死と月

 わたしまえあし かな

 『こうつちかどみんあし』とならひょうされる、そうかいだいそうひとつ、あしそうなんだいさん

 あしだいだいしょみんたすけるためかいはらっていちぞくで、わたし兄姉きょうだいいまそうかいとしてないかくかいきょうからまもっている。

 そうかいたかれいりょくうんどうのうりょくひつようとし、わたしはそのどちらもわせていなかったためかいけんきゅうほうめんちからき、こくりつそうかいようせいだいがくいんそつぎょうは、こくりつけんきゅうじょに、こういんけんきゅうしゃとしてはいぞくされるていだった。

 そう、ていだったのだ……


 それが、なんでこんなことったのか……

 すうじゅっぷんまえまでは、ともだちかいけんきゅうをしていたのに……


 もんだいきたのはわたしゆうじんけんきゅうしつときこと

 そとからおおきなばくはつおんこえてことからはじまった。

 それからしばらくしてにんげんめいつづけにこえ、さらしばらくしてせんせいだらけであらわれて、わたしたちしたのだ。


しんかいあらわれた、わたしたちではえない。ぞうたいじゅまでげろ』と……


 ぞうたいじゅとはこのがくいんちゅうおうそんざいするたいじゅ

 このくに――ほんつくったとされるぞうさんしんほんたい

 だいゆうごうしているぶんがみ――かみ

 しげがみ――たか

 そのちゅうしんしゅかんこうしん――あめなかぬし

 たいじゅちかくにはぜんけっかいられており、わたしたちなんすることったが……


 うんわるぞうたいじゅまえで、くだんしんかいそうぐう

 その姿すがたひときょうまとぬえかい姿すがたをしていたが、このぬえなにかがおかしい。

 

 ――なんだ、このかん……


 わたしむかしぬえったことる。

 それはじゅうねんほどまえ

 ちちからぬえはなしかされ、しんにトイレにきたときこと


 ――まだトラツグミのかつどうかんでもいし……


 そんなことかんがえているわたしぢかに、ぬえさるかおる。


 かんがごとられ、せっきんゆるしたのか?


 ――まずい!

 ――このままでは……


 ぬえさるひとみが、わたしまわようかくにんしている。


 ――うごいたらぬ。


 わたしはそんながした。

 しかしつぎしゅんかん


「こっちだ、このとりろう!」


 いっしょがくゆう――へいさけごえで、ぬえへいほうく。

 かれぬえよこどうしており、わたしぬえかいからはずれた。

 ぬえにターゲットにされたへいは、ゆっくりとあと退ずさりをはじめる。

 へいぶんいのちせいおれたすける心算つもりだ。

 わたしおとりにすれば、ぶんたいじゅけっかいはいれたのに。


 ――へいたすけなければ!

 ――でも如何どうする……

 ――わたしつくれるかまいたちでは、だいこんいっぽんるのがげんど……


 わたしがそうかんがえているあいだぬえへいおそかった。


「へぇいじぃぃぃぃ!」


 わたしはとっさにさけんだ。

 しかしげんじょうわるはずもない。

 しばらくしてわたしいたぬえさるかおは、へいしんまっている。


 ――へいんだ……

 ――いやて、なんぬえかおまっている。

 ――かいひとおそうが、ころことい。

 ――つまり、なかやつひところしている。

 ――だがひところしんかいとは、なんだ……

 ――いや、いまはそんなことよりも……


 わたしはズボンのポケットから、かみふだまいこころからねがう。


 ――このまい上手うま彼奴あいつつぶせれば、此方こちらやすくなる。

 ――たってくれ!


 わたしこうどういたのか、ぬえわたしおそかってた。


 ――い!


 ぬえとらつめ袈裟けさじょうわたしおそう。

 だがあまい。

 わたしぎゃく袈裟けさに、ふだったりながらう。


じゅつかまいたち!」


 するとかまいたちはっせいして、ぬえこうげきはじく。

 そしてかみふだいちまいちた。


 ――あといちまい

 ――これでかおからんでてくれれば……


 するとわたしねがいがつうじたのか、ぬえわたしころそうとしてた。


 ――これで!


 わたしぬえさるかおはなみぎさえ、ふだったみぎぬえまえいちもんさけぶ。


じゅつかまいたち!」


 するとぬえひとみかれ、ぬえめいくるしみす。

 ちるふだかくにんしながわたしこころからおもう。


 ――やった!

 ――これならやすく……


 しかしつぎしゅんかんまえぬえからだかいてんさせ、尻尾しっぽへびこうげきおこなった。


 ――まず……


 わたしぬえこうげきかわせずばされる。

 そられいつきいている。

 そうおもったつぎしゅんかんあたまつよしょうげきわたししきばなした。



   ●●●●



 わたししきもどすと、まえむらさき直衣のうした、ちょうはつじんぶつうし姿すがたった。

 そのじんぶつわたしほうくと、がおかたけてる。


ぎわわたしかったな」


 ――だれだ……


われからぬようだな、ではしょうかいをするか。われつくよみつきときつかさどるかいる」


 そのこといてわたしおどろく。


 ――つくよみえば三貴子みはしらのうずのみこひとはしらかみ

 ――つくよみさまに?


 そんなわたしつくよみさま何所どこからかしたせんひろげ、くちもとかくことつづける。


「まったく、もうすこときはやければあねうえけられたモノを……」

なんはなしです?」

此方こちらはなしだ。それよりかな、おまええらばれた」


 ――?


