俺の俺による俺のための異世界生活

学生おじさん

転生

目を開ける。どこだここ?突然の場面変更に戸惑いを隠せない。とりあえず直前の記憶を探ってみる。思い出せない。思い出せないが、、、


「日本?」


断片的な記憶。


「、、、っ」


次の瞬間、鈍い痛みと共に流れ込む記憶。

自身の体を見る。小さい手に、動かしづらい頭、言うことの聞かない四肢。


そうか、、、、、、、

             よしゃゃゃゃゃゃ!!!!!


全て理解した。

俺は異世界転生した!!!!



「ふう」


一通り喜び尽くし、あらためて状況判断に努める。

ここはどこなんだ。豪華な天井。ふかふかなベット。広い部屋。

一目でお金持ちだとわかる。これはもしかすると、もしかしなくても人生勝ち組なのではなかろうか。きっとそうだ。きっとそうに違いない。

前世の行いがよかったのだろうと何の気なしに考える。

思えば特質することのない人生だったが、あの瞬間、あの瞬間だけは間違いなく

他人に誇れる人生だった。



一般家庭に生まれ、そこそこ良い高校、大学に進学し、それなりに充実した人生を歩んでいた。彼女も居たし、ち○ぽの皮だってむけていた。このまま行けば、大手の企業に就職し、子だくさんの未来が待っているはず


そうあれは確か、就職活動の一環で企業のインターンシップに参加したときの帰り。大雨の夜だった。夕方から大雨だからと母親に渡された傘を持つ俺は靴をびちょびちょにしながらも特に焦ることなく歩いていた。しかし、同じインターンに参加した彼女はそうではなかったらしい。駅まで歩いて10分程度の道のりを走っていた。そして、駅を目の前に据えた横断歩道で事件は起きた。おそらく、目的地が見えて、安心したのだろう。赤に変わる信号機には目もくれず横断歩道に突入していく。大雨で下ばかり見ていた事も原因の一つに違いない。交差点にクラクションの音が響き渡る。


「気づいた時には体が動いていた。」こう表現する他ない。

まさか、かの有名なヒーローマンガの名台詞を自分が言う羽目になるとは思わなかったなぁ。

なんて、気の抜けた台詞を吐きながら、

次の瞬間、経験したこともない激痛と共に俺の意識はブラックアウトした。


で、気づけばここってわけ。我ながらものすごい最後だったと改めて回想してみる。

すると、コンコンとドアをノックする音が聞こえる。


誰か来た

とっさに身構える。ゆっくりとドアを開け、入ってきたのは年若い女だった。

しかもものすごい美人。え、なにこれ。激かわ。緩くカーブしたキレイな金髪に、日本じゃまずお目にかかれない青い瞳。透き通る肌。日本で見た、どんなモデルよりもかわいい。というか美人。息を呑む。


「あら、起きてたのね」


そう言ってこちらに近づいてくる。後ろには中年の女性。メイドか?

ぴったり横までやってきたこちらの美人さんはひょいっと俺の事を抱き上げた。

抱き上げた?は?


「シン、1人にしてごめんなさいね」


どうやら思った以上にこの体は小さかったらしい。興奮して、サイズの目測を誤った。この感じ、生後数ヶ月といったところか。

自己分析が済んだところで、改めて美人さんを観察してみる。

まじでかわいいな。じゃなくて、いったい誰なんだ。

一番濃厚な線は母親だろう。思い切って聞いてみる。


「あーあーあーあーあー」


「シン、今日はおしゃべりさんなのね」


笑顔をたたえながら慈愛に満ちあふれた声で語りかけてくる。

だめだこりゃ。この体で発音はまだ難しかったらしい。

しかしそうか。この世界では「シン」って名前なのか。なんとなく感慨を覚えつつ、

肌に伝わってくるぬくもりにあらがえず、少しずつまぶたを閉じていった。




そうして、おれこと シン=オルデンブルグは3歳の誕生日を迎えた。

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