ張る。
「痛い痛い!」
4人は木々に覆われて外側からでは公園の中の様子が
いかんせん、昼間でも人通りはない公園だ。
夜間であれば尚更だ。
揉め事があれば通行人によって、学校へ告げ口される事に腹を立てている中牧だが、この時ばかりは通りがかる厄介者がいない現状に絶望した。
鬼頭の指示に逆らえない不良少女の手によって、ジーパンのファスナーが徐々に下されていくなか、中牧は暗闇から何かが動くのを目にした。
雑草が生い茂る放置されたレンガ敷きでできた歩道の先を目を凝らして見る。
暗闇から「ははぁん」と
その声は中牧だけに聞こえたわけではなかった。
不良少年は精一杯の声で、助けてくださいと叫ぶ。
不良少女は中牧のジーパンから手を離し、声がした方向へ助けを求めて走って行く。
命懸けで助けを乞う不良カップルは熊に襲われたかのような心境だった。
「なんだい。そこで何をしている?」
号泣している不良少女は暗闇からやってきた男の腕を掴み叫ぶ。
混乱している為、"殺される"、"助けて"と単語を述べ掴んだ腕を引っ張って、4人掛けベンチへ連れ出した。
不良少女が説明する間もなく倒れている少年を見つけて言った。
「おい、君は誰にやられたんだ?」
「あ、あの…。」
鼻が折れている不良少年は痛みに耐えながらも、鬼頭に指を差した。
男は指の方向を見ると不敵に笑う鬼頭と目が合う。
「これはおまえがやったのか?」
「関係ないだろ?
それよかおまえは誰よ?なんでここにいる?」
「質問に質問で返すのはよしなさい。
おまえはなぜ、この子達をいじめているんだ?」
「いじめ?コイツらから先に喧嘩を売ってきたんだぞ。
なぁ、マキゾー?」
「確かにウチらからチョッカイは出したけどーーーー」
「けど?なんだい?」
「…あ、大人を呼んできてもらえる?
てか、私は解放されたから警察に電話をすればいいか。」
不良少女は暗闇からやってきた男の顔を見て、頼れる大人ではなく同い年くらいの男子だと判断したのだ。
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