タケルとボクの冒険譚 ~ダンジョンなんて怖くない!!~

月杜円香

第1話  アベルとタケル

「わ~!!わ~!!ボクあれ嫌い!!早く地上に戻りたいよ~~」


 アベルの弟のタケルは、大人の身長ほどもある白いミミズを自分の身長に合わぬバスターソードで切りつけて半分にした。

 そして、泣いてるアベルにポイと投げてやる。

驚いたのは、突然投げられたアベルの方だ。


「馬鹿ぁ!! タケルゥ~~!! お兄ちゃんに何てことするんだよ!!」


 タケルと呼ばれた男の子は、盛大な溜息をついて言った。


「今はぼくが、アベル・エル・ロイルだぜ。タケル・ラミネスはお前の方だよ」


「だから何時いつから、そうなったんだよ~~!?」


「お前の魔法修行が10年もかかってるのが悪いんじゃんか!!

次期当主が10年も森に不在なんて知られたら、神殿だって、口出ししてくるぜ。

それで、仕方なく三年前に母上と冒険から帰ったぼくを、取り合えずの長男にしたのさ」


「パパが何も言わないとは思えないけど~!」


「母上が黙らせたよ、それに父上は一年前から旅に出てるよ。昔世話になった人と出会ったところを探してみたいんだって」


 アベルは、この間も巨大ミミズが、出て来ないか落ち着かない。

それを見てタケルは、クスリと笑った。


「大丈夫だよ、さっきのお前の泣き声衝動波がすごくて、近くの魔物はより地下に潜ったんじゃないのかな~」


「何だよ~~馬鹿にして!!お前なんか嫌いだ!!」


アベルは、物凄い音量で泣き始めた。


タケルは、ムッとして抜き身のバスターソードを兄の前の地面に突き刺すと言い放った。


「とにかく、『このダンジョンを攻略して最下層の魔王を倒してくるまで帰って来るな』が、僕らに与えられたクエストなんだ!!泣いてる暇は無いんだぞ!」


「なんか、タケルがすごく強そうに見える……」


アベルは、弟のことを羨望の眼差しで見た。

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