第3話
なにごともなく授業が終わり、少年は自宅に帰った。今朝調べようとしていたハローページのサイトにアクセスして件の名前を探そうとしたが、現在は廃止されているため叶わなかった。更に検索をかけると、スマートフォンのアプリで廃刊前の番号であれば検索できるということがわかったので試してみたのだが、載っていなかった。期待はしていなかったので大して残念とは思わなかった。
相手は二十代男性なので、実家に住んでいるか、それとも大学近くのアパートに住んでいるか、あるいは助手席に乗っていた女性と同棲しているのかもしれない。実家であれば、親の名義になっているので正確にはわからない。アパートであれば、今時の若者が固定電話を使っていることもないだろう。同棲の場合も同様だろう。とすれば、確かめる術は、同じ名字の人物をしらみつぶしに当たるほかなかった。
少年は非通知にして、片っ端から電話をかけて、相手が電話に出た場合、考え得る限りの方法で名前の人物と同姓同名の人物を探した。しかし、ありふれた名字なので膨大だった。結局、外が暗くなるまで電話をかけたものの、目的の相手には辿り着けなかった。
一旦保留にして少年は、夕食を摂り、風呂に入って、ふたたび自室にこもって電話をかけまくった。その甲斐はあったようで、ようやく望みが叶った。加害者の親と思しき相手が見つかったのだ。その相手の息子は、現在関東圏内にある大学に通っているそうだ。大学名は聞き出すことができたものの、今現在の住所までは教えてもらえなかった。おそらく警戒されたのかもしれない。少年としては、それで充分だった。
大学の名前、どの学部の学生なのか、そして加害者の名前が明らかとなった。大学へはオープン・キャンパスの名目で出入りできるだろう。学部に関しては、教授らの名前は大学の
ようやくだ。少年は瞼を閉じた。
これで、現実かもしれない夢をなかったことにできるかもしれない。
最近見続けていた夢に、もう煩わされることもなくなるかもしれない。
現実かもしれない夢を、もう見ることもなくなるかもしれない。
夢かもしれないこの現実の自分にも、なんらかの変化が生じるかもしれない。
最近気に病んでいた記憶の欠落も、なくなるかもしれない。
夢かもしれないこの現実のみが、少年にとっての唯一の記憶となるかもしれない。
いや、そうなるに違いない。
少年はゆっくりと目を開いた。得も言われぬ澱んだ瞳だった。その目がなにを見ているのかは、少年自身でさえわからなかったかもしれない。
コ・レ・デ・ス・ベ・テ・ガ・オ・ワ・ル。
イ・ヤ。
オ・ワ・ラ・セ・ラ・レ・ル。
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