第83話:一年以上ぶりにアーシャと再会する

 それから程なくして。


「着いたよお兄ちゃん! ここが私達の住んでる孤児院だよ!」

「おぉ、ここが王都の孤児院かぁ……」


 カレンの道案内によって俺は王都にある孤児院の前にやって来た。カレンが言ってたから何となく予想はしていたけどボロボロな建物だった。


 そして孤児院の敷地は結構広いんだけど、でも地面には至る所に雑草が生えてしまっている。おそらく地面の手入れをする時間があまり取れてないんだろうな。


 そんなボロボロな建物と雑草で荒れ放題な地面の様子が相まって、何だかとてもみすぼらしい孤児院に見えてしまった。


(この建物のボロボロさや地面の手入れも中々出来ていない様子を見るに……色々と経営面で大変なんだろうなぁ)


「……あっ! カ、カレン! あ、あぁ良かった……やっと見つかった……!」

「え? あっ! アーシャお姉ちゃんだ!」

「……ん?」


 俺はじっくりと孤児院の周りを観察していってると、唐突に後ろから大きな声が聞こえてきた。


 それは女性の声だった。そして何だか俺はその声にとても聞き覚えがある気がした。というかまさか……。


(……ア、アーシャお姉ちゃん? そ、その名前ってまさか……!?)


 俺はカレンが呼んだ“その名前”を聞いて内心まさか……と思いながらも、その声が聞こえた方に顔を向けていった。すると……。


「え……え? って、えっ!? ア、アーシャじゃないか!!」

「え……って、えぇっ!? セ、セラス君!? ど、どうしてここに!?」


 すると俺の後ろに立っていた女性はなんと……俺の最推しキャラであるアーシャ・グレイスなのであった。


 アーシャとは一年以上ぶりに再会した訳だけど、今日のアーシャもトレードマークであるシスター服を身に着けとても清楚感のある美しい風貌をしていた。やっぱりアーシャはとても綺麗な女の子だよなぁ。


(って、あれ? でも何だかアーシャ……ちょっとだけ顔色が悪いような……?)


 俺はアーシャの顔を見ながらそんな事を思った。目の下にクマが出来てるし、もしかしたら最近はあんまり眠れてないのかもしれないな……。


(あ、だからカレンは香り袋をアーシャのために作ろうって思ったのか?)


 なるほど。カレンがお姉ちゃんのためにって言ってたのはアーシャの事だったんだな。そりゃあこんだけ疲れてる顔をしてたらカレンも香り袋を作ってあげたいって思うに決まってるよな。


「え、えっと、セラス君がどうしてここにいるのかわからないのだけど……で、でもその前に……こら、カレン! 今まで何処に行ってたのよ! カレンが急にいなくなって皆で心配したのよ!」

「え……あ……そ、その……ご、ごめんなさい、お姉ちゃん……。ちょ、ちょっとお兄ちゃんと一緒に森の中にいたというか……」

「森の中ですって? そ、それって……えっ? だ、だって、森の中ってモンスターがいるはずよね? カ、カレン……森の中に入ったって……そ、それ、本当に言ってるの……?」

「あぁ、本当だよ。森林の中でカレンちゃんがモンスターに襲われそうになってた所を俺が助けたんだ。それでカレンちゃんを助けたついでに孤児院まで送り届けたというわけさ」

「え……って、えぇえええっ!? カレンはモンスターに襲われてたの!? い、一体何をしてるのよカレン!? 森の中は危ないっていつも言ってたのに……ぐ、ぐすっ……そ、それなのに……それなのにどうして勝手にそんな所に一人で行ったのよ!?」

「あ……う……ご、ごめんなさい……ア、アーシャお姉ちゃん……ぐす……うぅ……」


 その話を聞いてアーシャはすぐに怒り出していった。そしてそんな怒った表情のアーシャを見てカレンは涙を溢しながらすぐに謝っていった。


 それと怒っているアーシャの目もどんどんと赤くなっていて涙が出そうになってしまっていた。その表情からアーシャはカレンの事を本当にとても心配してたというのがヒシヒシと伝わってくる。


