結婚してるのに、屋敷を出たら幸せでした。

@purannsu

第一章 生まれかわる

第1話

 もう見たくないと城を出た。


 けれど、行くてを阻む兵士が沢山居て、八ヶ月練った計画も無駄に終わるかもしれない。


 そんな時、ある人に出会った。

 その人は、身長が高く、鼻も高く、水平線のように澄んだ瞳で名は、プランス・フリンスと名乗った。


 この時、プランスを運命の人だと理解した。そして、プランスの澄んだ瞳も運命を感じたと、願った。


 ♢♢♢


 私の名は、プリンセス・ゼレーナ。

 私の家系は王族で、自由が許されない生活だったけど、ちょうど一ヶ月前にプランス・フリンスという、不思議な王子に助けられて

 無事、屋敷から脱獄できた


 今は王国から何百マイルも離れた、小さな村に住んでいる。

 

 少し前にはお祭り騒ぎになって私は心底喜んだ。

 プランスが言うには、お祭り騒ぎが企てられることはあまりないようだ。


 それでも、三日前にお祭りに参加出来たのは、本当に喜ばしかった。


「ゼレーナ様。何かお食べになりますでしょうか?」


 跪いたプランスを見ると、屋敷のことを思い出して、嫌な気分になった。

 

 屋敷ではいつも執事が黙々と仕事をしていて退屈していた。

 あの時は私が、王女に仕立てあげられていて、そこまで気分は悪くなかったけど、国民の姿を見ると公平じゃない気がして、辛くなった。

 

 プランスが怪訝に見つめてくる。その姿を見てハッとして言葉を


「うん食べる。でも問題があって・・・・・」


 発する。

 

 すると、跪き上目遣いをする、プランスは本当に美しく見惚れてしまう。

 澄んだ瞳はどこか遠い未来を見ているような気がして、安堵して眠ってしまうそうだ。


「なんともうしましょう?」


 キリッと目つきを変えて、上目遣いをやめたプランスは、まさに執事の憧れだった。でも、その姿は私にとって、反吐が出るほど嫌だった。

 理由はない。だから辛ったかった。


 でも今は幸せ。

 

 安堵の境地に居るので、もう旦那様、私を追うようなことはよしてください。


 私はすぐ後ろにある、狭い窓に向けて、国の方向に呟くように思った。


「もう。敬語はやめて普通に接してください」


 強く一言だけで込めて、言葉を放った。伝わるだろうか? と不安になったけど、たぶん伝わる。


「ふうん。かしこまりました。本当にいいのですね」


 プランスが立ち上がり、微笑んでるけど、強面な顔をして見つめてくる。そして、私も立ち上がり、普通の女の子のようなワンピースを握る。


「はい、私の望みです」


 こんな一言で、プランスはガラリと変わり、また別の人物に変わった。

 

 立ち方も全く違って、又を開いている。


 それに、瞳も水平線のように澄んでなくて、三日月のように光っていた。


 プランスの後ろに光が天井の窓から差し込んでいた。


 これのおかげで今が夕方だということがわかった。


「よし、じゃあ夕飯にしよう」


 プランスはエプロンを、異世界袋から出して羽織る。

 そのまままっすぐ行き、木で造られたキッチンで料理を始めた。

 屋敷に居た時は勝手に料理が来るだけだから、料理を作っているとことなんて見たことがなかったから、心が高鳴る。


「今日は何を作るの?」


 私が走って、プランスの元へ行って着く。

 そして、横から今プランスが料理してくれる、何も乗ってないフライパンを見た。


 プランスは頬を赤くしないで私の頭に肘を乗せて、肘掛けのように、私の頭を扱った。


「カレー。プリンセス好きだろ?」


 また、プランスは異世界袋から、カレーの材料をを取り出してそのまま鍋の中の放り込んだ。


「うん。やっぱりプリンセスって名前嫌い」


 思わず声が出て、自分でも驚く。けれど、今までずっと思ってきたことだから、このまま言い続けたほうがいい。


「なんで?」


 プランスが振り返って見つめてくる。


 この三日月の瞳が頬に触れてきて、涙が流れてきそうだった。


「屋敷の頃の名前だから、王女みたいに付けられたから」


 こんな言葉じゃあ表せないほどこの名前が嫌なのに、簡単に説明してしまう。これが私のくせになってきて、辛い。

 深い思いを軽く丸めるなんて信じられない。

 重く語りたい、もっともっと私がどれだけ辛かったか語りたい・・・・・・。


 そう思っていると、


「じゃあ次の名前は、ミア・アネリアなんてどう?」


 プランスが思いがけない言葉を発した。けれど、それが本当に可能なのだろうか? 本当にできるのだろうか?

 と不安に感じた。


「えっすごくいい名前。でも・・・・・・名前を変えることなんて、できるの?」


 恐れた声に、自分でも嫌気が差して呆れたように瞼を閉じた。

 この時見えたのは、暗闇に大きな文字が浮かんできた。

 書いてある文字は


【ミア・アネリア】


 だった。


「うん、僕の魔力だったらね」


 そんな無駄な魔力を、プランスが持っているなんて信じられなかった。でも、今ようやく使われて高揚が高まった。


「どうやってやるの?」


 唐突的に質問したけど、プランスは顔色一つ変えないで答えてくれた。


「魔力を目と指に集中させて、君の頭の上にある文字を書き換えればいいだけさ。これだけでみんなの記憶から君はミア・アネリアとして見られる」

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