語り手  賀茂 保憲

 ――かなれいりょくぼうそうからやくよんげつ……

 ――いや、れいりょくぼうそうなどではなかった。

 ――かななかたましいが、みずからのつよぎるちからぞうさんしんともおさようとしていた。

 ――ぞうさんしんければぶんふとしず殿どのくなっていただろう。

 ――わたしではまなかったかもれん。

 ――あのちから流石さすがあしそくったところか……


 わたしようふくかわのソファーにすわりそうかんがえていた。

 すると何所どこからかじょせい気配はいこえがする。


やすのりさまみなさまきです」

ちょうか。まないがおまえすこあいをしてくれ、わたしぐにく」

かしこまりました」


 ちょう気配はいえると、わたしさいかんがえる。


 ――これでわたしけいかくはじめられる。

 ――ほんとうきょうだいおう

 ――おにめっするけいかくを。


 わたしはそうかため、らいきゃくかえをするためにソファーからこしげた。

 そしてわたしげんかんかうと、其所そこにはちょうあいをしているきゃくじんじゅうにん


 あしそうみちたかしずさい

 そのどもたいかな

 ふと殿どの

 つちかどそうやすきょうさい

 そのどもあきはるあき


 ふと殿どのしゅこんでいしろきりばこかかえていて、しず殿どのかなを、きょう殿どのはるあきかかえている。

 ふくそうわたしていしたとおり、だんようだ。


わたしやしきによくいらっしゃいました」


 わたしことで、かなはるあきがいわたしせんけた。

 それとどうに、ちょうきゃくじんをして姿すがたす。


まねいただきありがとうやすのり殿どのいてぐでわるいが、どもかせるしょおしえてれるか」


 やす殿どのにそうわれ、わたしふとまる殿どのほういてねがいする。


ふと殿どのすこどもたちやしきにわあそんでいただけますか」

かった。ほれ、れいさけだ」


 ふと殿どのはそういながらちかいてて、まえまでるとわたしさけわたした。


がたいただきます。それより今日きょうは、あのしょう調ちょうはしないんですね」


 わたしことふと殿どのは、わらいをしながらへんをする。


「はっはっはっ、そうどもたちあそためのものだ。ないみつにしてくれ」

かりました」


 そうわたしかえすと、ふと殿どのかえう。


「では、どもたちわたしいっしょやすのり殿どのやしきまわりをたんけんするぞ」


 そしてたのしそうなたいすこいやそうなあきれ、ふと殿どのやしきった。


「ではみなさま此方こちらに」


 わたしあしそうさいと、つちかどそうさいをリビングにあんないすると、ぐちちかくにふたようベビーベッドをさわり、りょうさいせつめいをする。


「こちらにどもたちを」


 きょう殿どのしず殿どのわたしこといて、ベビーベッドにどもかせている。

 みちたか殿どのやす殿どのわたしえている。


如何どうかなさいましたか、みちたか殿どのやす殿どの


 わたしことはんのうしたのはやす殿どの


やすのり殿どの、そろそろほんだいはいりませんか。貴方あなたわたしたちに『かな殿どのを、はるあきさまともとしてむかえましょう』とった」


 つづけてみちたか殿どのわたしう。


わたしたちには『わたしかなくんはるあきさまともとしてむかえたい』とった。むかしこといまでもたいりつしているのは、かいたいおうしょうているから、きょうりょくをするのはかまわない。さいしょりょうあいだちたいのだとおもっていた…… だがかんがえたらおかしいのだ。それならあき殿どのこんやくさせればはなしかなはるあきはなしにするのはおかしい」


 みちたか殿どのはなしがわると、しず殿どのきょう殿どのわたしている。

 わたしほほむ。


 ――流石さすがわかくてもあしつちかどげんとうしゅ

 ――こうでなくては……


「やはりバレていましたか」


 わたしはそうってちかくのテーブルにどうし、っているさけはこをテーブルにく。

 そしてせつめいはじめることにした。


わたしそうかいいくせいがっこうつくりたい。かんしょうがっこうからこうこうまでのじゅうねんかんつうがっこうじゅぎょうに、そうかいしきまなかんした、ぜんりょうせいがっこうこくりつそうかいようせいがくいん。そのがくいんりょうちからをおりしたい」

わたしたちせいとのちゅうかいをしろと」


 やす殿どのことに、わたしくびよこかえす。


「いいえ、それはすでんでいます。りょうにはそくじょがいに、いちぞくどもたちわたしたちがくいんかよようはからっていただきたいのです。りょうしょうだくいただければ、らいねんからがっこうはじめられます」


