没落元貴族の幼馴染は変わらない

少し復活したエアコン

第1話

 この町は支配されていた。


 高い税金と、貴族家族によるイジメが酷かった。


 その中で特に俺はその娘と同世代だった為いじめが酷かった。


 物は盗まれて、暇があれば暴力を振るわれる。

 だが、逆らうことなんて許されなかった。



 「辞めてよ。これは大切な、大切な」


「こんな汚い物をいつまでも持ってるから、庶民は汚いのよ」


「それは、お父さんの形見で、やめて!!やめて」


取り巻きが俺からの形見を奪った。


「早く捨ててよ汚ーい、あー汚いわよね。貴方達」


「そ、そうです。汚いし、臭いです!」


「春様の視界に入れるだけでも痴がましいです。」


「そうよね。そうよね!」


そして、川に捨てられてしまった。


「ああ、あ、あ」


「あー、スッキリした。あーやっぱり誇り高き私はこうやって定期的にゴミを処理しないとね」


これは俺の記憶に残る一番辛い過去だった。


 それからも虐めは続いたが、この時ほど辛いと思ったことはない。


_______


だが、そんなある日急に大きな音が鳴り目を醒めた。


 「・・・嘘だろう。」


燃えていた。燃やされていた。


 あの貴族の家が、春の家が・・・


 そして、遠くにいるのに聞こえてくる。


「燃やせ!!もっと、燃やせ!」「俺たちはこの家族に散々苦しめられて来たんだ!これくらい!当然だ!」「痛みを知れ!!」


声が聞こえてくる。怒りが憎悪の声が


「私はどれだけ、媚を売ったと思ってるの!!」


「そうよ!!私だって!」「俺だって!!」


その声の中には、取り巻きだったやつらの声も聞こえてくる。


 「死ね!」「燃えろ!!」「消えろ!!死ね!」


 

 「・・・」


 力が抜けた。もうただ怖かった。


 そして、少し2分ほど経った。(優からするとすごく長い2分の思考が停止した時間だった。)


「・・・だめだよ」


確かに、あの家族は嫌な人達だったし、恨まれることは仕方ないと思う。だけど、殺すのはやり過ぎる。それに、あの貴族達だって、他の貴族よりはまだ人を殺してないだけ、マシだよ


 「・・・」

そして、気がつくと俺はお母さんに土下座して頼んでいた。


__________


それから2年(優は16さい)


ハル「お母様、おはようございます」


お母さん「おはよう、ハルちゃん。こっちで髪で溶かしてあげるね。」


ハル「はーい、お願いしますね」


すっかり、ハルはこの家に馴染んでお母さんとの関係も良好だった。


 ユウ「ハル、おはよう」


 ハル「(ップイ)」


だが、一向に俺とは上手くやれてない。


前のようにいじめ・・・も別になくなった訳ではない。隠れて嫌がらせしてくるし、でも俺達は今は家族で兄妹だから仲良くしようと思うんだけど・・・そうもいかないらしい。


 ユウ「・・・はぁ、お母さん。とりあえず先にご飯食べてるね」


 お母さん「はぁーい」


_____


あの事件の時にお母さんに土下座して、ハル達を救出に行った。


 残念ながら、ハルの両親を助けることは出来なかった。ハルは奴隷にされる寸前で、手を握って逃げた。 

 俺とお母さん、そしてハルと一緒にこの村から出ることにした。


 お金もギリギリだった。だけど、こうして新しい村に来れた。


 お母さん「ハル、今日はこの針の作業をお願いね!」


ハル「はぁーい!!」


あれから、ハルはすっかりお母さんには言うことを聞くようになった。


 ハル「あんたは今日は何もしないの」

 

 ユウ「・・・っ」


俺はハルと違って、織物とか細かい作業が苦手だ。


 ユウ「俺は、その」


前の村ではしっかりと狩りをして稼いでいた。


 お父さんが亡くなった分も頑張った。だけどこの村は狩る先もないし・・・


悔しい。あの時はハルに対してお金があって何も働かなくて羨ましいと思っていたけど・・・今は俺が無職だ。


どうにかしないと・・・


________


「仕事探して来ます。」


お母さん「・・・がんばってね」


「うん」


 お母さんは俺の味方だ。別にお母さんはこのまま仕事をしなくてもいいと言ってくれるし、


 でも、しないと!!


 ハル「・・・あ」


_________

 

 お母さん「ハル・・・良いのこのままで?」


 ハル「・・・よくない」


お母さん「ハル。聞いたよ。この前は新しい子と仲良くなったって」


ハル「そ、そんな!!」


 お母さん「優はハルがよーく知っての通り優しいから、人助けをして知り合ったんだって」


ハル「・・・っ」

ハルは手を握り震えている。


 お母さん「ハル、過去にしたことは確かに酷かったけど、もう優は気にしてないで仲良くしようと頑張ってるのよ・・・」


ハル「わかってる、わかってるけど」


お母さん「そうね。ハルも昔と違う、過去を凄く反省しているし、今は人に優しく出来るし立派な私な娘でもあるわ。」


ハル「・・・お母さん」


お母さん「でもね、どんなにハルちゃんが優に対して思ってあげても、時間があっという間に過ぎて優は巣立っちゃうかも知れないし、後悔の辛さも、一番、ハルが知ってるでしょ」


ハル「うん、うん」


ハルは泣く。過去の後悔と義母からの優しさと・・・そして、好きな人が離れてしまう恐怖と


___


 ハル視点 


 ・・・お母さんの言う通りだよ。


 作業も優が家にいる時と居ない時じゃいつも違う。


 不安で効率が落ちてしまっている。


 「・・・優」


 私はまた、あんなことを言ってしまった。


 働きになんか出ないで欲しくないし、


 一生私のこの家にいて欲しいと思ってるのに


 でも、過去の出来事をせめて欲しいと優に対して、もっと自分に気持ちをぶつけて欲しいと思ってしまう・・・分かってるのにそれだって、優はもうそんなことより別なことを考えてるって、復讐なんかより、今を・・・でも、私は、私がしたことは到底許されることじゃない・・・


 本当は仕事だって、前に命令したせいで肩が壊れて動かせないせい、この仕事だって私が奪ったようなものなのに・・・


「・・・責めてよ。もっと、私を責めてよ、・・・もっと私を見てよ」


分かってるのに、それだって自分が見ないでと態度を取るから、自業自得なのに・・・



「・・・早く帰って来て、今すぐに・・・」


___________


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