第36話 王城潜入

オーレンが増税反対運動をしていることは俺の耳にも届いている。

アブソルティア帝国民の人気がオーレンに集中している。

国王の人気は地に落ちているといっても過言ではない。

今こそ、国王を暗殺するときであろう。


俺は身支度をし、学生寮をあとにした。


---


王都へ着いたのは夜だ。

暗殺といえば夜襲だろう。

王が寝ている隙に、シャドウで侵入してサクッと首を取って終わりだ。

いや、サクッと終わらせては味気ない、俺の母を見殺しにした罰として、拷問をしてやっても良いか。

と、俺は簡単な仕事だと思い少し楽観視していた。


「メタモルフォーゼ・カゲツカイ!!!」


俺はカゲツカイに変身し、国王の城に潜入した。


「国王はどこだ?」


俺は国王の寝室を探す。

寝室といえば、たいてい城の上層のほうだろう。

俺はあたりをつけて探すと、ビンゴ、やはりそうだ。


その部屋には、キングサイズのベッドがあった。

こんなベッド、国王以外使わないさ。

しかし、夜中というのにだれもいないではないか。


俺はこの城内に関して、国王の動向に関して何の情報も得ていない。

だから、国王が今どこにいるのかさっぱり見当がつかなかった。


「困ったな。」


俺は、そこらにいた見張りの兵士に聞くことにした。

もちろん正体がバレるから普通には聞かない。


「メタモルフォーゼ・サキュバス!!!」


俺はサキュバスに変身し、兵士の男を誘惑した。


「お兄さん?

 ちょっとわたしといいことしない?」


兵士が俺に気付く。


「え? 何だい? いいことって、でへへへ。」


鼻の下を伸ばし、俺にすり寄ってくる。

サキュバスで男の相手をするのは初めてだが、俺にそういう趣味はない。

とっとと終わらせよう。


「聞きたいことがあるんだけど、教えてくれたら、いいことして・あ・げ・る♡」


「でゅふふふ、いいよ。

 何でも聞きな?」


「王様っていまどこにいるの?」


「ああ、そんなことかい?

 王様はね、いま大浴場で入浴中だよ。

 この階の下の大広間を抜けたところさ。

 でゅふふふふふ。」


「ありがと♡」


俺は礼を言うと、サキュバスの武術でその兵士の首を飛ばす。


「武術・魅惑の爪撃!!!」


俺はカゲツカイの能力で死体を影に収納し、兵士に教わった通り、大浴場へと向かった。


「ここが大浴場だな。」


大浴場の扉は厚い木製で、装飾が施された立派なものだった。

その外側から、心地よい香りが漂ってくる。

湿気を含んだ香りの中に、花のような甘い香りが混じり、鼻孔をくすぐる。

扉越しにかすかに響く、男の笑い声。

王の声だろうか。


俺はカゲツカイの能力を使って扉の隙間から侵入した。

すると、なんともけしからん光景が広がる。


王が侍女たちとお湯を掛け合ったり軽く水しぶきを立てて楽しげに遊んでいるではないか。

国民のことは考えずに増税し、自身は侍女たちとっきゃっきゃうふふな生活を満喫しているとは、何たる傲慢か!

俺は怒りに震えた。

そして、俺が武術・影切断を使い、国王をその場で切り捨てようとした瞬間、大浴場の扉が開いた。


バンっ!!!


「くせものーーーーー!!!!」


メタモルフォーゼ・カゲツカイによって俺の存在はバレないはず!

なぜバレた!?


「そこに隠れておるのはわかっているぞ、魔族め!

 わしの目はごまかせんぞ!

 その殺気、このガルガッソには見えるわ!!!」


なるほど、殺気を勘づくとはこいつ、なかなか強いな。

ん? 待てよ、ガルガッソという名前、どこかで聞いたことがある。

そうだ! クリスタルの護衛ガルガリオンの父親だ!

たしか剣聖だったな。

なぜ剣聖がこんな国王の大浴場にいるんだ??

俺は質問を投げかける。


「な、なぜ剣聖がここにいる!」


「ふん、国王が近く暗殺されるのではないかと思っておったのだ。」


国王の暗殺計画がバレた?

いや、オーレンが反逆すると思っての対策か?

どちらにせよ、剣聖を相手にせねばなるまい。

くそっ、丸腰の国王を殺すだけの簡単な仕事のはずが、こんな大仕事になってしまうとは!


「ひっひいいいい。

 わしは退散させてもらうぞ!!!」


国王が逃げてしまう!

しかし、俺は剣聖を相手せねばならない。

やむを得ん、国王は後回しだ。


国王は裸のまま外へ逃げていった。


「剣聖ガルガッソ、相手として不足なし!

 いざ勝負!」


俺は戦いの咆哮をあげた。



<<作者あとがき>>


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