人生を変える大切なお話

Blue

大きな石のお話

一つ、お話をします。


ある日、ベテランの教授が大学の教室に入ってきました。彼は長年、多くの学生に影響を与えてきた人物で、その教えは単なる学問だけでなく、人生における大切なことを伝えるものでもありました。今日は特別な授業があると聞いた学生たちは、教室に集まり、教授がどんな話をするのか、少し緊張しながら待っていました。


教授はいつもと変わらぬ穏やかな笑顔を浮かべながら、教壇の上に大きなガラスのツボを置きました。学生たちは、何が始まるのか興味津々で見つめます。教授はしばらくそのツボを見つめてから、話し始めました。


「今日は、皆さんに時間と人生の大切なことについてお話ししたいと思います。」


教授はその言葉とともに、机の下からいくつかの大きな石を取り出しました。石は彼の手のひらよりも大きく、重さもありそうです。それを一つずつ慎重にツボの中に入れていきます。石がツボの中にカランと落ちるたびに、教室の中に小さな音が響きました。


石をすべて入れ終わった教授は、ツボを学生たちに見せながら尋ねました。


「さて、皆さん。このツボはもういっぱいだと思いますか?」


学生たちは一斉に頷きました。「はい、いっぱいです」と誰かが答えました。ツボは明らかに石で満たされており、それ以上何かが入るとは思えません。


しかし、教授は微笑みながら「本当にそうでしょうか?」と続けました。そして、机の下から今度は小さな小石を取り出し、それをツボに注ぎ込みました。小石は大きな石の間を滑り込むように入り込み、隙間を埋めていきます。小石が音を立ててツボの底に落ちていく様子に、学生たちは驚きの声をあげました。


教授は再び尋ねます。「さて、今度はどうですか?このツボはもういっぱいでしょうか?」


学生たちはまた頷きますが、今度は少し疑念が残っています。「おそらく、まだ何か入るかもしれません」と、ある学生が勇気を出して言いました。


教授はその答えに満足げに微笑むと、今度は砂を取り出しました。そして、ツボの中にゆっくりと砂を注ぎ込みます。砂は、小石と大きな石の隙間をさらに埋めていきました。砂がツボの中をさらさらと流れていくのを見ながら、学生たちはますます驚きます。


「このツボはもういっぱいですか?」教授は再び尋ねます。


今度こそ学生たちは「はい、もうこれでいっぱいです」と自信を持って答えました。ツボはすでに大きな石、小さな石、そして砂でぎっしりと詰まっています。これ以上、何も入らないように思えました。


しかし、教授はもう一度笑って「本当にそうでしょうか?」と問いかけました。そして、最後に机の下から小さな水差しを取り出しました。学生たちは目を見開き、息をのみます。教授はその水差しを使って、ツボの中に水を注ぎ始めました。水は砂の隙間をぬって染み込み、まるで魔法のようにツボの中に吸い込まれていきました。


教室内は、しんと静まり返っています。学生たちは全員、この不思議な光景に魅了されていました。水をすべて注ぎ終えた教授は、満足げにツボを見つめ、ゆっくりと口を開きました。


「皆さん、これは人生における時間管理の象徴です。このツボは皆さんの時間や人生そのものを表しています。そして、この大きな石は、皆さんにとって最も大切なものです。家族、健康、友人、そして夢や目標といった、何よりも優先すべきものです。」


教授は、一つずつの石を指さしながら続けました。「もしも、最初に砂や水を入れてしまったら、もうこの大きな石を入れる余地がなくなってしまいます。つまり、人生において、まず最も大切なことに時間とエネルギーを割くことが重要なのです。」


教室は静まり返り、学生たちは教授の言葉を心に刻みました。教授はさらに続けます。


「小さな石や砂は、仕事や家事、日々の雑務など、皆さんの生活を満たすものです。これらも重要ですが、大きな石を優先することで、これらのことに圧倒されることなく、人生を有意義に過ごすことができるのです。そして、最後に水を注いだのは、私たちの人生には、いつも思いがけないことや余白があるということを示しています。どんなに忙しくても、少しの余裕を見つけることはできるのです。」


教授はその後、ツボを慎重に教壇の上に置き直し、学生たちに優しく微笑みました。「皆さん、どうかこのツボの話を思い出し、人生の優先順位を見失わないようにしてください。そして、まず最も大切な石をツボに入れることを忘れないでください。」


その言葉を聞いて、学生たちは深く頷きました。彼らの心には、教授の教えがしっかりと刻まれたことでしょう。教室を後にする際、彼らはそれぞれ、自分の人生における「大きな石」が何であるかを考え始めていました。


このお話は、日々の忙しさに流されがちな私たちに、大切なことを見失わないようにというメッセージを伝えています。時間の使い方や優先順位を考える上で、心に留めておきたい教訓ですね。

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