第23話 紫電伊吹 VS 阿修羅銀三 2
僕と阿修羅君は今現在、お互いに対面し合い戦っている。
「 さあ、かかってこいよクソ陰キャ」
阿修羅君は僕を挑発する。
「 舐めんなよ」
僕はそう呟くと阿修羅君に向かって突撃する。
そして右手の拳を握り、阿修羅君の顔面に殴り掛かる……フリをして反対方向に後ろ回し蹴りをした。
しかし……。
ガシッ!!
「 !?」
阿修羅君は僕のフェイントからの後ろ回し蹴りを完全に見切った。
そして、僕の足首を掴み片手で受け止めた。
まじか……。
今の攻撃も決まらないのか……。
阿修羅君は僕の足首を掴みながら呟く。
「 お前、かなり強いな。だが、俺には勝てねーよ」
阿修羅君はそう呟くと目つきが変わった。
まずい! 何か攻撃を仕掛けてくるつもりだ!
僕は今、足首を掴まれて片足で立っている状態……。まともに動けない!
このままじゃやばい……。
そう思った時……。
「 その汚い手どけろよ……紫電君の綺麗な足が汚れるだろーが!!」
そう叫んだのは一途川さんだ。
一途川さんは一直線に阿修羅君の元へ走り出した。
しかもその手には……。
「 包丁!?」
そう。一途川さんの手には包丁が握られていた。
一途川さんは右手に握った包丁を阿修羅君目掛けて振りかざした。
「 紫電君を傷付ける奴は死ね!!」
シュッ!!
阿修羅君は僕の足首を離し、一途川さんの攻撃を避けた。
攻撃を避けた阿修羅君は一途川さんに声を掛ける。
「 おい女。お前はなんで包丁なんて持ってるんだ?」
一途川さんは阿修羅君を睨みつけ答えた。
「 愛する人を……紫電君を守るために、私は常にカバンの中に護身用として様々な道具や武器が入ってるの」
そうか、そういえば山君から前にそんな話を聞いたな。
僕と阿修羅君が戦っている隙にカバンから包丁を取り出したのか。
「 へー、そりゃ面白ぇな」
一途川さんの発言に阿修羅君はニヤリと笑った。
それにしても一途川さんはやっぱり狂ってる。
さっき、躊躇なく包丁を阿修羅君に振りかざした。
普通の人間はそんな事出来ない。
さすが、一度人を刺して精神病院に隔離されていただけの事はある。
だが、一途川さんに助けられたのも事実だ。
僕は一途川さんに声を掛けた。
「 一途川さん、助けてくれてありがとう。でも包丁はさすがにまずいよ」
僕の言葉に一途川さんは無表情で答えた。
「 何がまずいの? あいつは紫電君を傷付けようとしたゴミ野郎なんだよ? 刺し殺しちゃえばいいんだよ」
一途川さんはそう答えた。
彼女は本気だ。本気で阿修羅君を殺そうとしている。なんの躊躇いもない。完全に倫理観がバグっている。
一途川さんと阿修羅君を戦わせるのは間違いなくまずい。
だが、一途川さんは再び包丁を持って阿修羅君に襲い掛かる。
「 死ねよデカブツ。紫電君に手を出した事をあの世で後悔してろ」
「 へへ、こいよ包丁女。可愛がってやる」
一途川さんは右手に掴んだ包丁を阿修羅君の首元目掛けて大きく振りかざす。
シュッ!!
しかし阿修羅君はその攻撃を避けた。
だが、一途川さんの攻撃の手は止まらない。
一途川さんは左手を制服の胸元に入れ、なんと、スタンガンを取り出した。
バチバチッ!
一途川さんは音が鳴るスタンガンを阿修羅君の腹部に突き刺した。
スタンガンが阿修羅君の腹部を捉えた……。
かと思われたが、阿修羅君は体を捻り、ギリギリでスタンガンを回避した。
攻撃を避けられた一途川さんは、阿修羅君から一旦距離を取った。
「 デカいくせに小回りがきくのね。めんどくさ」
「 包丁の次はスタンガンか。面白い女だな」
2人は睨み合う。
……。
凄い戦いだが、このままではまずい。
一途川さんは本気で阿修羅君を殺すつもりだ。
それに阿修羅君もかなりイカれてる。
包丁で自分が狙われてるんだぞ?
殺されるかもしれないんだぞ?
それなのに面白いだと?
阿修羅君もかなり倫理観がバグっている。
それはともかく、とりあえず今は何とかして一途川さんの殺意を収めさせないと。
僕は一途川さんに声を掛けた。
「 一途川さん!」
「 え? なに? 急に大声出して」
「 僕は大丈夫だから下がって!」
僕はそう言うが……。
「 嫌だ! 紫電君を守るのは私の役目!」
一途川さんは中々引いてくれない……。
それなら僕は、一途川さんの僕に対する好意を利用する。
「 一途川さん、僕の言う事が聞けないの? 僕の言う通りにしてくれたら、後でよしよししてあげるよ?」
「 えっ!? 紫電君がよしよししてくれるの……!?」
予想通り一途川さんは反応した。
「 分かった! 紫電君の言う事聞く! 包丁もスタンガンも片付けるし、戦ったりもしない! だから後で絶対よしよししてね!!!」
「 うん。もちろん約束は守るよ」
一途川さんは僕の言う通り後ろに下がってくれた。
「 なんだぁ。折角、包丁女が乱入してきて面白くなると思ったのによぉ」
阿修羅君は残念そうだが、君を潰すのは僕の役目だしな。
僕は再度、阿修羅君を睨みつけた。
「 いい目つきしてんなぁ。じゃあ、続きやろうぜクソ陰キャ」
「 黙れゴミ野郎」
僕と阿修羅君の戦いが再び始まった。
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