第80話 錆びれ行く英華

「くそっ!」


ドンッ!と目の前の机に拳を叩きつけるディスト。


アベルを追い出し、ビートも追い出した。


自分に従う者だけを血盟クランに残して運営していく。


2人を追い出してから暫くは血盟クラン運営も上手く行ってた。


だが。ある時を境に、全てが上手く行かなくなった



 * * *



ビートを追い出してから、血盟クランの人選はディストの独断となった。


ディストは、実戦部隊の人間以外の重要性を理解していなかった。


まず最初にディストがした行動は。


各部隊を受けもつ10人いた、物資管理担当の人材を2人にまで削った。


管理物資も、その都度に補給するのではなく。


各パーティーメンバー達が良く使うアイテムを2~3パターン見繕い。それを或る程度の数を予備在庫として管理していた。


回復ポーション。毒消しポーション。麻痺回復ポーション。魔力回復ポーション。携帯食料。野営用のテントに寝具。調理器具に調味料。腰ベルトに巻き付ける為のポーションの入れ物の管理。


これらをクエスト等で、持ち出していく度に補給もしないといけないし。


使った入れ物を洗って乾かして奇麗にしておくのも、物資管理担当の仕事に入っているのだ。


それを10人から2人にまで削られたのだ。


最初こそは、予備在庫が在ったので何とか回していたのだが。


当然、予備在庫が尽きれば手が回らなく無くなって来る。


そうなると、クエストに向かっていくメンバーから当然のように苦情が来る。


人は減らされる。苦情は増える。仕事量は増える。人を増やせと言っても聞く耳持たず。


こんな状況で仕事を続けて行きたいかと問われれば。


余程の仕事大好き中毒者か、洗脳状態の社畜。もしくは、悔やむにやまれない事情で他の所では働くのが難しい者。


そして、この状況は経理部も同じで。


4人いた経理担当が1に為り。武器防具の修理をする者たちも減らされた。


それにともない。実戦部隊の者たちにも影響は出始めるのは当然の事で。


まともに修理の出来ていない武器防具。足りないアイテム。


そんな状況の中で。1人、また1人と抜けていき。


40人以上はいた血盟クランメンバーも、今ではディストを入れて7人しか残っておらず。


武器防具の管理も、補助アイテムの管理も疎かになった血盟クラン英華の剣はクエストの失敗も続くようになり。


大陸商業組合プラント仲間たちからは【衰退の剣】と不名誉な呼び方をされていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る