37話 迫りくる闇の手

 学校裏の森に現れた奇妙な光。勇人、佐和子、直也の三人は、緊張感を抱えながらその光のもとへと歩を進めた。暗闇の中でぼんやりと浮かび上がるその光は、どこか不気味で、まるで彼らを誘うかのようだった。




「これは……なんだろう?」




 直也が疑問を口にするが、誰も答えることができなかった。光はまるで生きているかのように揺らぎながら、彼らを導いているようだった。




「気をつけて。何かが待っているかもしれない」




 勇人は慎重に声をかけ、さらに進むことを促した。すると、光の先に小さな円形の儀式場のような空間が現れた。地面には古い文字や紋章が描かれており、中心には光る石のようなものが置かれていた。




「これは……封印の痕跡?」




 佐和子が石に近づき、静かにその表面を触れた瞬間、光が一瞬にして消え、周囲の空気が凍りつくような冷たさに変わった。




「やばい……何かが目覚めたんだ」




 勇人が警戒を強める中、突然、周囲の森から不気味な黒い影が湧き出してきた。それらはまるで生き物のように動き、勇人たちに向かって襲いかかってきた。




「くそっ!」




 勇人は反射的に影をかわし、身構えた。直也もすぐに戦闘態勢に入り、佐和子は影の力を使って応戦しようとしたが、その数は予想以上に多かった。




「これだけの影が……一体どこから?」




 直也が疑問を叫びながら、必死に影を払いのける。影たちはまるで意志を持っているかのように、彼らを包囲し、次々と襲いかかってきた。




 佐和子も影の力を使い、対抗しようとするが、その影は彼女の力を吸収し、反撃してくるかのようだった。彼女は思わず後ずさりし、息を整えながら再び立ち上がった。




「これ以上は無理だ……一旦退くぞ!」




 勇人の声に、佐和子と直也は頷き、三人はその場を離れようとしたが、影は彼らを追いかけてきた。闇がますます深まる中、勇人たちは何とかして影から逃れようと必死だった。






 三人は全力で逃げ続け、学校の敷地内に戻った。そこまで追ってきた影たちは、突然、動きを止めたかのように消えていった。




「いったい何が起こったんだ……?」




 勇人は息を切らしながら、周囲を見回した。佐和子も放心したように立ち尽くし、直也も肩で息をしながらその場に座り込んだ。




「影がこんなに多く出現するなんて、以前とは違う……何かがさらに強力になっている」




 佐和子は震える声で言った。彼女の中で影の存在がますます重くのしかかっていた。それがただの存在ではなく、何か大きな力に支配されているという感覚が、彼女を不安にさせていた。




「影を操っている何者かがいるんじゃないか?」




 直也が推測する。影は単なる自然現象ではなく、明確な意志を持って動いていることが明らかだった。誰か、あるいは何かが影を操り、彼らに襲いかかってきたのだ。




「それが誰なのかを突き止める必要がある」




 勇人は決意を新たにし、影の謎を解き明かすために動き出すことを誓った。しかし、そのためにはまず、影に関するさらなる手がかりが必要だった。




 翌日、勇人たちは再び佐和子の祖母から受け継がれた日記を詳しく調べ始めた。そこには、影に関する古代の儀式や封印の方法が記されていた。しかし、その記述は難解で、一つ一つの意味を理解するのに時間がかかる。




「この記録によれば、影の力は元々、人々の負の感情から生まれた存在らしい。それを封じ込めるために、特定の家系が影と共生してきたと書かれている」




 佐和子は日記を読み上げながら、続けた。




「そして、その封印を破るためには、影の力を操る者が必要だと……」




「それが佐和子の家系の役割か……」




 勇人は理解し始めた。佐和子の家系が影の封印に関わっていたことが、今の状況を説明する重要な鍵となっていた。そして、影を操る存在が封印を破ろうとしているのではないかという考えが頭をよぎった。




「誰がその封印を破ろうとしているのか……それを見つけなきゃならない」




 直也が強く言い放ち、勇人たちは影の背後にいる存在を突き止めるために調査を進めることを決めた。






 影に対する新たな脅威が迫っていることを確信した勇人たちは、影の力を操る存在を見つけ出し、対峙するために準備を始めた。影との戦いはまだ始まったばかりであり、彼らの前には困難な道が待ち受けていた。




「俺たちはこの影の力に打ち勝つために、全力を尽くす。何があっても、絶対に負けない」




 勇人は決意を込めてそう言い、佐和子と直也もそれに応じた。彼らはこれから影との戦いに挑むため、団結して進んでいくことを誓った。




 影の背後にいる存在、そしてその意図を暴くために、彼らは再び危険な道へと足を踏み入れていくのだった。

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