第二章 アメリカ・本土

第6話 アメリカ西海岸

 夕方バンフを発ったグレイハウンドバスは、途中何度も停車しながら翌朝バンクーバーに到着した。これから予想されるハードな旅の所為か、殆ど眠れなかった。グレイハウンドバス利用の2か月の旅の始まりである。


 バンクーバーでのアメリパスのチェックの時、不思議な事が有った。日本で購入したのは30日間有効のを2枚だった。そのうちの1枚を前日から使い始めている。すると、有効期限は前日6月7日から7月6日までのはずである。ところが6月8日から7月7日になっている。何だかよく解らねーけど、まあ得したのであるから深く考えない事にしよう。何しろここはカナダである。何でも大らかに参ろうぞ。

 恐らく日本の習慣では1か月は30日だが、北米では31日であろう。昨夕のバンフ発の夜行の分はウォーミングアップにしてくれたのではないだろうか?


 バンクーバーで乗り換えた後アメリカへの入国審査も難なく通過し、アメリカ最初の都市シアトルへ到着した。

 途中から乗車してきたアメリカ人の娘さんが魅力的だったので、厚かましいとも思ったが旅の恥は何とやら…で、声掛けさせてもらって写真を一枚撮らしてもらえないか尋ねてみた。最初驚いたようだったが許可がもらえた。”ダイアナ”という名のワシントン大学の学生さんである。帰国後、旅日記を寄稿する可能性があったので、その時用の候補の一枚である。(結局、投稿はしなかったが。)


 シアトルのYMCAは港の見える高台にあり清潔でいい感じだ。夕食はシーフードを買ってきて、夕暮れの港を見ながら外にあるテラスで食べた。

 翌日はポートランドに16時過ぎに到着した。早速、駅の旅行案内所に載っていた安いホテルに行ってみる。建物は古いが中は清潔のようだ。

 でもこの街はもう一つ好きになれない。ダウンタウンを歩いてみると、イカれた人はいるしサイケデリックな若者が多い。ただ、ダウンタウンから離れると静かで清潔になってくる。そこに建つ図書館やその周囲には、大学のキャンパスにいるような錯覚さえ感じる。


 翌朝、少し早めに起きた。

 今日は失敗の巻。オレゴン海岸を見たいと日本を出発する前から思っていた。オレゴン海岸を通るものとばかり思いこんで早起きして乗ったバスは草原の中をひたすら走っている。アレっ? 気がついた時は既に遅しで、海岸線を通るバスの時刻表が手元になく諦めてしまった。(今ならスマホが使えるのだが。)


 草原バスはいろんな町に停車しながら快調に走る。Rice Hill という町を過ぎた辺りの丘は、TVドラマ ”大草原の小さな家” の冒頭シーンに似た感じだ。また、バンフに似ている町も見られたが庭が広く樹木が多く、バンフよりも清潔感がある。


 Redding という町のバスデポに到着した。時間があるようなので少し周辺を歩いてみる。

 バスデポ周辺以外は、樹木の多い緑溢れる町である。が、人の姿が見当たらない。店は軒並み閉まっている。営業時間を見てみると、殆ど17時か18時迄である。ゴーストタウンみたいでどうにも気味が悪い。


 町をぶらついていると酔っ払いのおじさんに声を掛けられたので、これ幸いとその事を尋ねてみた。おじさんの話では、

『都会と違ってコミュニティーに欠けている。それぞれ孤立していて、どの店も早く閉店する』

との事だった。

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