 するとやす殿どのみちたか殿どのは、すここまったかおをした。


 ――このようだとけいかくどおりか。

 ――まぁこんなはなしをしたのだ。あいわたしぜったいあいしょうだくするとおもって、このはなしをしたのだとかんがえるだろう。

 ――そしてげんわたしりょうどもみつっている。

 ――だからやす殿どのみちたか殿どのも、わたしはなしらなければいけない。

 ――どもいのちためにも……

 ――さて、あいわたし如何どうえているやら。


おどろかれるのはしょうしております。ですがわるはなしではないでしょう」


 そうわたしやす殿どのう。


やすのり殿どのいままでつちかどとうしゅわたしかくしていた」

「それはこういくたいへんだとおもい、いままでかくしていたのです。ですがあしえんましたので、このタイミングでおしえしようと」


 わたしがそうこたえると、みちたか殿どのわたしいてる。


つちかどがっこうあしどもれるのは、いやがるものおおいとおもう。それをやすのり殿どの如何どうにかるか」

しょうだくいただければ、りょうおおしょたちとのこうしょうわたしいたします。そしてなっとくさせてせましょう」

やすのり殿どのがそこまでうなら、わたししょうだくしよう。ただしろうじんたちせっとくと、うちからそうかいせんせいえらんでようすることじょうけんだ」


 みちたか殿どのがそううと、やす殿どのことつづける。


やすのり殿どのがくいんよう如何どうなっている」

「それはしんぱいいりません。りましたので」

「ならいえから はずしてももんだいはないな。そのうえうちも、しょうだくじょうけんあしおなじとしよう」

しょういたしました」

「それともうひとつ」

なんでしょうか」

さきほどげんかん殿どのからいたが、やすのり殿どのあしどもにはがおせたそうだな」

わたしかおならあきさまぞんじですよ」

「そうことではない、どもせてだいじょうなら、わたしたちにもせてくれ。それがかいれいりょくたかめるモノだとはかっているが」


 ――はなしえてた……

 ――いやこれは、しんらいためかおぐらいせろとことか。

 ――かたない……


 わたしめんはずし、がおにんまえさらす。

 するとにんわたしわる。

 だがしょうたもっているようだ。


 ――流石さすがども夫婦ふうふにはかんか。


 そうおもいながら、わたしめんなおした


如何いかがでしたかわたしかおは」


 わたしがそううと、やす殿どのすこずかしそうにこたえる。


「まさか、りょうおうじつざいしているとは」

じょうだんを。さてわれわれすこどもあいをしましょうか、おくがたたち如何どうします」


 わたしきょう殿どのう。


わたしのこります。はるあききたらおっぱいあげないと」


 するとしず殿どのことつづける。


わたしかなにおっぱいあげないと。きょうさんとはなしたいこともあるし」

「ではおとこ退たいさんするか」


 みちたか殿どのはそうってげんかんかおうとした。

 それをわたしめる。


ってください、玩具おもちゃようしています」


 わったわたしはダイニングにかい、テーブルのうえからビニールぶくろってリビングにもどった。


「それではきましょうか。にんうらにわにいるみたいですから」


 そしてわたしたちさんにんは、わたしことあいうらにわどうした。

 するとにはあきけんをしており、たいがおふと殿どのこまっていた。


なにこったんですか、ふと殿どの


 わたしこえわたしたちいたふと殿どのが、此方こちらちかいてせつめいをする。


じつたいだいきでな。そんなあき殿どのったようなのだが、たいあき殿どのにがようで、それにおこったあき殿どのたいばしてしまったのだ」


 そのはなしいて、わたししきやす殿どのみちたか殿どのようかくにんした。

 するとふたともクスクスわらっている。


 ――ほど、これぐらいわらってませとことか。


 やす殿どのみちたか殿どのぶんどももとかい、がおでそれぞれぶんどもせっきょうをする。


「ほらあきになるおんながいるからって、そのなかおとこをいじめるな。それはになるいちばんきらわれることだぞ」

たいくな。おとこならすこしぐらいやりかえせ。いえがいではたいがいすこしはあそびなさい」


 するとさんにんたがいをい、ほぼどうへんをする。


「はい」

「はい」

「はい」

 

 ――このようめんると、わたしわることをしているぶんだ。

 ――いやこのようめんまもためどもたちを……


 わたしがそうかんがえてると、みみもとふと殿どのささやいてた。


やすのり殿どの…… すこはなしが」


 ――なんだ?


なんです、ふと殿どの


 ごえでそうこたえたわたしに、ふと殿どのごえう。


よんげつまえうぶった『さんかた』とはなんです」


 ――さかないたか。

 ――でもいまは……


 わたしこえのトーンをもどし、ふと殿どのう。


「そのはなしみなかえってからいたしましょう。それよりふと殿どの、これをふくらませていただけますか」


 そうってしたふくろなかには、くうけたビニールせいぼうみっつと、ポリバルーンがふたふくろはいっている。


 それをふと殿どのすここまったかおをし、わたしからふくろるとやす殿どのみちたか殿どのかってう。


「ほれ、おやごとだ」



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