山姥(やまんば)
野松 彦秋
第1章 仲良し3人組と委員長
第1話 1.暑い夏と、宿泊研修、そして怖い話
テレビをつける度に、ニュース番組のアナウンサーの人達が暑いから熱中症に気を付けてと言っている。
佐上哲也は、気分が落ち込んでいた。
今日は、小学校の一学期の終了日である。
心なしか、ランドセルが重い。
終了式の日には、授業はなく、教科書やノートは入っていない。
つまり、常識的には、何時もより重いワケが無い、重く感じる理由は、渡された一学期の通知表である。
成績は、国語、算数が5段階評価で4である、決して悪くは無いと思うが、国語と算数はずっと得意で、4年生の頃からずっと5を取っていたから、ものすごく敗北感を感じる。
(母さんに見られたら、きっと塾に行かされる、塾に行くのは仕方が無い、ただ、親友であるカッチとナオケンと遊べなくなるぐらい、勉強させられたらどうしよう・・・)
『ああ、最悪だ』
『テッカ、どうしたんだ、何が最悪なんだ?』と、横でナオケン(本名
(くッ、聞こえたか、運動神経抜群のカッチは、
『そうだぜ、テッカ、明日から夏休み、サッキから一人元気無いと思ったら、
『オレたち、親友だろ、
二人の自分を見る目に耐えられず、『国語と、算数の成績が落ちたんだ・・』と哲也は罪を告白する様に二人に言った。
『落ちた?ふざけるな!馬鹿野郎、サッキ見たけど、お前両方とも4だったろ』とカッチが悲鳴を上げるように言う。
『4取って、落ち込まれたら、俺はどうなる、国語と算数を足して4だぞ!』とナオケンも怒る様に続く。
『テッカ、止め止め、明日から夏休み、1週間後には楽しみにしている宿泊研修だぞ、そんな事で悩む時間がもったいない』と、カッチが励ますのも諦めたのか、話題を変える。
『宿泊研修で思い出した、お前ら、知ってるか?俺らが宿泊研修に行く、
ナオケンが、何処で聞いてきたのか、唐突にそんな話をしてきた。
哲也達の通う、勝平小学校では毎年夏休みに、5年生は2泊3日の宿泊研修に行くのが恒例である。
6年生で行く、修学旅行の予行練習なのか、目的は分からないが、5年生の哲也達にとって、生まれて初めて親元を離れて、家と別の場所に泊まる経験である。
旅行とは違い、学校のクラスメートと経験する初めての経験である。
3人は、5年生で同じクラスになれた日、一学期の初日からそれを知り、ワクワクしながらとても楽しみにしていたのであった。
『何でも、風越鬼山で宿泊研修が行われるのは10年振りらしい・・』
『10年前の宿泊研修で、俺たちの先輩の一人が、行方不明になって、テレビのニュースでも、取り上げられたらしいぜ、結局、その先輩は戻って来なかったんだって』
『ナオケン、ホントか、そんな怖い所に俺たち、行くのかよ?』
カッチが、笑いながら、ナオケンに、嘘だろと言いたそうに聞き直す。
『三枚の札の昔話って、若い子供のお坊さんが、ヤマンバという鬼から、逃げる話だよな』
『もしかして、その俺たちの先輩は、ヤマンバに食べられちゃったとか・・?ウワァ、怖え!』
哲也が、ふざけながらも、一つの可能性として、悪ノリをして、二人に伝える。
『お前、怖い事言うなよ、オレんち、お寺だろ、幽霊とか、鬼とか、たまにそういう問題で相談しに来る人もいるんだぞ!』
『マジ、出たら逃げるしかないだろう』
カッチは、そう言うと、知ってるお経を唱える。
『10年前の、行方不明事件か、面白そうだな、明日から丁度夏休みだし、宿泊研修までにちょっと皆で調べてみようぜ!』
哲也は、カッチとナオケンに、簡単な気持ちで提案をしたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます