第36話 生徒会執行部 "暴力" 担当

今はお昼休み。


一途川さんと一緒にお昼ごはんを食べるため別館へ移動していたのだが、廊下で桃園さんと遭遇した。


一途川さんと桃園さんは今も言い争っているが、僕は2人を無視してこれからどうするか考えていた。


とりあえずは愛宮さんの過去に何があったか知る必要がある。


桃園さんに聞いても教えてくれないから他の人から聞くしかない。


そのためにはまず、愛宮さんと仲が良い人を調べるしかないな……。


僕が愛宮さんの交友関係を探ると決意したその時、目の前で言い争っている一途川さんと桃園さんに乱入する男が現れた。


「 やめろ2人とも!! 君たちみたいな可愛いガールが喧嘩をするところなんて見たくない!」


十六夜君が降臨した。


十六夜君が現れた事で、一途川さんと桃園さんが声を上げた。


「 チッ、またお前かよ変態野郎」

「 あっ! 天夜お兄ちゃんだ!」


2人が声を上げると十六夜君も口を開く。


「 俺はこの世の全ての女の子に仲良くしていて欲しい。それだけだ」


十六夜君らしいな……。


僕がそう思った瞬間……。


「 あ? 紫電じゃねーか」


僕は背後から声を掛けられた。


声の主は、四限目が始まってすぐに教室を出て行ったきり行方不明となっていた阿修羅君だ。


「 あっ! 銀三お兄ちゃんだ! 私ずっと探してたんだからね!!」


「 誰お前?」


桃園さんと阿修羅君が会話をする中、もう一人……。


「 賑やかになってきましたね……」


「 あれ? 山君いつからいたの?」


「 さっきからいましたよ! 十六夜君と一緒に紫電君と一途川さんの後をつけてたんです!」


「 またか……」


僕は前にも山君と十六夜君に後をつけられていた事がある。


「 というか山君。後をつけるくらいなら一緒にお昼ご飯食べない? 一途川さんは上手く言いくるめるから」


僕の言葉に山君が笑顔になる。


「 ほんとですか! 一応気を遣って紫電君と一途川さんを見守ろうと思っていたのですが……本当は一緒に食べたかったです! やっぱり僕の一番の友達は紫電君ですからね!!」


「 山君……。僕も一番の友達は山君だと思ってるよ!!」


山君が嬉しいことを言ってくれたので、目頭が熱くなってしまった。


とりあえず僕は廊下に集まったメンバーに声を掛ける。


「 みんな。ここは廊下だし、とりあえず別館の空き教室に移動しない? それでみんな一緒にご飯を食べながら話そうよ」


こんなメンバーで廊下に集まっていたら騒ぎが起きるだけだろうし、僕はとりあえず提案した。


すると、僕の言葉にまず一途川さんが反応した。


「 嫌だ。紫電君と2人がいい」


そのセリフは想定済み。君の事はもう分かっているんだよ一途川さん。


「 一途川さん、後でよしよししてあげるからお願い」


「 うん! 紫電君の言う通りにする!」


はいチョロい。頭を撫でておけば何とでもなるという事が分かってから扱いやすい。


続いて桃園さん、そして山君が口を開いた。


「 いいね! みんなで一緒に食べよ!」

「 いいですね! じゃあ移動しましょうか!」


3人はそう言って空き教室に向かおうとしたが……。


「 誰お前? チャラい顔してムカつくな」


阿修羅君が十六夜君に声を掛けた。


「 よぉ不良さん。お前と同じクラスの十六夜だよ。昨日何が起きてたかよく分かんなかったから全部山に聞いたぜ? お前紫電に負けたんだってな」


「 あ?」


何だかやばい雰囲気になってきた……。


この2人、こんなところで喧嘩したりしないよな……。


僕がそう思っていると、十六夜君は僕の方を見た。


「 紫電、話を聞いてお前が強い事には驚いたが、何かあったら俺にいつでも相談しろよ? 俺たちはダチだからな。阿修羅だろうが俺がぶっ飛ばしてやる。俺はレディーを守るために鍛えているが、レディー以外でもダチのためなら拳を振るうぜ?」


十六夜君……たまに凄くかっこいい時があるんだけど、そのセリフを阿修羅君の前で言うのはまずい……!


予想通り阿修羅君は十六夜君の言葉に反応した。


「 あ? 誰をぶっ飛ばすって?」


阿修羅君が十六夜君を睨む。


「 お前だよ。つか阿修羅、その顔何とかならないのか? お前の顔が怖いせいで教室にいる可愛い女の子達が怖がってるんだよ」


その言葉に阿修羅君は少しキレた。


「 お前喧嘩売ってんな? いいぜ? ボコボコにしてやる」


「 ああ、やろうぜ。ここでお前をぶっ飛ばせば俺がお前より強い事の証明になる。そうすればクラスの女の子達はお前より強い俺がいる事で安心できるだろ? さあ、俺にぶっ飛ばされろよ」


まずい! これは完全にバトる流れだ!

2人を止めないと!


そう思った瞬間……。


「 えーなにー? 面白そーな事になってんじゃーん。俺も混ぜろよー」


僕たちにいきなり声を掛けてきた生徒がいた。


その生徒は、肩まである長い黒髪が特徴で前髪はセンターに分けている。

容姿はかなり整っているが、阿修羅君と同じくらいの大柄な生徒だ。


黒く長い髪は確かに特徴的なのだが、それよりも右手に持っている木刀に目がいった。


黒髪長髪で木刀を持っている生徒が口を開く。


「 俺は生徒会執行部 "暴力" 担当、神風荒士かみかぜあらしだ。表向きは生徒会執行部副会長ねー。よろしくー」


生徒会執行部 "暴力" 担当って何だよ……。


また面倒な事になりそうだ。

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