第38話 お仕事は何ですか?
絋side……★
「そういえば、絋さんの新しいお仕事って何ですか? 彼女として! ぜひ詳しくお聞きしたいんですが?」
珍しく杏樹さんから凄まじい圧が生じた。
仕事……そんなに大したことじゃないのだが、彼女以外にも崇や千華さん、慎司も興味津々に待機していた。
「いや、何で⁉︎ 無職が仕事を探すのは普通のことだろう? 別にいーじゃん、どんな仕事でも!」
「良くないです! その仕事はどんな業種ですか? 女性の多い職場ですか? 女性をターゲットにしたお仕事ですか⁉︎」
「ホストか? 女を誑かして貢がせて枕営業しちゃうお仕事ですか?」
ヤメロ、慎司ィ! 冗談でも言って良いことと悪いことがある!
「えぇー、絋さんは俺と一緒に介護職に就くと思っていたのに、残念だな」
「絋さんは何となく私と同じ雰囲気を醸し出しているから、崇さんみたいに人に尽くす仕事は無理だと思うよ? ねぇ、絋さん」
うん、千華さん。君の言い分はもっともだけど、もう少しオブラードに包むってことを覚えような?
っていうか、言いにくいんだけど?
そんな大した仕事じゃない。ハードルだけが爆上がりじゃねーかよ!
「あー……基本的には在宅ワークなんです。まぁね、実は趣味で公開していた動画を見て、オファーくれた企業があって」
「へ? 絋、お前……SNSしてたん? 初耳なんだけど? なんで親友の俺達に教えてくれなかったん?」
「慎司に教えると茶化してくると思ったんだよ。結構ガチでしてたからさ。空と海とか、動画を撮って編集したり、イラストとミックスしたりしてたんだけど……。実は前に有名な歌い手さんからMVに使わせて欲しいって連絡が来て、そっからバズった」
「「「———はぁ⁉︎」」」
そう、画像編集とか地道にこなしていた社畜時代のスキルが発揮されたのだ。
「……ってことは、絋さんは女の人と一緒に働くわけではないんですよね?」
「え、そっち? まぁ、杏樹さんが心配するようなことはないかな? たまに打ち合わせで本社に行くことはあると思うけど、基本的には家にいるよ」
その言葉に彼女はニンマリと笑みを浮かべて、安堵したように腕に抱きついてきた。
「え、待って! 歌い手って誰? それが気になるんだけど?」
グイグイと質問攻めをしてくる慎司達。そんなに大事なことだろうか?
「何人か依頼を請けたことはあるんだけど、最近ならシユウっていう顔を隠して活動してるアーティストかな。性別も隠してて正体不明な人だけど」
「シユウ⁉︎ マジかよ、おい! 俺でも知ってる有名な歌い手じゃねぇか! サイン貰えねぇの? 紹介してくれよ、おい!」
「いやいや、基本的にメッセでのやり取りだし。けどその人のおかげで人生の転機がきたわけだから、本当に有難いよな」
って、皆してスマホを操作してシユウのMVを探し出した。おい、人に質問をしておきながらそれはないだろう?
その中でも一番に見つけた俺の彼女、杏樹さんは、目をキラキラさせながら動画を見つめていた。
「このMVを絋さんが作ったんですか? すごく綺麗……エモいです」
「え、いやー……。そんな言われると恥ずかしいんだけどな」
一先ず、動画編集やデザイン関係の仕事を請け負う形で就職することとなった。
ちゃんと企業に在籍しているので、給与的な面でも心配することはない。
「けどさー、ってことは絋もそれなりに有名人になったってことじゃねぇの?」
「ん? まぁ、確かにフォロワーさんは増えたけど、全然そんな。顔出して活動もしてないし、危惧することはないと思うぞ?」
「ふっ、甘いな絋! お前は自分が思っているよりも良いツラをした男なんだ! きっと今に大変な事態になると思うぞ?」
不吉なことを言うな、慎司!
大体、俺の顔ばかり褒めるけど、慎司や崇の方が面がいいと俺は思っている。背が低い分だけ俺の方がモテないと思っているくらいだ。
そんな慎司の言葉を間に受けた杏樹さんは、難しい顔をしたままスマホを睨み続けていた。
「あ、あのう、杏樹さん? そんな心配しなくても顔を出すことはないから安心していいよ?」
「そうなんですけど……さっき、絋さんがMVを作ったって話していたシユウさん。絋さんのことをめちゃくちゃ褒めてる書き込み出しているんですけど?」
——は?
どういう意味だとSNSを確認すると、確かにシユウが俺に対して書き込んでいる。
『MV作ってくれたKOW氏、スゴく優しくて尊い。一度だけビデオチャットで話したけど、マジイケメン』
———はぁ⁉︎
普段は通知をオフにしているので気が向いた時にしか開かなかったSNS。久々に開いてみると、凄まじい数の通知が届いていた。
「………絋、お前……大丈夫なん?」
いや、大丈夫じゃない。
え、もしかしてタイトル変更?
【無職でしたが、有名歌い手とMVコラボして人生が変わりました】
いや、笑えないから、この状況。
———……★
「一段落ついたところで第三部へ移ります。無職から一気に有名人にアップグレードしてしまった絋。そしてそんな絋を(別な意味で)心配する杏樹。さて、どうなるでしょうか……?」
そして改めて、第二部までお読み頂きありがとうございます✨
いつもお読み頂いている読者様には感謝しかありません(๑>◡<๑)
正直、第三部はどんなふうにしようか悩んでいるところですが、引き続きお読み頂けると嬉しいです✨✨
また、★や♡、本文付きレビューで「楽しみにしてます!」とか一言でも頂けるとヤル気が出てきますので、よろしければよろしくお願い致しますm(_ _)m✨
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