第31話 参りました

「済まないが、茶の御代わりをくれないか。」


「あ、はい。」


アベルが、新しい茶をカップに注ぐ。


「ハッキリ言って置く。 貴族を甘く見るな。」


鋭い眼光で睨まれて、思わず身体が委縮する3人。


「冤罪、人質、拉致監禁なんて当たり前だ。


最悪薬漬けにして、錬金だけをさせるって事も有りうる。


なんせ、貴族に逆らうと言う事は、国に弓引く事になるんだからな。


お前さん達が、どれくらい強いかは知らないが。


万の兵士。ましてや、国を相手に勝てると思うか?」


レイジの言葉に、首を横に振る3人。


「脅すようなこと言って悪かった。スマン。」


そう言って、軽く頭を下げるレイジ。


これには、3人とも驚く。


貴族が、平民に頭を下げる。


普通なら、ありえない行動をレイジはしたのだ。


「先も言ったが。俺は貴族としての拘りは緩い方だ。


他の貴族も同じだと思うなよ。」


頷く3人。


「さて。話を戻すが。 先も言ったように、俺は辺境伯で爵位もそれなりにある。


しかも、辺境伯ってのは、自身の采配で、ある程度の兵力を持つ事も許されている。


理由としては、魔物モンスターの駆除と、ダンジョンの管理。


それと、魔国に近いと言う事だ。」



【魔国】


それは、北方大陸を指し示す言葉で在り。


北方大陸には、魔族と呼ばれる異形の者たちが住んでいる。


魔族は頭に角がある。


亜人や獣人。人族とは違い。頭部の何処かに角が生えているのが魔族。



「でだ。 今の、お前たちの状況は非常に宜しくない。


なんで?って顔してるから教えるが。


今現在、お前たちには市民権が無い。


更に、貴族と言う後ろ盾も無い。


そこに加えて、国宝級の武器防具を作れるかも知れないときたもんだ。


そんな、超優秀な優良物件を知ったら。貴族どもが黙っていると思うか?


思わないだろう?」


レイジの言葉に、3人が頷いて返す。


「そこで、俺の出番だ。


貴族で、高位の爵位持ち。


更には、辺境伯で魔国への牽制もしなけりゃならん。


イコール。武装の強化も必要と為る。」


「辺境伯の配下に入れと。」


「形式上だけな。


お前達みたいな優秀な人材を、他のバカ貴族共に持って行かれるくらいなら。


ましてや、他の国や、大陸に渡られる方が損失だ。


それなら、目の届く範囲で、有意義に動いてくれた方が遥かにマシだ。


これ、本心な。」


言い切ったとばかりに、カップに入った茶を喉に流し込むレイジ。


「ふうぅぅぅ。」


大きく息を吐きだすレイジ。


どうしたものかと。思案にふける3人。


「言い忘れていたが。 お前たちにも利点はあるぞ。」


レイジの言葉に、どんな?と言う表情を向ける3人。


「手に入れにくい素材・・の融通を効かせられるぞ。」


ニヤリ。と悪い笑みを浮かべて言うレイジ。


ヤられたっ!と思った時には。 もう遅い。


ルナとエリスの目がアベルに訴えかけていた。

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