第37話 深海古都1(超都市高校編)

 超都市高校は白薔薇高校から車で30分ほどの距離にある。ちょっと遠出しなければならない距離。なのに、深海古都は白薔薇高校の近くの本屋までやってくる。車に乗せてもらい、長距離を移動してくる。何か訳ありか? と海人が勘繰るのも仕方ない。


 ほぼ毎日、本屋にやってくる。読書中毒者。深海古都。まずは聞き込み調査。大人の店員さんに聞いてみた。


「あの、すみません。超都市高校の女子生徒が毎日、本を買っていきませんか?」


「はい。そうですね。お友達かしら」


「友達です。はい」


 白薔薇高校の区画にある本屋なのに、真っ黒の超都市高校の制服は嫌でも目立つ。本屋の店員さんに聞いたところ、全員が深海古都のことを知っていた。買っていく本のジャンルは様々で、教養からサブカルまで幅広かった。


 放課後。本屋で暇をつぶしていると、今日も深海古都はやってきた。午後5時。超都市高校の放課後が終わって、少し休憩して、車で30分といった感じ。早速話しかけてみる。


「やあ、こんにちは」


「あら、どなたかしら?」


「僕の名前は青野海人。白薔薇高校の1年生だ」


「白薔薇高校は女子高ではなかったかしら?」


 ごもっとも。純白の男性用の制服は珍しい。


「白薔薇高校に騎士制度っていう編入制度があるんだ。それに合格して男子でも編入を認めてもらえた」


「そうですか。して、私に何用で?」


「毎日、この本屋を通っていますよね。深海古都さん?」


「ほう。私の名前はすでにご存じですか」


 深海古都は黒の女子制服に身を包み、真っ黒の髪をロングにしていた。ラノベの黒の女キャラみたいな印象。何もかもが黒で、肌以外、すべての部分に黒を使用している。


「名前だけじゃない。1年生であり、超都市高校の秀才でレベル4の超能力を持っているところまで知っている」


「ただのストーカーではありませんね。ちょっとお茶でもしますか?」


「ありがたい」


 海人は本屋に備え付けのコーヒーショップに案内する。ブラックコーヒーを海人の奢りで二つ買い、席に移動する。


「一応、自己紹介しますか。初めまして。私の名前は深海古都。超都市高校の1年生です」


「改めて。白薔薇高校の1年生。青野海人です」


「私に改めてお話というのは?」


「単刀直入に言います。君に、白薔薇高校の文芸部に入部してほしい」


「なぜ?」


「毎日、本屋に通っているからだ。圧倒的な本好きで、部活動に所属しておらず、暇な1年生を探している。深海さんのことはある超能力で調べさせてもらった」


 コーヒーを一杯飲む深海古都。肌以外、真っ黒の美少女が黒いコーヒーをブラックで飲む姿は映える。


「コーヒーありがとうございます。部活動に無所属なのは確かにその通りです。ですが、すみません。私は文芸部に入ることはおろか、男子としゃべることもできないのです」


「なぜ、イジメでも受けているの?」


 毎日、運転手付きの車に乗って30分の道のりで遠い本屋に通うのは訳がありそうだった。


「イジメではありません。ただの愛です」


「愛?」


「私の兄が超人(レベル5)であることは知っていますか?」


 超都市高校に二人いるという超人(レベル5)。初耳だ。


「超都市高校の超人(レベル5)であり、私の兄である深海海斗(しんかい・かいと)。彼が私を束縛するのです」


「具体的には?」


「私が男子としゃべったら、その男子は半殺しにされます」


「シスコンだった!?」


 深海古都は困ったようにニガ笑う。


「そうですね。兄を一言で表すならばシスコンかしら」


 なんとなく。深海古都が30分かけて本屋に来るのが分かる気がした。


「私の兄は、その、超都市高校で幅を利かせておりまして。私に近づく男子を、全員半殺しにしました」


「お兄さん怖い」


「そのせいで私は1年生の間で孤立しまして。みんな怖がって誰も近づいてこないのです。しかも兄は3年生の生徒会長と付き合っておりまして。また、その女性が私を可愛がってくれるのです」


「生徒会長?」


「名前は獅子祭(しし・まつり)さん。兄と同じ超人(レベル5)です」


「ひえっ!?」


 超都市に7人しかいない超人(レベル5)。その二人から寵愛を受けている深海古都は実はとんでもない女性だった。超都市高校の区画を歩けば、みんなが深海古都に道を開けた。


 席次は、1位、??? 2位、??? 3位、深海海斗 4位、獅子祭 5位、??? 6位、??? 7位、機械愛 となっている。


「初耳です。超人(レベル5)にも席次があるのですね?」


「はい。一位と二位の方は高校に通っておらず、独学で超能力の研究をされているそうです。ですから、高校生最強は、兄と祭さんなのです」


「つまり。深海さんを相手にするということは……」


「はい。超都市で一番の、名門超都市高校の、高校生最強の怪物を二人相手することになります」


「なるほど。分かりやすい」


「ですから青野さんは、己の身を案じて、ここは引き下がって……え?」


「二人を説得できれば、あなたは白薔薇高校の文芸部に入ってくれるのですね!?」


 深海古都が驚く。だが、束縛している3位の深海海斗の許可があれば、晴れて自由になるのは事実。


「その通りですが。兄に半殺しにされますよ?」


「返り討ちにします」


 機械愛。深海古都。深海海斗。獅子祭。新たな人物の登場に沸く海人。


 超都市高校編のスタート。

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