第5話 弾けた

時は1995年4月

平成7年というところである


俗に言うバブル経済が崩壊した

1990年代初頭

ジュリアナ東京たる狂乱の喜舞が

1994年8月31日を持ってその扇子を置いた


一つの時代が終わった


ディスコたる男女の交場は形を変えるが

存在は留まった


個人が好みの音を選定する


ヒップホップ

レゲェ

ユーロビート

パラパラ


ジャンルが台頭する


・・・・


ハミルENにバブルという女がいる

彼女の過去の話である


冷和6年にあたり

齢50


29年前の話

21歳の小娘だった春の日


バブルには彼氏がいた

キュンという男だ

1993年の夏の日であった


キュンはバブルをナンパした

バブルは短大生だった

保育士を志していた彼女は授業を終え

帰路の途中にあった


肩からセーターを羽織った

当時一流のファッションで決めた

キュンという男


若く好奇心の強いニジュウイチのバブルは

赤いセーターについて行った


・・・・


交際から2年が経った


短期大学の課程を修了し

無事にある幼稚園の保育士になったバブル

平成の保母さんである


彼女は子供が好きだった

親御との関係に頭を悩ませていた


若く経験値の浅い保母に

反論する勇気と理論はなく、

彼女のストレスは溜まる一方だった


DISCO


バブルの発散の場だった

その空間では嫌なことは全て

脳外へ放り出された


至極当当然

当が有り余るほど当然であった

発散という命題において

子の対義は・男・である

"女を中心とすれば"


右手に子供

左手に夫


婚姻してもなお

男と子は対義、左右におるわ


・・・・


夜の空間である

男から軟派をされたバブル


彼氏がいたが

日々のフラストレーションは

バブルの秩序を弾くのに十分だった


男の名は、

ピュミと言った


紫のスーツに

右手はポケット

左手にはセカンドバッグ


平成7年の頃合いでは

些か時代に取り残された感はあったが

彼もあの時代を忘却しきれなかったのである


バブルは80年代の絶頂期は中高生であり

少々乗り遅れてたから、

その男の出立ちに

一種の憧れめいたものを抱いていた


2人は弾けた


彼氏キュンの存在が脳裏をよぎる隙もないほどに


バブルは弾けていた

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