第18話 思わぬギフト②
ーエリーゼ視点
私はお屋敷に帰りながら、ちょっと考えている。
本当は私は難しい事を考えるのが苦手だから、あまり考えたくないのだけど・・・
さすがにアレを見てしまったらね〜・・・
アリシアちゃんに光魔法を教えようと思ったのは、ただの気まぐれだった。
アリシアちゃんには悪いんだけど・・・
いや・・・、アリシアちゃんは、ちょっと人よりも魔力量が多いなぁって思っていたし、
ユーティアは年の割に妙に大人っぽくて、
なのに小さい頃は私とお話する時も目を見て話さなくて・・・
人を避けるようなところがあったから、私は結構心配だった。
特に女の人は避けてたし・・・
でもアリシアちゃんには心を開いている感じがあったから、そんなアリシアちゃんが光魔法を覚えてくれてユーティアの助けになってくれたらなぁ〜なんて、ちょっと思ってしまって・・
ダメ元で誘ってみたら、結構やる気になってくれて・・・
光の初歩魔法を見せたら一回で出来ちゃうじゃない。
それならもしかしたら、これも出来ちゃう?なんて思っちゃったのよね…
光の盾・・・、
光の防護魔法の中で最も簡単で、全ての防護魔法の基本であり、実は最も最強の守護魔法になり得る魔法・・・
何故なら光の盾の元になった魔法は神が行使していた魔法だから・・・
原初魔法
まさかこの目で見ることが出来る日が来るとは思わなかったわ〜
アリシアちゃんが
これは絶対にちゃんと魔法を教えなきゃ駄目ね・・・
下手な人間にアリシアちゃんが
まずはマクスとナタリアに相談しなきゃね。
可愛い子供達の為に頑張りましょ!
************
−アリシア視点
今日はお屋敷の仕事が午後からお休みだった。
ファーレスさんがやって来てローレン家に迎え入れられてから、ユーティア様は午後練習場でエリーゼ奥様から光魔法の練習を受けている。
それまでは午後は森の方で1人で訓練をしていたみたいなので、会うことは殆ど出来なかったけど・・・
今は今日みたいにちょっと時間があれば見に行ける距離にいるので、とても嬉しい。
大切な「弟」が成長する姿を近くで見ることが出来るのだ。
いつもは休憩時間に見に行っていたので、覗くくらいしか居れなかったから、離れて見ていたのだけれど・・・
今日はお休みなので、思い切って見学させて貰おうと近くに行き、エリーゼ奥様に声をかけた。
「奥様、失礼致します。今日は午後お休みなので、ユーティア様の練習風景を見学させて頂いても宜しいですか?」
「あら、もちろんいいわよ〜。折角だしアリシアちゃんも一緒に練習してみる?」
奥様に声を掛けると思わぬ提案をされた。
びっくりしたけど、ちょっと興味がある。
「えっ、奥様宜しいのですか?」
「ええ、教える人数が1人くらい増えたって全然大丈夫よ〜。それにユーティアって光魔法はちょっと苦手みたいなのよね〜。
ユーティアの専属メイドのアリシアちゃんが覚えてくれたら、とっても心強いわー!」
どうやらユーティア様は光魔法が苦手らしい。
まぁ遠くから見ていても、あんまり上手くいってないのかなぁと思ってはいたけど・・・
あの年令で大概の事をそつなくこなしてしまうユーティア様でも苦手な事があるんだなぁと思うと安心してしまった。
それに私が光魔法を使えたら・・・、
エリーゼ奥様もとても心強いみたい。
大切な「弟」にカッコいいところを見せたい!
そう思うとなんだかやれそうな気がしてきた…
「んっ、・・・私、頑張りますっ!!」
私は両手を強く握りしめ、奥様に返事をした。
「ふふっ、じゃあ最初は
奥様の言葉を真剣に聞いて、イメージをする。
魔法のさわりはお母さんから少し習っていたのだ。
簡単な生活魔法は使えるなら覚えておきなさいって。
私のとっておきは
これは使える人がかなり少ないけど、使えると超便利魔法として重宝する。
なんかユーティア様の視線をすごい感じる・・
正直…緊張するからあまり見ないで欲しい・・
あとであまり女性を凝視してはいけませんよと、優しく叱らねば・・
よし、何となくイメージ出来た。
「ふんふん、なるほどです。」
集中して・・・
「光よ、照らせ!
私の前にピカッと光る光球が発現した。
でっ、出来たっ!!
ふふふ〜ん、ニヤニヤが止まらない・・・
どうだ、お姉ちゃんはすごいだろ〜
「あら〜、すごいじゃない!」
「アリシアさん、すごいっ!!」
ユーティア様と奥様が褒めてくれる。
調子に乗ってしまいそうになるけど・・・
きっとこのくらいは出来るのが普通なんだ。
もっとすごいのが出来るようになりたい!
「いえ、これくらい大したことありません。
奥様、もっと教えて頂けますか?」
エリーゼ奥様に伝えると、
「じゃあ、守護魔法いっちゃいましょうか!
大切な人を守る盾をイメージするの。よーく見ていてね。
彼の者に光の加護を与え守護せよ、
ユーティア様の前に光の壁が出来る。
おー、これだ〜!!
この魔法ならユーティア様に何かあった時、守ることが出来る!
「・・・大切な人を守る・・・盾・・」
私が守りたいのは・・大切な「弟」だ・・
「さぁ、アリシアちゃんもやってみて!失敗したって気にしなくていいんだから。」
奥様が優しく言ってくれる。
ふぅ〜・・・、と私は一息付いて…集中する。
守りたい人をしっかりとイメージして・・・
守りたい気持ちを高めていく・・・
「彼の者に光の加護を与え守護せよ、
少しの間があった。
やっぱり難しかったかなぁって思った瞬間・・
フォンッ!!