 なんことだろうか。

 わたしは、このもんつくよみさまいてみることにした。


なににですか」

「そんなことまっておろう。あのぬえ姿すがたをしたしんかいはらものにだ」


 ――!


 わたしつくよみさまことおどろくとどうじに、あのぬえ姿すがたしんかいことおもし、ことしきいてる。


「あのぬえ姿すがたしんかい何処どこに!」

「このがくいんにんげんすべものにし、いまそとにんげんおそっておる」


 ――そんな……

 ――がくいんにんげんぜんめつ……


「そんな、がくいんにはとっきゅうそうかいせんせいたのに……」

「どんなにんげんとしにはてん。とはえ、おまえたいしたてんしんかいもかなりへいしていた。はらわれるのもかんもんだいだろう」


 つくよみさまことわたしすこあんした……

 そしてもんかび、わたしつくよみさまにそのもんをぶつける。


「でしたら、わたしがあのしんかいはらひつようは……――」


 するとつくよみさまは、わたしことさえぎってせつめいはじめた。


まぬ、われせつめいわるかった。殿でんにはであのしんかいはらってしい」

如何どうことですか?」

さきほどせつめいしたとおり、こんかいけんでこのがくいんにんげんぜんめつ。つまりそれは、そのぶんそうかいるとこと。それはこのくにかいへのぼうえいりょくるとことだ。それにたいしてわれぞくからあんこえがってな。なにものかをおくり、そのものこんかいけんぜんふせいでもらおうとまったのだ」


 ――そうことか……

 ――ゆうないようかいた……

 ――だけど……


つくよみさまはなしはかりました。ですがわたしなのです! ほんにはわたしよりゆうしゅうにんげんは、ほしかずほどるとうのに」


 わたしすこちからつよくそうはんろんすると、つくよみさませんじクスっとわらってわたしう。


われあねおとうとようにんげんにがでな。それにこんかいけいかくにはあるていいえがらと、そうかいとしてのちからさ、さいんでいることじゅうようなのだ」


 ――んでいること……


 つくよみさまことで、わたししんんでいることかいした。

 みぎうでかくにんするとはんとうめいっていた。


 ――これがかい

 ――たましいやつか……

 ――ほんとうんだんだな。

 ――それなら……


 わたし……いやおれはこのはなしけるけつめた。


かりましたつくよみさま、このはなしけいたします」


 おれことたいし、つくよみさまはクスクスわらってからう。


してかくまったか」

「そうことにしていただいてかまいません。それよりくわしいはなしねがますか。『そうかいとしてのちからさ』とおっしゃってましたが」

かろう。こんかいしんかいけんわれわれでもしょうたいからん」

三貴子みはしらのうずのみこでもですか?」

「あぁ。われ姉弟きょうだいぜんに、ぞうさんしんですらしょうたいからんのだ」


 ――そんなことるモノなのか?

 ――せいめいつかさどるかいぞうさんしんすららないなんて……


 そんなことかんがえているおれに、つくよみさまう。


はなしをつづけるぞ」

ねがいします」

「だからわれわれえるか、しんかいはらえるにんげんことにした。わればくだんしんかいあらわれのうせいたかいし、もしあらわれたとしてもひとたおせるにんげんればがいい。そこでわれわれかんがえたのが……」


 つくよみさまがそうわると、おれつくよみさまあいだしろくろ、そしてはいいろたましいようなモノがあらわれた。


「これらはぞうさんしんたましい欠片かけら。これらを殿でんともわれちからたいとき殿でんおくり、殿でんりんとしてたんじょうさせる。てんさいひといればれきわるし、てんさいがこのひといればしんかいはらえるだろう」


 ――たしかにくつかる。

 ――でも……


つくよみさま。、ぞうさんしんたましい欠片かけらなんて宿やどして、身体からだえいきょういのですか?」


 おれいにつくよみさまがおこたえる。


「だから殿でんせいかくにはあし身体からだひつようなのだ。ほんらいあしにんげんには、つよかいぎょするちからる。殿でん兄姉きょうだいおもしてみろ」


 ――たしかにそうだ。

 ――でもおれにはそのちからい。

 ――いやて。


つくよみさま。もしかしておれそうかいとしてのちからよわいのには、なにがいてきげんいんが?」

「それはき、ぶんたしかめるとい。さてぞうさんしんたましい欠片かけらあらたなけ、べつそんざいとするがい。ぶんれいばれるそんざいではないので、どうそんざいおなかいたらなにこるかからん」


 ――はぐらかされた……

 ――いや、つくよみさまとおりなら、あとぶんかくにんる。

 ――おれえらばれたのも、それがゆうだろう。

 ――それよりも……


つくよみさま、どれがどのかたですか」

てのとおりだ」


 おれことつくよみさまそっなくかえした。


 ――つまりくろいのがかみさま

 ――しろいのがたかさま

 ――はいいろなのがあめなかぬしさま

 ――おれかみまえけるなんて……


 おれしばらまえかんがえる。

 そして……


しろきモノはナギ、くろきモノはキョウ、なかたるモノはカイ」


 おれがそうまえけると、つくよみさまたずねてる。


まえはそれでいのだな」

「はい」


 おれがそうへんをするとナギ、キョウ、カイはおれかさなりゆうごうした。


「それではかなえてくれ。もしものときはナギ、キョウ、カイがたすけてくれるはずだ」


 つくよみさまのそのことわると、おれかいはボヤけてしきとおのいていった……



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