 そして本気で心配してたからこそ、アーシャは本気でカレンの事を叱っているんだ。もちろんその気持ちは十分に理解出来る。


(でもここは……カレンちゃんに助け舟を出してあげるべきだろうな)


 俺にとってアーシャもカレンも凄く大好きなキャラだから、二人には仲違いなんてして欲しくない。だから俺はカレンが森に入ってしまった理由をちゃんとアーシャに伝えていく事にした。


「アーシャが怒る気持ちは十分に理解出来るよ。でも出来ればカレンちゃんの事をあまり怒らないであげてくれないかな。カレンちゃんはアーシャのためを思って行動したんだよ」

「え、セ、セラス君? わ、私のためって……それは一体どういう事なの?」

「これはカレンちゃんから聞いたんだけどさ、アーシャはここの所ずっと仕事が忙しかったんでしょ? それでカレンちゃんは寝不足で疲れてるアーシャのために香り袋を作りたくて……それでその材料となる薬草を採取しに森林の中に入ったんだよ」

「え……カ、カレン……そ、それ……本当なの?」

「ぐすっ……うん……お姉ちゃんはずっと仕事で疲れているの知ってたから……それに目の下にクマが出来ててあまり眠れてないのもわかってたから……だからお姉ちゃんのために香り袋を作ろうと思って……それで私、森の中に入っていったの……ご、ごめんなさい……お姉ちゃんに心配かけさせちゃって……家族の皆に黙って一人で森の中に入って……本当にごめんなさい……ぐす……ひっぐ……」


 カレンちゃんは大粒の涙を溢しながらアーシャに森の中に入った理由を言っていった。続けて俺もアーシャに向かってこう言っていった。


「もちろんカレンちゃんが黙って森の中に入った事は良くない行為だよ。誇るべきではないし、褒めるべきでもない事はわかってる。だけどカレンちゃんは毎日仕事で大変な事になってるアーシャを助けてあげたいという純粋に優しい気持ちでそんな行動を取ったんだよ。アーシャもその事だけは知っておいて欲しいんだ。そしてもちろん怒るのも必要だと思うけど……それでも頭ごなしに怒るのだけは止めてあげてくれないかな。頼むよ……俺からのお願いだ」

「セ、セラス君……」

「お姉ちゃん……本当に……ごめんなさい……ぐす……ひっぐ……」


 俺はカレンと一緒になってアーシャに向かって頭を下げながら誠心誠意を込めて謝罪をしていった。


 するとそれからアーシャはしばらくして怒った表情をするのを止めていき、次第に柔和な笑みを浮かべながらカレンに向かってこう言っていった。


「カレン……ううん、私の方こそ急に怒鳴ってしまってごめんなさい……カレンは誰よりも人一倍優しい子だもんね。私のために薬草を取りに行ってくれて本当にありがとう。でもカレンは今回は運良く助かったけど、命の危機に瀕したのは事実なんだからね。だからこれからは……何かしようとする時はちゃんと私に一言を言ってからにしてね?」

「うん……わかった……ぐす……ひっぐ……」

「ん。いい子ね。カレン……」

「あ……うん……」


―― ぎゅぅ……


 そう言うとアーシャは腰を下ろしていき、そのまま泣いているカレンの事を優しく抱きしめていった。


 するとカレンちゃんは涙を流しながらも嬉しそうな表情でアーシャの事を抱きしめ返していった。


(……あぁ、本当に良かったな……)


 何でアーシャがこの孤児院にいるのかは未だによくわかっていないんだけど……まぁでも何はともあれ、カレンを無事に助けてこの孤児院に送り届ける事が出来て良かったなと、俺はこの二人の温かい光景を見ながら改めてそう思っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る