第11話
宮廷ではこの噂は歓迎されていた。
ただでさえ人気のないトンボの王子が、自分から家出して自殺を図りその上誘拐までされたなどとは、とてもみっともなくて言えたものではなかった。
税金を使って捜索が行われたことも批判材料になる。初めから誘拐されたとなれば、世間の同情を買える。好都合だ。
王子は終始監視付の部屋にいることを強いられようになった。しかし王子の心にはほんの少し変化が現れていた。いままでは悲観的にしか物が考えられなかったが、少しだけだが人の愛情や苦しみを知ることとなる。王子がトンボ以外に心を許したのは
ルシェルだけだった。何の罪もないのに好奇の目にされされ命まで奪われそうになったルシェル。秘密をすぐに打ち明けてくれた時、あんたは優しい人だね。見た時すぐ分かったと「言ってくれた。
王子は意を決して王に面会を申し出た。
「無事で何よりだったね、ルアー」
「有難うございます。王様。少し聞いていただきたいことがあります。」
王子は続けた。
「僕は本当は死のうと思って宮廷を抜け出したのです。湖について水に入ったところを小屋のお爺さんに助けられました。そこにはアルピノの少女が居て、その子を攫った男たちについでに攫われたのです。男たちは初めから僕を狙った訳ではないのです。不都合かもしれませんがそれが真実なのでちゃんと国民に説明したいのです。そして、みんなが期待しているように王子の座は薔薇の王子に譲りたい。今まで、大事に育てていただいたのに申し訳ないですが、僕にはその分が無いです。・・ただ一つだけお願いがあります。」
王様は息を飲んで聞いていた
「アルピノを差別してはいけない法律を作って下さい。アルピノに限らず、同じ人間が普通と違うと言って危害を加えることを法律で禁止してください。彼らが安心して堂々と暮らせる社会を作りたいのです」
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