優しい虹色のカーテンがユーティア様の周りを包みこむように聳え立った。
それと同時に私の身体から、とんでもない量の魔力が失くなってしまった・・・
「あらまぁ・・・・・アリシアちゃん大丈夫?」
奥様の声が聞こえる・・・
私は立っているのも精一杯で・・・
急いで駆けてきてくれたユーティア様が肩を貸してくれたので、そこに寄りかかりながら
「ハァ・・・、ハァ…ハァ…、大丈夫です。
思っていたよりも魔力を使うのですね…」
「そりゃそうよ〜。いきなりあんな魔法を使うなんて…今日はもうお部屋に戻って、ゆっくり休みなさい。」
…奥様にそう言われてしまった・・・
私は今日はもう練習は出来ないかも知れないけど、せっかく近くでユーティア様の練習風景を見れるのだ。
次のお休みがタイミングよく合うとは限らないから・・・
私はエリーゼ奥様が私の事を心配してくれているのに、ワガママを言ってしまった・・
「ハァ…ハァ・・・、大丈夫です、奥様。
練習は今日は無理かと思いますが…、端の方で休みながらユーティア様の練習を見学させて下さい。」
私がそう言うと・・・
奥様は首を横に振りながら言った。
「ううん、もう今日はおしまい。ユーティアはアリシアちゃんを部屋まで送って行きなさい」
あっ、しまったって思った。
私がワガママを言ってしまったから、
ユーティア様にまで迷惑をかけてしまう・・・
「でっ、でも・・・・」
なんとか弁明して、ユーティア様の練習だけでも続けて貰おうと思った。
そしたらエリーゼ奥様は優しく私に微笑んでくれて・・・
「・・・アリシアちゃん、次からはユーティアと一緒に練習しましょう?
練習がある日は、午後お仕事はお休み出来るようにメイド長に私から話しておくから。
ねっ、どうかしら?」
えっ、そんなこと良いのだろうか?
私はただのメイドなのに・・・
「・・・宜しいのですか?」
「ええ、もちろんよ〜。だから今日はもうお部屋に戻って、ゆっくり休むこと。じゃあ私は早速メイド長にお話しして来るからね。
ユーティア、よろしく頼むわね〜」
エリーゼ奥様はそう言って、私達に手を振ると屋敷に帰っていってしまった。
私はユーティア様の練習の邪魔をしてしまった事が申し訳なくて・・・
これからはユーティア様と一緒に魔法の練習が出来るっていうことはすごく嬉しいのに、素直に喜べずにいた。
まずはユーティア様にちゃんと謝ろう。
そう思って謝罪を口にしようとしたら・・・
「ユーティア様、申し訳ありません。私の所為で今日の練習が・・・」
私が全部言い終わる前に、ユーティア様が私の謝罪を遮るように口を開いた。
「俺ね、正直光魔法苦手なんだ。」
突然何を言っているんだろう?
私はそう思ってキョトンとしてしまう。
「だからアリシアさんと一緒に練習出来るようになってすごく嬉しいんだ。俺が上手く出来ない時は、アリシアさん教えてね!」
あぁ、そうか・・・ユーティア様は私を元気づけようとしてくれているんだ。
私の可愛い「弟」に、こんな風に言われたら、落ち込んでる場合じゃないよね。
よしっ、お姉ちゃんは頑張るよっ!!
「ええっ、もちろんですっ!私も頑張りますから!期待して下さいねっ!」
ユーティア様の肩から手を離して、
もう大丈夫だよって伝えようとしたけど
「あららっ!?あっ、・・・・」
でもすぐにまたフラついてしまい、ユーティア様の肩に掴まってしまった。
うぅ・・・、カッコ良くいかなかった・・・
「アリシアさん、大丈夫?一緒に部屋に戻ろう。」
「うぅ・・・、ユーティア様すみません…」
そのあとユーティア様に肩を貸してもらいながら、2人でゆっくりと屋敷に帰った。
帰る途中で、ふと思った。
「ユーティア様は何でそんなに強くなろうと頑張っておられるのですか?」
いくらローレン家が辺境伯家で、国を守る使命があったとしても・・・
こんな歳からこんなに努力する必要があるのかなって思ったんだ。
「うん、大切なモノを守る為だよ。」
私の大切な「弟」は少し考えて・・、呟くように言った。
私は6才も年下の「弟」だと思っていた男の子に・・・
その時、不覚にもちょっとドキッとしてしまった・・・
そのあとは私の部屋に着くまで、お互いに無言だった。
私がした質問に答えてくれたあと、ずっと何かを考えているようだった・・・
何か悩みでもあるのだろうか?
私は・・・、もしこの男の子が困っている時は、必ず助けになろうって思った。
それを伝えようと思って・・・
「ユーティア様、ありがとうございました。
あのっ・・・、
私はいつでもユーティア様の味方ですからね」
これが今の私の精一杯の言葉。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ここまで読んで下さった皆様、本当にどうもありがとうございます。
これで一章は終わりとなります。
次話は幕間として優奈の回となります。
正直・・・かなり色々悩んでいるので、納得出来ない方もたくさんいるかなぁと思うのですが、今の自分の感覚というか感情を優先して書かせて頂きます。
素人でしかも書きながら更新していくのも初めてなので、至らない所ばっかりかと思いますが頑張りたいと思います。
改めてここまで読んで下さった方々に感謝を申し上げます。
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