第55話 進化する非常識

「見えてきました。」


遠くに見える、教会と製作場ファクトリーをアベルが指さして見せる。


「このまま向かっても大丈夫なのか?」


ディハルトが聞く。


「ルナとエリスが、色々とやらかしているので。


多分問題ないです。」


アベルの返事で、逆に何をやらかしているのか気に為るディハルト。


だが、実際問題。 周囲の知己の人たちからしてみれば。


「あ~。また1号嫁ルナと、2号嫁エリスが、何かやらかしたなあ~。」


と言う認識なのだから仕方がない。


やらかし回数が多すぎて、ご近所さんの感覚も大概おかしくなっているのだ。


何で、やらかしてるのに、苦情が殺到しないのか。


ルナとエリスが、錬金で作った物を、ご近所さんに配っているのと。


シグルートの街でも、評価を得ているからだ。


腰痛薬、湿布薬、回復薬、くわすきに鎌。


鍛冶師のアイザック達に卸している鉄もそうだが。


クロス系統も評判が良い。


薬類は良く効くし。


くわすきかまも、他所で買った物より使いやすい。


クロスも、破れにくくて、汚れにくいと大好評。


そりゃそうだろう。


何せ全てに、付与効力が付いているのだから!


薬類には、効果上昇(小)。


くわすきかまには。


腰痛軽減(小)、腕力上昇(微)、体力スタミナ回復(微)。


クロスには、汚れ軽減(小)、丈夫さ上昇(小)。


もしも、こんなのを鑑定持ちに見られた日には。


見た人も、自分の目を疑って。思わず、3回くらいは見直すだろう。


こんなのが、他の通常商品よりも、ちょっと・・・・高い価格で出回っているのだから、1号ルナ2号エリスよ。


お前ら商売舐めてるのか!?って言いたくなるレベルだ。


流石の鑑定持ち者も、まさか市場に出回っている農具や布に、付与効果が付いてるなどとは思わずに、鑑定する気に為っていないのが幸いだった。


それを知らずに、レイジが先に動いたのだから。


レイジよ!ナイス! と言わざるを得ない。


製作場ファクトリーの玄関前には、既にルナとエリスと妖精たちが待機している。


妖精たちが、アベルの気配を察知して、ルナ達に知らせたのだ。


そして、アベル達が、製作場ファクトリーの前に着陸する。


「アベル!」


ルナが、勢いよくアベルの胸の中に飛び込んでいく。


「ただいま。」


「おかえりっ!」

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